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短期連載 PENTAXフィルム・プロジェクト部日誌 vol.5 Guest 石田真澄

AUG. 18 2023, 12:00PM

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文 / 堂前 茜

「フィルムカメラの新規製造」を目指す〈PENTAX〉「フィルムカメラ・プロジェクト」の過程を追う本連載。第5回のゲスト・写真家の石田真澄は、19歳の時に初個展『GINGER ALE』(2017年)を開催、翌年に写真集『light years-光年-』を発表し、今では雑誌から写真集、広告までと幅広く活躍する若き俊英だ。石田と対話したのは、〈リコーイメージング〉PENTAX事業部・開発統括部・第1推進部・部長の飯川 誠、同第1推進部・商品企画・デザイナーの鈴木タケオ。

バァフ 石田さんは写真をいつから?

石田 中学校に入ってからなので、13、4歳くらいです。最初は「LUMIX」のデジタル一眼レフで撮っていて。元々は、ガラケーで撮るのが好きだったんです。ガラケーを持ったことで、いつでも写真が撮れる状況になったんですよね。通学路や、友達と遊んだ時、家でもどこでも、手軽に撮っていました。で、フィルムカメラを始めたのは、15、6歳。「写ルンです」を小学校の時にギリギリ使っていた世代だったのですが、高校生の時に久々に買ってみて。その後は、家にあった家庭用のコンパクトのフィルムカメラを使い始め、自分で初めて買ったのは、高校の後半くらい。〈京セラ〉が出していた「GOKO」のニュー・シリーズで、「Macromax」という35mmのコンパクトのフィルムカメラを使っていました。というか、家にストックがあるくらい好きで、今でも使っているんです(笑)。いわゆるコンパクトのフィルムカメラの半押しでピントを合わせる機能が一切なくて、簡単に言うと、「写ルンです」と同じ仕組みのカメラ。押したら撮れるんです。フラッシュ・オン、オフのみの機能。アッと思った時からシャッターを押すまでのスピードが速かったのが自分の中では一番大きいポイントで、色々といい塩梅なんです。大学に入った後は、今度は〈Nikon〉の「F3」や、〈CONTAX〉の「G2」を買ったりと、コンパクトではない一眼なども買ってみました。

飯川 石田さんはレンズのゴーストを作品によく入れられているじゃないですか? 絞りの形を出したり、出さなかったり。ゴーストの使い方がお上手ですが、ファインダーを見ながら出る場所を覚えるんですか? 見えない時もありますよね?

石田 あります、あります。逆光の場所でちょっとあおるとか、フレアやゴーストが出やすい場所の時は、出るだろうなと思いながら撮りますが、撮る人は分かるじゃないですか。それを防ぐためにレンズ・カバーを付けたりするけど、それこそ付ける、付けないが最初は分からなくて。撮っていたら「アッ」となって、でも悪いとは思わず、むしろ私の好みだったんです。

飯川 すごくいいアクセントに入れていらっしゃって、出方を熟知されているなと。メインの被写体のところに被らないように入れているのもすごいなと思いました。

石田 例えば縦位置で撮って、顔が真ん中の時に顔にフレアがかかっちゃうと、何も写っていなかったりしますよ。フレアは操るというよりは、フレアが出るのは分かるので、角度を変えて何回か撮ることを繰り返したりしています。

飯川 私、レンズ鏡筒の設計をやっているので、フレアやゴーストが出ないように設計するんです。

石田 そうですよね(笑)。

飯川 夏帆さんとの写真集『おとととい』のゴーストの出方、最高ですよ、これ(と言ってその写真を見せる)。角度や絞りで出方が変わるのは分かるのですが、石田さんはヴァリエーションが豊富で。

石田 でも、フレアが出るのは、全部同じカメラの同じレンズなんです、基本的に。「F3」には50mmのレンズを付けているのですが、そのフレアが好きなんです。

飯川 石田さんみたいな写真を撮る方って、若い写真家さんでもそうですし、オールド・レンズの愛好家さんでも結構多いんです。「こういうゴーストが出るからこのレンズがいいんだ」と言われる。我々からすると、ゴースト=悪だ、みたいに、出ないように作り続けていたのですが、感性で「この写りがいいんだ」と、ここまで上手く光が表現されると……。

バァフ 開発中の新作のレンズ、フレアが出るくらいの方がいいとか……? そんなに簡単な話ではないと思うんですが。

飯川 詳しくは言えないんです(笑)。性能を目一杯高めたレンズとは少し違うようにしたいなと。というのも、若い人たちの写真を見て勉強になったのはそういう点で。要は道具の使い方ですが、その時あるものを上手く使われる。そして使い方にその人の個性が出ますよね。だから綺麗に写るだけのレンズというよりは、味のあるものを作りたいなと思っています。

鈴木 石田さんはこれからカメラが出るとなったらどんなカメラが欲しいですか?

石田 私、撮ること自体が好きなので今のところは機械に探究心が少ないんですよね。現状のカメラに満足しているというか。でもスナップが好きなので、持ち運びの良さは大事で。あとはやっぱり、マニュアルでも、最初から撮りやすいカメラだといろんな人が使いやすいのかなと思います。最初に全部オートで撮れる機能もありつつ、レンズを替える楽しさも兼ね備えていると、幅広く好まれるんじゃないかなというのはあって。買ったらすぐ使える手軽さがないと、「フィルムカメラは難しい」と先行しているイメージがあると思うので、第1段階としては、そのまま使えるっていうのはすごく大切だと思っています。ただ、みんなとは少し違うのがいい、みたいなのもあるじゃないですか? それこそフィルムカメラを使ってみたいと今思っている20代前半とかの子は。

飯川 撮りやすくていじりやすくて、かつ、他と少し違うところもある、みたいなカメラが何とかできたらいいなと思います(笑)。

石田 あと大き過ぎないと嬉しいですね。

飯川 なるほど……小型化を優先して開発を進めてしまえばできないことはないんですが、今回、手巻きの機構を採用しようと思っていて。ガリガリって巻いた感触って、フィルムで撮っている感じがするじゃないですか。

石田 昨日、手巻きの「F3」で3、40本撮影していたら親指の皮が剥けました(笑)。ずっと自分で回すから。硬くないのをお願いします(笑)。

バァフ 改めて、フィルムカメラとフィルム写真の魅力をお伺いさせてください。

石田 高校生の時に自分で買ったカメラを初めて使ってみた時に、36枚撮るのに、1カ月くらい時間がかかって。現像したのを見てみると、撮れていない写真があったり真っ暗なものもあったのですが、何を撮っているか、全部覚えていたんですよ。前後の流れも鮮明に覚えていて。この写真はブレているけどあの時のあの場所だなとか、逆光で見えないけどあの子の写真だなとか。答え合わせみたいな感じで撮った写真を見るのがすごく楽しくて、それがきっかけでフィルムを定期的に使うようになったんです。見返すタイミングがあるのはフィルムだなと思います。データや「iPhone」だと、量は撮れるけど、意外に見返すタイミングって少ないんです。旅行の写真などは見返したりするかもしれませんけど、その前後の写真を覚えていなかったりもする。でも、フィルムで撮って、その後、現像して、そこから見返してセレクトするといった一行為があるのは、記憶が濃くなってく気がして、フィルムならではだなぁと思っています。

PHOTOGRAHS BY MASUMI ISHIDA

(メインカット)夏帆との写真集『おとととい』の中の1枚。自宅のカーテンの写真。写真集では本体表紙に使用。①スイスへ旅行した際の写真。美術館の中から撮った街の小さな川。館内の作品の色が反射し虹色になっていた。②韓国へ旅行した際の写真。タクシーから撮ったソウルの街並み。③イタリアのベネチアへ旅行した際の写真。ベネチアは至る所に運河があり水辺の写真ばかり撮っていた。

INFORMATION OF PENTAX

「smc PENTAX-FA 50mmF1.4 Classic」

オールドレンズで撮影したかのような個性的な描写が愉しめる標準レンズが発売中。光源の場所や被写体に応じて変わる「虹色フレア」の位置やサイズを工夫することで、最新設計のレンズでは味わえない個性的な唯一無二の描写が愉しめます。

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