この歳になって改めて思うのは、10代後半に体験したライヴから受けた感動とか衝撃は、一生モノなんじゃないかなと（加藤）

加藤 野球尽くしの夏が終わった後、運良くチケットが取れまして、10月1日に〈茅ヶ崎公園野球場〉で開催されたサザンオールスターズのライヴを観に行ったんですよ。

山崎 『スポーツ報知』加藤としてではなく？

加藤 メディアの人間としてではなく、あくまでも一市民として応援に行ったというスタンスです。すごく素敵なコンサートでしたね。桑田佳祐さんが選曲するセット・リストは毎回、サザンにはこんな曲もあるよみたいな、ちょっとマニアックな曲も結構セレクトするんですけど、今回のライヴでは、最初から「C調言葉に御用心」で始まり2曲目が「女呼んでブギ」とか、ファンが望むサザンをサザンがやって魅せるというシークエンスですごく堪能しました。

山崎 そんなライヴだと、長年のファンの方は嬉しいですよね。

加藤 胸いっぱいになって、自宅に帰ったんですよ。ただ、翌日から仕事が忙しくて、あまり余韻に浸れないところがあって。思い返すと、初めて観たサザンのライヴは、1991年の高校2年の夏休みに〈西武球場〉で開催されたコンサートだったんですが、その日から3ヶ月くらい、コンサートの感動が頭から離れなくて、感触をずっと引きずっていた記憶があります。今でも、当時の感動が残っているんですよね。もちろん、今回の茅ヶ崎でのコンサートも素晴らしかったんですけど、思ったのは、感動を受け取る側の年齢の重要さというか。17歳、18歳で観たもの、心から感動したこと、影響を受けたものの自分の中での残りっぷりは改めてすごいなって思ったんです。この歳になって改めて思うのは、10代後半で体験したライヴから受けた感動とか衝撃は、一生モノなんじゃないかなと。例えば、二郎さんにとっては、（1984年の3月15日に開催された）尾崎 豊さんの〈新宿ルイード〉での伝説のデビュー・ライヴであったり、それで人生変わったりする訳じゃないですか？

山崎 実際、変わりました（笑）。

加藤 当然、この歳になっても、コンサートは観たいし、ジャンル問わず、良い作品に触れると、すごく心は豊かになるんだけど、やっぱり10代の後半の時期はちょっと特別な、鋭敏な感受性があるような気がしていて。その時期に体験したライヴや作品から受けた感動は、その後の人生を豊かにするんじゃないかなと改めて思ったんですよね。

山崎 サザンのライヴの他に、今でも思い出に残っている10代の頃のライヴ体験ってありますか？

加藤 1991年の9月20日、尾崎 豊さんを観ました。地元の〈茨城県立県民文化センター（現・ザ・ヒロサワ・シティ会館）〉での『Birth』ツアーのライヴでした。これが自分にとっては最初で最後の尾崎体験なんですけど、まさか翌春に彼が天国に召されるなんて知る由もなくて、自分の席から夢中で観た尾崎のパフォーマンスが今でも鮮烈に脳裏に焼き付いていて。例えば、「卒業」をピアノで弾き語りしながらファンを煽ったり、「Scrambling Rock’n’ Roll」で舞台の上の方に登っちゃうところとか、17歳のたかだか2時間なんですけど、今でもちょっと引きずっている2時間でして。今の自分なら観たいコンサートがあれば、チケットを買うお金もあるし、開催地が遠くでも「よし行こうぜ！」みたいな気持ちも当然あって、それなりに楽しめるんですけど、それとはまた違う、頭がおかしくなっちゃうぐらいのインパクトを1回のライヴから享受できるのは、やっぱり若い世代ならではの特権なんじゃないかなと思いますね。そうした体験はずっと体内に残ってその後の人生の指針になってくというか、人生を豊かにしていくプレシャスな原体験なのかなと思いますね。前々回お話しした慶應高校の丸田（湊斗）くんにとってのヒゲダンもそうした原体験でしょうし、多分僕らの歳ぐらいになっても、やっぱり彼はヒゲダンが好きだと思うんですよ、きっと。