飯川 1年ほどかけてプロジェクトをおこなってきたのですが、実は今日、検討段階の試作機を持ってきました。ぜひ莉子さんに率直なご意見を伺いたいです！

莉子 責任重大ですね（笑）。わ、すごい！　色々操作もできる。このレバーは何ですか？

飯川 「手動巻き」と言って、フィルムを1枚ずつ手で巻き上げるレバーです。昔のカメラはみんなこの機構があったんですけど、あえて今の時代に作るカメラとして、新旧をミックスしていきたいなという想いから採用しました。道具を使っている感も楽しんでいただけるかなと。

莉子 そういえば、私も手巻きを使ったことが一度だけありましたが良い感触でした。（操作をしてカチカチッと音が鳴る）すごーい！

鈴木 カメラ内にたくさん入っている歯車が噛み合った音ですね。新規カメラを作るに当たって昔の設計図を起こし、1から組み立てていくのですが、部品が引っかかって動かなかったり色々と大変で。OBの方に助言をいただき、時に怒られながら（笑）、ようやくここまできました。

莉子 私はコンパクトのフィルムカメラをいくつか持っているのですが、私自身、まだ本格的な操作ができるわけではないのでオート機能に頼っていて。本当は手巻きもチャレンジしてみたいけど、中古品だから説明書などもないしネットで色々調べるにも限界があるんですよね。新しいカメラができたら、初心者にも分かりやすい説明書や動画なども見られたら嬉しいなと思います。そういえば今、お話しながらずっと検討段階の試作機を持っていたんですけど、すごく軽いですね。しかも薄いので、スマホみたいに肩からぶら下げられるとさらに便利だと思います！　紐（ストラップ）も何種類かあれば、その日の気分やファッションによって選べて楽しそう。綺麗な景色が広がる場所に行ったらデジタルカメラやスマホだけじゃなくて絶対にフィルムカメラでも撮りたいんですけど、最近のバッグって小さいのが流行っているじゃないですか。私はカメラ・ファーストなので（笑）、カメラが入るサイズのバッグ選びを考えると、持ち運びが簡単なのはすごく魅力的です。

鈴木 嬉しい言葉を聞けました。スマホ感覚で持ってもらいたいなと思って。

莉子 私、撮影現場にも毎回フィルムカメラを持って行くのですが、可愛いし持ち運びしやすそうなので、現場のみんなからも喜ばれそうなカメラだなと思いました。最近、俳優やモデル仲間など、私の周りでもフィルムカメラを使う人が増えている印象があって。撮影現場で『写ルンです』が出演者に支給されて、お互いを撮り合った写真を番組の公式SNSで公開する機会も多くなりました。私物のカメラで撮影した写真だと、街の現像屋さんに行ってスマホに画像転送してもらっています。

バァフ フィルムの銘柄にこだわりはありますか？

莉子 〈コダック〉の色味が今時っぽい鮮やかな感じで好きですが、時期によっては品薄だったりするので手に入るものを使っています。フィルムカメラの何が楽しいかって、何十枚と撮り貯めて現像に出した、その1時間後とかにやっと自分の手元に写真が届くことで。「どんな写真になっているかな？」というワクワク感もそうですし、36枚撮りのフィルムを入れて今は残り28枚だから、あの作品の撮り始めたのはあの作品の頃かな？とか思い返せるのも好きで。1本のフィルムだけでも時の流れを感じるんですよね。知識は全然ないですが、単純に撮るのが楽しいのと現像が大好きなので、早く現像に辿り着きたい！と思いながら撮っています（笑）。なるべく現像回数を増やしたいから、フィルムも36枚より24枚とかを買うようにして月に2回くらい現像に行ったり。

鈴木 すごい、使いこなしていますね。今日はせっかくなので莉子さんにも何か撮っていただこうかなと思いまして、撮影モデル用に美味しいたい焼きと（笑）、『RICOH AUTO HALF』というフィルムカメラを持ってきました。

飯川 普通は撮影するとフルサイズの横長の画像になりますが、ハーフは35mmフィルムの半分のサイズで撮影するので、1コマに2枚の写真を並べられるんです。SNSとかでもニコイチの写真をよく見かけませんか？

莉子 確かに最近よく見ます。違う絵が2枚並ぶのも面白いですね。こんなにフィルムカメラの種類があるなんて初めて知りました。

バァフ 莉子さんは『写ルンです』からフィルムカメラを始めたそうですが、そもそも最初に使おうと思ったきっかけは？

莉子 高校生の頃にフィルムカメラ風に撮れるアプリが出てきて、アプリも良いけど実際に撮って現像した方が楽しいんじゃない？と思って。母がまさに『写ルンです』世代で、使い方を教えてもらううちにのめり込んでいきました。ボケたりブレた写真もあるけど、それも味わいだし楽しくて。高校はスマホの持ち込みが禁止だったので『写ルンです』を持参して、日常だけじゃなく球技大会や体育祭の時も撮影していました。（写真を見せて）これみたいに、誰かの指が写ってしまうのも面白くないですか（笑）。

飯川 そうそう、この味なんですよ！　カメラに詳しい方が見ると「失敗写真でしょ」と言われてしまったりするけど、フィルムカメラの良さを伝えるのって難しいんですよね。だからこそ、莉子さんのように若いユーザーさんが楽しく使って広めてくださるのがすごく嬉しいです。

莉子 ありがとうございます。私も最初はちんぷんかんぷんで、何から入れば良いのか全く分からなかったです。とりあえずネットで初心者が使いやすい機種を調べて、中古サイトを見つけて購入画面までやっと辿り着く、みたいなことをしていたので。この機種でこの値段は果たして合っているのか？と思ったり（笑）。それこそ、フィルムカメラを始めようとしている私の友達の中には「フィルムカメラって新品はないの？」と言っている子もいますし、少し敷居が高いからか中古品しかないことを理解している人は少ないかもしれません。それに、中古品だからどうしても壊れて使えなくなる場合もあるじゃないですか。高い買い物なので手を出すのをためらってしまう部分はあるかなと思います。

鈴木 そうなんですよね。せっかく購入したのに壊れた状態で届いて、お店に行っても「これは修理できません、ジャンクです」と言われてしまったユーザーのエピソードもよく耳にするのですが、本当に泣けちゃいます。新品でしっかりと保証の付いた製品をメーカーから出せたら、そういうこともなくなるわけで。我々も検討段階の試作機が順調にいけば、発売までなるべく早く漕ぎ着きたいなと考えています。

PHOTOGRAPHS BY TAKEO SUZUKI&RIKO

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①『RICOH AUTO HALF』にて撮影。作品例を見ながら「色々組み合わせできそう」と莉子も興味津々。

②「高校の卒業式。いただいた花束と、3年間支え、支えてもらった大切な友達と。画面いっぱいの花束と不規則な感じがフィルム感満載で、好きな1枚であり思い出の1枚です」

③「数年前に年末年始にかけて人生初の密着をしていただき、その時に見に行った初めての初日の出。年明けから初主演した連ドラが始まったこともあって、色々な感情の中撮影した記憶があります。綺麗にフィルムに収めることができたお気に入りです」