JUN. 1 2024, 11:00AM
『バァフアウト!』、『ステッピンアウト!』でも様々な人物のポートレートを撮影してきた、ドキュメンタリー写真家の名越啓介が、6月5日より東京・馬喰町のアートギャラリー〈KKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)〉にて写真展『よあけの』を開催する。
〈KKAG〉に於ける展示は3回目。第1弾となった『THE MAN』(2021年)では、アパレル・ブランド『RADIALL』のヴィジュアルとして役者・渋川清彦をモデルに撮影した写真集『ALL.』から、厳選した約40点の作品を展示。次作『Familia 0565』(2023年)では、南米出身者が多く住む愛知県豊田市の公営団地「保見団地」を舞台に。世界各地のマイノリティな人々と寝食を共にしてきた名越ならではの撮影スタイルで、自身も約3年団地に住み込み、強烈な家族の結び付きを写し出した。
今作『よあけの』はいずれとも異なり、名越の私的な表現作品が並ぶ。2018年から山深い岡山の実家で病に臥す父親と向き合い、母親と共に父親の軌跡を辿ることにした名越。日本の原風景が残る父親が育った場所を中心に、彼の親族や身の回りの出来事を通じて、日本人が持つ“幽玄な世界”を24点の作品に落とし込んだ。
自身の感情を写真に表出したのは、〈代官山DINER$ CLUB〉で開催した『ON THE LINE』(2022年)が記憶に新しい。アメリカにてトレイン・ホッピング(貨物列車に飛び乗る行為。起源はゴールドラッシュの開拓時代に遡る)をおこない、毎日何十時間と貨物列車に揺られながら、線路や車窓からの景色を切り取る。それまでは、被写体の魅力を引き出すため自身の感情を決して表さないことにこだわりを持っていた名越だったが、自身の生死と対峙したことで、はじめて名越啓介という人間を曝け出す写真を撮影した。『よあけの』は当時と同じく自分自身と向き合い、大切な人の死に触れた名越の内面を表現している。
命の灯火を想像させる光、非現実的な世界に誘われるかのようにも感じられる写真群を、限られたこの期間にぜひ会場でご覧いただきたい。
十三月
ネムれない夜がある
真夜中を浮遊しながら
夢と現実を彷徨う
時の針の音とカエルの鳴き声
小手先のごまかしと運命のいたずらが厳しい境遇に陥れる
夜空を見上げる輝く月に
想い返すあの言葉が甦る
心がざわつき始める
動かずじっとして信じる
ずっと待ち続ける
あの三日月の輝く夜更けにあの人は消えた
帰る場所がなくなり
また繰り返し
振り返って
探して
また失くして
孤独を知る
そのありのままの心をさらけだして
愛の深みと己を知る
今日も 0.2 秒の人生を月影の道の中
あの人の奇跡を探しまた彷徨い続ける
耳に静かな風の音が残るよあけを思い出しながら
沈黙を続けて
自分自身を信じて求めず
よあけを待ち続ける
まぶたが色に染まってゆっくり目を開けると
柔らかな朝の光の靄にゆっくりと
自分の身体中が溶け込み包まれていった
いつかまた出会える日が必ず来る
信じる事の強さをあの人が教えてくれた
今見えるあの美しく輝く光の中へ
視界がはっきりと見え始めてきた
名越啓介
名越啓介 写真展 『よあけの』
6月5日〜22日まで〈KKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)〉にて開催
OPEN/水、木、金、土曜 15時〜21時
※日、月、火曜は休廊
※入場無料
※最終日6月22日は18時閉館
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INFORMATION OF KEISUKE NAGOSHI
トゥアレグ族と時間を共にサハラ砂漠を撮影した写真集『TUAREG』を7月に出版予定
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