.ENDRECHERI.が「funk love」発足後、初となるファン・ミーティング――愛に満ち溢れた空間!――を開催
.ENDRECHERI.の会員サーヴィス・サイト「funk love」(今年3月21日に発足した登録無料の情報会員サイト)による初のイヴェント『Erother_meeting Do more the E_FUNK』が東京と大阪で開催された。ここでは〈国際フォーラム A〉で行われた東京公演をレポートしたい。
夏仕様のシャツにショートパンツというご機嫌なスタイルで登場した.ENDRECHERI.の華麗なるファンク・ステージ、その1曲目を飾ったのは新曲「Do more the E_FUNK」。リピートされる〈Come on Erother!HEY ! ! LET’S ENDRE IT UP! !〉というフレーズを聴いているうちに、.ENDRECHERI.の夏がやってきた! いよいよ始まる! と客席のテンションは次第に上がっていく。曲が終わり盛大な拍手を受け、.ENDRECHERI.は「昨日の初日では初めて来たという人が結構いた、今日はどうやろ?」と、客席に向かって「初めて来たって人はどれくらい?」と挙手を投げかける。ちらほらといる初めて来た人へ、いや、会場全体に向けて、今日のイヴェントの趣旨、「なぜ自分はこんなにもファンク・ミュージックにのめり込んでいるのか?」という理由をきちんと説明したいのだと語り出す。「僕の人生をかけてやっているからには意味がある」、「テレビなどで伝える機会はあまりない。ではライヴでとなるが、ステージでは音楽をしっかり届けたいので、今回のようなファン・ミーティングの場で『なぜ好きなのか?』をみなさんにお伝えしたい」と、「.ENDRECHERI.のfunk講座」が始まった。
「痛みの果てにファンク・ミュージックに出会った」、「自分は死なずに生きることを選択した。苦しくてしんどかった時に導いてくれたのがファンク。ファンク・ミュージックをやるたびに、生きようと思ったあの日に立ち戻れる」、「ファンク=自分。自分を惜しみなくアウトプットできる、自分の喜びを表現できる。自分の命を最大限に生きることができる」と.ENDRECHERI.は語る。そして「今はネットもあるのでファンクについて一度調べてみてください。まずは自分で調べることが大事」と説いた上で、ファンク・ミュージックを語る上では欠かせないレジェンド・ミュージシャンを1人ずつ紹介していく。
ジェームス・ブラウン、スライ・ストーン、プリンス、ジョージ・クリントン、そして最後に.ENDRECHERI.を紹介していく。.ENDRECHERI.らしいのが、大きなスクリーンにそれぞれの似顔絵を描き下ろしてきたこと。全部の写真を紹介したいくらい、非常にユニークで特徴を掴んだイラストだった。ジェームス・ブラウンについては「粒だった音を出す人。命のエネルギーを惜しみなくアウトプットした」。スライ・ストーンには「太陽を感じます。太陽がゆっくり昇るような感じの音楽。ライヴに行ったことがあるのだけど、彼が座っているだけで良いと思ってしまう。自分もいつかその存在だけで『ファンクですね』と言われるようになりたい」と話す。「(ベースの)チョッパー(奏法)を開発した人」といった専門的な話も惜しみなくしてくれるのはとてもありがたい。プリンスに関しては「エロティックさと変に癖になるヴォーカル。ギターもベースもピアノも全て自分でやる、しかも神がかって上手い、マルチ・ファンク・マスター」であると説明した。ジョージ・クリントンは、リハーサルでの貴重なエピソードを披露(.ENDRECHERI.は『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023』でセッションしている)。「お前がいたいなら、いろよ」と言ってくれたと話す.ENDRECHERI.の顔からは思わず笑みが溢れる。そして最後に紹介するのは、.ENDRECHERI.本人。「アイドル文化を生きてきて、世の中が自分に持つイメージに悩まされてきた中で、ファンク・ミュージックに出会った」、「生きる意味と、エネルギーを放つこと」を信条にファンクに向き合ってきたと話し、「自分なりにファンク遊泳を続けていく」と宣言。加えて、アーティスト名の変遷やアートワーク、.ENDRECHERI.のキャラクターがなぜ出来上がったのか?なども丁寧に説明してくれた。印象的だったのは、ロックなど様々なジャンルの音楽を引き合いに出しながら、「メッセージが大きくなればなるほど、ファンクで伝えた方が、表現が柔らかくなる」と話していたこと。平和や愛についてのメッセージを投げかけると、表現が違えば、重くなり、硬くなり、時に大袈裟にもなり、届きにくくなるケースがあるかもしれない。しかし、ファンクだとスッと気持ち良くメッセージが入ってしまうマジックは確かにあると思った。駆け足で紹介してしまったが、.ENDRECHERI.はゆっくりと時間をかけて、いろんなことを教えてくれた。
ファンク講座の後、「MYND〜Super funk market」、「LOVE vs. LOVE」、「.ENDRECHERI. Brother Erother(セッション)」、「Wedding Funk」を披露。合間にメンバー紹介もあったのだが、それぞれの役割(ブラスはエフェクトを多用しないといけないとか、他ジャンルの音楽とは違った表現として、吹き方のタイム感、アタックやブレスのタイミングが大事だ、といった話。キーボードについてはゴースト・ノートと呼ばれる、音程を奏でるのではなく音を潰したビートを忍ばせることがポイントで、ファンクをやる人が日本で少ない理由について彼なりの考察をしてくれた)や、演奏の手法が違うだけで同じ楽曲でも聴こえ方がどれだけ違うか?など実演を交えながらレクチャーしてもくれた(「4 10 cake(ホットケーキ)」をロック・アレンジしてみたり、70’sや80’sテイストで演奏するとこうなる、などなど)。
とにかく実りある時間だった『Erother_meeting Do more the E_FUNK』。ミーティングの冒頭で、「『funk love』を立ち上げたことで新しい出会いがあるのを期待している」と本人が話していたが、何よりの出会いがあったのは、言うまでもなく訪れたファンである。.ENDRECHERI. を通してファンク・ミュージックを知った人も多いだろうが、そこから先、どういう風にファンクを広げて聴いていったら良いか、分かりかねていた人もいるかもしれない。今回を機に、これまでと違うファンクの聴き方と出会えたことは計り知れない恩恵だ。
『Erother_meeting Do more the E_FUNK』
7月6日〈東京国際フォーラム ホール A〉にて上演終了