【EDITORS CHOICE】珠玉の“愛”の絵画が一堂に会す 『ルーヴル美術館展 愛を描く』
約48万点を所蔵する〈ルーヴル美術館〉から「愛」を切り口にして選出される名画とは、果たしてどのような絵画群なのだろう?と開催前から期待を膨らませていた『ルーヴル美術館展 愛を描く』。選び抜かれた73点は至極ストレートに愛を伝える作品ばかりで、鑑賞後は心が少し熱を帯びたような、充足した感動があった。
本展には、性愛、慈愛、家族愛、牧歌的な恋の始まりから悲劇の結末まで、様々な愛を主題にした16〜19世紀半ばの西洋絵画が並ぶ。風俗画だけでなく神話画、宗教画も多いのだが、展示を辿ると不思議なことに、描かれる人物の感情がとても身近なものに感じられた。一目惚れをした相手へ愛おしそうに密やかに眼差しが向けられたり、親が子を穏やかに寛大に抱き止めたり。愛とは何か? 画家はそれをどのように描き上げるのか? 数百年の隔たりを忘れて同じ目線で、1枚1枚の「愛」のストーリーに没入した。
恋の始まりや結婚を描いた作品の、鮮やかな彩色、豪華な額縁も華やかだ。中でも印象的だったのは、フランソワ・ブーシェが表現する青とピンクの美しさ。『アモルの標的』、『アモルを支える三美神』など、展示されているブーシェの作品群で見られる、上気した肌の桃色、空や衣服の水色は、混じり気がなく爽やかで瑞々しい。ぜひ実物を目の当たりにしていただきたい。(賀国)