『ケイコ 目を澄ませて』の三宅 唱監督が、松村北斗、上白石萌音と紡ぐ新作『夜明けのすべて』
映画『きみの鳥はうたえる』や『ケイコ 目を澄ませて』などの作品が国内外で評価を受ける三宅 唱監督の新作『夜明けのすべて』は、日常に一筋の光が射すような、優しさが心に染み渡る物語だ。本作は、温かみ溢れる作風で数々の文学賞も受賞している、瀬尾まいこの小説を映画化したもの。
月に一度、PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さん(上白石萌音)はある日、同僚の山添くん(松村北斗)の小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。しかし、やる気がなさそうに見える山添くんもパニック障害を抱えていて、様々なことを諦め、生きがいを失っていた。友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく2人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。
PMSやパニック障害はすぐに命を脅かす病ではないが、不意に発症し穏やかな日々を送ることができない。同じことではないけれど、私たちも生きていれば不条理や小さな苦しみに直面するし、何かしら欠けているところはあるものだから、現状と向き合う藤沢さんや山添くんを観ているといつの間にか応援したくなる。夜明けを願う姿に視界が滲み、明日も頑張ろうと勇気をもらえる。
三宅監督は、どうしてこんなに痛みに寄り添えるのだろう。人それぞれの感情を個性として受け入れて、先入観に囚われず向き合い続ける。映画でのそうした姿勢を優しさだと感じたと伝えると、照れ屋な監督には時々はぐらかされながら、多岐に渡って率直に語ってくれた。