CULTURE

加藤弘士と、山崎二郎が、ベースボールとミュージックを語り合う連載「我らベンチウォーマーズ」第4回

AUG. 29 2023, 11:00AM

構成/吉里颯洋
イラスト/早乙女道春

『スポーツ報知』編集委員で、ベストセラーとなった『砂まみれの名将―野村克也の1140日―』著者の加藤弘士と、『ステッピンアウト!』編集長の山崎二郎が、ベースボールとミュージックを語り合う連載「我らベンチウォーマーズ」がスタートです!

ボブ・ディランは30歳どころか80歳をオーヴァーしてなお、昔のヒット曲は歌わない「俺リサイタル」をやっている訳ですよね。まさに、生き方がロックだなって思いますね(加藤)

加藤 実は、高校、大学から社会人になっても、好きが興じてアマチュアのバンドを組んでいたんですけど……。

山崎 パートは何ですか?

加藤 もちろんヴォーカルです!(笑)。

山崎 と言うと、オリジナル曲もやられていたと?

加藤 やっていました。僕が作詞して、曲をつけてもらったりして。

山崎 オリジナル曲はどんなテイストだったんですか?

加藤 昭和歌謡が好きだったんですけど、たぶんお客さんは、あの人は矢沢永吉さんのファンなんだろうと思って観ていたのかなと思いますね。レパートリーに、永ちゃんのカヴァーもありましたから。同じバンドでサックスを吹いていた音大出の上杉雄一くんが、その後何年かして、なんと永ちゃんのバック・バンドでサックスを吹く機会に恵まれて。「永ちゃんの曲は加藤さんのバンドで演っていたんで(練習せずとも)知ってました」なんて言っていましたね。彼は今、岡村靖幸さんのツアー・バンドでずっとやっているんで、ライヴは皆勤賞でずっと観ていますね。学生時代に一緒に白球を追っていた仲間がプロ野球に行くって、多分、こういう気持ちなんだろうなと思って。「昔、一緒にバンド組んでたあいつ、今は岡村ちゃんのバンドでやってるよ。あの頃、スタジオでリハやった帰りに〈富士そば〉に食いに行ってたんだよね」って、自慢したいですよね(笑)。

山崎 そんないい話があったんですね。音楽活動はいつまで続けていたんですか?

加藤 30ぐらいまでは、ライヴハウスを借りて歌ったりしていましたね。

山崎 そうなんですか!(笑)。それはまた知られざる過去ですね。

加藤 二郎さんは野球やっているじゃないですか? で、走っているじゃないですか。草野球同様に、草バンドも楽しいんですよね。

山崎 僕は40になって野球を始めたみたいなところがありますけど、オヤジ世代が「久しぶりに、またバンドやろうぜ」っていう人が最近増えているじゃないですか? 加藤さんも再び、バンドやるってのはどうですか?

加藤 やりたいですね! 今だからこそ、歌いたいですね(笑)。

山崎 その言葉を聞くと嬉しいです(笑)。

加藤 僕は野球はできないんですけど、二郎さんがグラウンドに立つように、俺ももう一度、ステージに立ちたいなってね。ちょっと、そんな気持ちがたぎってきますね。いざやってみれば、きっと楽しいんじゃないかな?と思うんですよ。

山崎 加藤さんがバンドやっていた当時、昭和歌謡志向だったっていうことは流行の先取りというか、ハイ・センスだったんじゃないですか?

加藤 そうなんですよ。自分のバンドでそういうことやっていたら、クレイジーケンバンドが売れてきて。ちょっと早かったなと思って(笑)。

山崎 ネオGSっぽくはなかったんですか?

加藤 そうですね。GSはやっぱり好きで、ムッシュかまやつさんが好きだったんで、「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」をカヴァーしたりしていました。編成的に必要なサックス、トロンボーン、トランペットを集めてやっていましたね。

山崎 すごくいい感じじゃないですか!

加藤 いや、もうご機嫌だったんですよ。小山田圭吾さんが、ムッシュかまやつさんと共演しているのを観て、やっぱり影響を受けましたよね。

山崎 オリジナル曲のテープって、まだ持っていますか?

加藤 ありますね。今聴くと、もう恥ずかしくて恥ずかしくて(苦笑)。

山崎 もしバンド活動を再開するなら、50手前になった加藤さんがどういうソングライティングをするのか興味が湧きますよね。

加藤 いいですねぇ。今だったら、もっと何かいいワードが、フレーズが書けますかね?

山崎 酸いも甘いも噛み分けて今に至る訳ですから(笑)。ぜひそれを活かして。〈ライヴハウスの落書きだらけの、ちょっと据えた匂いの楽屋で〉とか(笑)

加藤 やっぱり、そうなんですよね。エンタメにしてもスポーツにしても、聴いて楽しむ、見て楽しむのもいいんですけど、野球で言えば、芝生の匂いとグラウンドを駆けるスパイクの刃のザクザクっていう感触を体感しない手はないし、音楽で言えば、ライヴハウスのステージの上でスポットライトを浴びて歌うというのは得難い体験なのかなと、今さらながら思い始めていますね。ライヴハウスの楽屋の匂いって、なんなんですかね? あれ、たまんないっすよね。こんな話していたら、気分は「バンドやろうぜ!」ですね。久しぶりにスタジオ入りたくなってきちゃいますね。

山崎 いいじゃないですか!

加藤 でもやっぱり、そこですよね。モチヴェーションを煎じ詰めれば、「見ているだけじゃ満足できない!」っていう世界ですよね。二郎さんに改めて訊きたいのは、参加する試合のほとんどで走っていますよね。その後、盗塁記録も積み重ねて、今季、目指すべき境地とかあるんですか?

山崎 今シーズン、ちょっとホーム・スチールにハマっていまして、既に3回成功してまして(笑)。

加藤 決めていますね!(笑)。

山崎 これ、決まったときの快感がすごいなっていうことに目覚めまして、ハマった次第です。

加藤 二郎さんの場合、助っ人で面識のないチームのゲームに行くから、助っ人の立場でホーム・スチールを狙って失敗とかって……。

山崎 絶対に許されません! いわゆる究極のプレッシャーですよね。

加藤 いや、このプレッシャーと戦うのもすごいよなぁ! そもそも、ホーム・スチールを狙うには、出塁して三塁まで行かなきゃいけないですからね。三塁まで行ったら、やっぱり狙っているんですか?

山崎 最近はもう、隙あらば!と思っていますね(笑)。

加藤 僕は今、49なんですけど、いやぁ、老いぼれている場合じゃないっすね!

山崎 ホーム・スチールって、普通はサインプレイじゃないですか? ところが、草野球でのホーム・スチールって、敵味方含め、100%誰も想定してない訳ですよね。つまり、味方のバッターも審判も気づかなくて、誰しもが面食らうという(笑)。

加藤 これはまた、とんでもない麻薬を手に入れちゃいましたね。まさに、ロックンロール・ドラッグを(笑)。自分の話に戻すと、バンドやりたいっすね。生きていくのに、ロックンロールは必要ですしね。

山崎 仕事は落ち着いて、時間の余裕もそこそこできて、子育てもある程度終わって、「じゃ、バンドでもやるか」みたいな人が増えているんじゃないですか?

加藤 それって、理に適っていますよね。となると、音楽シーンがちょっと変わってきますよね。そっかぁ。あの頃、バンド・ブームの直撃世代の人たちも、今や50代か。

山崎 「キープ・オン・ロックンロール」じゃないですけど、やっぱり50を過ぎても、同じポリシーで変わらずにやり続けている人って価値が出るじゃないですか? ミック・ジャガーに至っては、未だに腰をくねらせながらステージしていますよ。

加藤 心のどこかに「Don’t trust over 30」のメッセージはあるんだけども、気付いたら時代は流れていて、ボブ・ディランは30歳どころか80歳をオーヴァーしてなお、昔のヒット曲は歌わない「俺リサイタル」をやっている訳ですよね。まさに、生き方がロックだなって思いますね。いやむしろ、そういうレジェンド・ミュージシャンって、人生経験を積んで様々な想いをしてきたからこそ、奏でられる音や聴かせられる声がある境地にいるのかなと。

INFORMATION OF HIROSHI KATO

『スポーツ報知』編集委員。『スポーツ報知』公式『YouTube 報知プロ野球チャンネル』のメインMCも務める。

 

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