APR. 24 2023, 12:00PM
先週からスタートしたばかりのドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』に出演する片岡 凜に、ドラマが始まる前のタイミングでインタヴューをした。
電車の1両が突如未来の荒廃した世界にワープしてしまい、居合わせた乗客たちがサヴァイヴァルする物語。カリスマ美容師・萱島直哉(山田裕貴)、消防士の白浜優斗(赤楚衛二)、高校の体育教師である畑野紗枝(上白石萌歌)ら様々なキャラクターが活躍する中、片岡が演じるのは、大人へ不信感を持ち、彼氏の和真(日向 亘)だけを頼りにする女子高校生の小春だ。極限下だからこそ浮き彫りになる人間性、食べるものも飲むものもない状況で剥き出しになる本能——元いた世界で各々が抱えていた事情や想いも交錯し、よりディープなストーリーの展開が期待される本作。片岡はこの世界で何を感じ何を学び、これから何を発信してくれるのだろう?
片岡と会うのはバァフアウト!本誌での取材ぶり、2度目だが、相変わらずの凛とした佇まいはそのままに、以前よりも打ち解けてくれたのか、撮影でも屈託のない表情など様々な顔を見せてくれたのが嬉しい。芝居へのスタンスは常にストイックで、夢中で台本を読んでいる時は1日食事しないでいても平気だと言う片岡。好きなものにどっぷりと浸るその才能の開花の様が本当に楽しみだ。
バァフ ドラマの舞台が荒廃した未来だと聞いた時、片岡さんが出られるなら、そういった状況でも勇敢に立ち向かうキャラクターを演じられるのかなと勝手にイメージが湧いたのですが——以前アクション作品にも出てみたいともおっしゃっていたので。実際はどんな役ですか?
片岡 実際は、見ず知らずの大人ばかりが集まった電車という空間の中で、私が演じる佐藤小春という女子高生と、彼氏役である江口和真だけが唯一の未成年で、どちらかと言うと、サヴァイヴァルの環境に対してはものすごく消極的な役で。崖を上がったりするキャラクターもいる中で、むしろあまり動きにいかない役なんです。
バァフ そうなんですね。CMや番宣を見たら、山田さんや上白石さんらはガンガンに険しい山道を登ったりされていたので、てっきりそっち寄りかと。
片岡 違うんです(笑)。小春は大人に対して反骨精神、年頃ならではの反抗的な心を持っている子で。AB型という設定なのですが、本当に心を許した人にしか本心を言わなかったり、それ以外の人に対しては敵対心があったり人見知りだったりするタイプなので、本当に和真とずっとくっ付いて列車の中にいるような感じです。和真だけが唯一心を開ける存在というか。
バァフ 大人に対して敵対心を持ってしまう小春の背景、例えば家庭環境なのか何なのか分からないですけど、そういう初期設定みたいなのは説明があったんですか?
片岡 ありましたが、特別バックグラウンドがあるというよりは、家族にも恵まれていて、姉妹もいるし、素敵な環境なんです。ただ私が思ったのは、高校生という年頃なのと、名門校に通う女子高生ではあるんですけど、落ちこぼれで。和真と同じ高校に入りたくて入ったけど自分は不出来なので、先生から期待されていない空気も感じたりして、つい反抗的になってしまうんじゃないかなって。それと、和真はお医者さんのお家の子なので、和真の父親から交際を反対され、和真は「今は付き合っている場合じゃないぞ、勉強しろ」と圧をかけられていて。それで余計に劣等感を感じているのはあると思います。
バァフ 監督からは、小春を演じる上で片岡さんにこういう風に演じてほしいとリクエストはあったんですか。
片岡 極力2人の世界観でいてほしいと、監督が前におっしゃっていました。どちらかというと周りの人と協力的に、この環境をどうサヴァイヴするか?というよりは、人見知りを強調してほしいと。人はこの先どうなるか分からない環境になった時、自分が知っている人物に無意識に近付いてしまう、そこで体温を感じたりすることで不安を和らげたりするんじゃないかなと。小春だったらそれがなおさら強いんじゃないかなと私は感じました。
バァフ 仮に同じ状況に片岡さんがなったら、片岡さんはどう立ち回るタイプですか?
片岡 どうでしょう……今回のドラマみたいにたくさんの方がいらっしゃるのであれば、協力的になる方だと思います。でもやっぱり不安はあるので、知っている人がいれば一緒にいたくなると思います。
バァフ そういう時に、誰と組むか、誰と仲良くなるかで命運が変わってきたりしますよね。
片岡 そうですよね(笑)。もし、私がそういう環境にいたら絶対に父親を連れていきます。心強いので。
バァフ 片岡さんらしい(笑)。登場人物の中で、誰が一番安心感のあるキャラクターなんですか?
片岡 やっぱり赤楚さん演じる優斗だったり、上白石さんが演じている紗枝ですかね。電車が止まった時から積極的に乗客の方々を引っ張って安全な場所に移動したりと、積極的に活動してくださって心強いんです。山田さんが演じる直哉は対照的で、優斗と紗枝の2人は消防士と教師ということもあって、こういう状況で特化してリーダーになれるのですが、直哉は、山田さんご本人もおっしゃられていたように、主人公っぽくない主人公で、協調性もあまりなくて、どちらかというと1人で孤立するのを好むタイプ。そういう面ではあまりサヴァイヴァルには向いていない人柄だとは思うんですが、「(人を)疑わなきゃ助かんないだろ」など、「人の本能ってこうだよな」というのを分かった上で、「どうやったら生きていけるか?」という正論を投げかけてくるので、そういった面では直哉も心強いと思います。
バァフ 『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』って観たことあります?
片岡 あ、それ、拝見したくて色々と探したんですけど、結局観られなくて。でも観たいんです。
バァフ 楳図かずおさん原作のドラマですが、非常に先見的なんですよね。非現実的だけどそういう状況になった時に人間はどう立ち振る舞うのか? どうやって生きていけばいいのか?が描かれていて、このドラマの情報が最初に出た時に『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』を思い出しました。
片岡 そういった状況で生まれる人間関係や剥き出しになる本能がどんどん出てくると思いますし。喉の渇きや食欲をどう解消するのか、みんなが不安を抱える中でどう協力をしていくのか、どう生き抜くのか?がこのドラマもキーになってくるのではと思います。
バァフ 印象に残る台詞はありますか?
片岡 私目線で読んだ時に、直哉の台詞がすごく響いて。先ほども言った、「疑わなきゃ助からないだろ」っていう台詞があるのですが——優斗と直哉が揉める場面で、優斗は、「みんなを信頼しなきゃ助からない」と言うんですが、直哉がそこで、「疑わなきゃ助からないだろ」と。人間同士、そんなにすぐ簡単に信頼できるものじゃないし、疑う気持ちも出てきてしまうだろうなと私は感じました。
バァフ そこ、難しいところですよね。片岡さんもお好きな海外ドラマはサヴァイヴァル系も多いじゃないですか? ああいうのを観ていると、誰を信じるか、誰を裏切るか、そういうのが如実だし、やられる前にやるのが鉄則だったりもする。だけどそれだけではなく、人間の中にある善きものを信じたからこそ良い結果になることもある。
片岡 そうなんですよね。群像ものだといろんな人にフォーカスを当てた作りをする作品が多いから、余計に人間関係が複雑に見えたりもしますしね。人によっては疑うし、やられる前にやるっていう精神だからこそ、集団のトップに立ってみんなを制するキャラクターもいますし、逆に信頼を一番に持ってくるキャラクターもいて、本当に人それぞれだなっていう感じですよね。
バァフ 変な意味じゃなくて、そういう状態になった時に、片岡さんは躊躇わず引き金を引きそうです(笑)。『アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンみたいに。
片岡 ちょっと鋭いかもしれない(笑)。『ジョン・ウィック』シリーズも、味方のふりして寄ってくる人に対して、でも自分は相手が敵なのを分かっているから、ちょっとした時に武器を隠したり。そういう仕草を見ていると、やっぱり人って簡単に信頼できないなって感じてしまいます。そういう作品を見過ぎなのかもですが(笑)。
バァフ いや、観ていると疑いたくもなりますよね。
片岡 どこに落とし穴があるか分からないですもんね。
バァフ『ジョン・ウィック』新作、楽しみですねー。
片岡 めちゃくちゃ楽しみです。真田広之さんも出られていて、すごいですよね。私、『ブレット・トレイン』も3回ぐらい映画館に観にいきました。
バァフ 本当に……片岡さんはデビューして間もないのにいろんなドラマに出られています。学びが多い日々を送られていますか?
片岡 はい。現場では本当にいろんなことを学ばせていただいて。今回は、人の生き様がそのまま演技に反映されるんだなっていうのをすごく感じています。例えば、演技されている時と素の時の山田さんは、役に切り替わる瞬間があまり分からなくて、本当にナチュラルに演じられているんですが、芝居されていない時の山田さんの発言や生き方のお話からは、直哉に通じる部分を感じていて。演じられている時も、本当に私の勝手な想像ではあるのですが、直哉の佇まいの中に、すごく孤独で、でもそれを周りに悟られないように演じているのが感じられて、それがすごいなって思うんです。どこか自己犠牲の気持ちがあって、傷つきながらも、それを上手に隠しながら演じられている。上手に言葉にできないんですけど、生き様がそのまま反映されるなっていうのは感じました。
バァフ それこそさっきの『ジョン・ウィック』の話じゃないけど、パーフェクトな殺し屋なのに、所々に滲み出る人間臭さやチャーミーさは、キアヌ・リーブスの生き方や人柄が醸し出している気がしてならないですよね。
片岡 そうですよね。殺しのシーン以外の場面、自分の奥さんを想うシーンや犬とのシーン1つでも心が痛むのは、殺しという仕事に徹している部分の裏側ではすごく優しい面を持っているからだと感じるからで、それはきっとご本人から出ているものもありますよね。
バァフ 片岡さんは、ご自身の内面を豊かにするために意識していることなどはありますか?
片岡 今は本当にいろんなことを学びたくて、1日1日を後悔しないようにするのが日々の目標ですが、最近はたくさん本を読むようにしています。本を読んでいると自然と主人公と出会った気分になれますし、視覚的情報が文字しかないので、全部を自分で想像するしかない分、「こういう人柄で、こういう見た目をしていて、こういう考えを持っているのかな?」と自分で考えられますよね。本の中ではありますが、人との出会いを感じて心がときめきます。本でも映画でも、何回も読んだり観たりすると理解が深まったり、それこそ伏線が分かってきたり、台詞にしても、「作った人は本当はこういうことが言いたかったんじゃないかな?」と思えたり。また、あるシーンを日常の自分に置き換えられる余裕ができたりと、いろんな見方ができるのが面白いです。やっぱり芸術という答えがないものって解釈に終わりもないので、1回読んで1回観ただけで終わるのは勿体無いと私は思ってしまいます。
『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』
演出/田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹、井村太一、濱野大輝
出演/山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇 海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向 亘、片岡 凜、池田優斗、山口紗弥加、前田公輝、杉本哲太、松雪泰子、他
毎週金曜夜10時より〈TBS〉系にて放送中
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