東出昌大が、80年代の若松プロダクションを描いた映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』に出演。映画人と喧々諤々に語り合ったこととは?
東出昌大が山で暮らしてから初めて撮影現場に入ったという、昨年公開の映画『福田村事件』(森 達也監督作)。演じた船頭の田中倉蔵は集団の中で孤独だけれども、川面を眺めながら人間の尊厳を慮る、野生的な魅力のある男で、強く印象に残った。『福田村事件』で脚本を担った井上淳一はその制作途中で、構想中だった映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』への出演を東出にオファーする。
『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』の脚本・監督の井上淳一は、2012年に亡くなった若松孝二監督が代表を務めた若松プロダクション出身で、2018年公開の映画『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督作)では脚本を執筆。好評を博した『止め俺』の公開時、1983年に若松孝二が立ち上げた名古屋の映画館〈シネマスコーレ〉でも「続編は作らないのか?」と聞かれたが、「『止め俺』で描かれた70年代の若松プロに勝る時代はないから難しい」と話していた。ただその後、映画館がコロナ禍を乗り越える様に密着したドキュメンタリー映画『シネマスコーレを解剖する。〜コロナなんかぶっ飛ばせ〜』(菅原竜太監督作)が公開されたり、時間を経たことで、「〈シネマスコーレ〉の黎明期を描いたら続編になるんじゃないか」と思い至ったという。東出が演じる、〈シネマスコーレ〉支配人の木全純治を基軸とした80年代の若松プロの物語で、若松孝二役を前作に引き続き井浦 新が演じている。
東出はインタヴュー中、上の世代の映画人たちとのよもやま話を心底楽しそうに話していた。山でも地元の年長者の方々に可愛がられていると聞く。色々なことがあっても、それでも人が好きだという言葉通り、できる限り人と自分と向き合って、思慮を重ね悔いながらも人を想う生き方が滲み出ていて、えもいわれぬ魅力を放っているのだと思う。そうした自身のすべてを注ぎ込んでいる芝居だからこそ、役に惹きつけられてしまうのだろう。