独自の眼差しで役に命を吹き込む 俳優・毎熊克哉としての矜持
社会や人々の在り方を懐疑し将来への希望を見出そうとするテーマの作品は数多く存在するが、紀里谷和明監督の映画『世界の終わりから』は現在、過去、未来の時空を交錯させるアプローチで、絶望と希望を鋭く深くストーリーに落とし込んでいた。両親を亡くし学校でも所在がなく、常に不安と隣り合わせの日々を送る女子高生のハナ(伊東 蒼)。突如として自分の見た“夢”が人類存亡の行方に懸かっていることを告げられ、戸惑いながらも未来を変えるべく奔走するが——運命に抗おうと策略する者、一筋の光を信じる者——同時に人間の本質を目の当たりにする。毎熊克哉が演じるのは、政府の特別機関の人間で、ハナの保護及び彼女の夢の中での行動を把握しようとする江崎。未熟で不安定なハナの心情は映画を観る者にも伝播するが、次第に江崎に心を解放していくハナの姿には、信じられる人が身近に存在する喜びや幸せをひしひしと感じ、希望が湧き上がる。それはふと感情を零した江崎からも同様に受け取れるものがあった。相手を拒絶するのではなく想像する、そしてほんの少しでも歩み寄れたなら。「誰もが持つちょっとした希望を掬い上げてくれる作品」と毎熊が話すように、我々の普遍的かつ人間的な願いが本作には詰まっている。