映画『箱男』監督の石井岳龍が信頼を寄せる俳優、白本彩奈の特別な魅力
石井岳龍監督が安部公房の小説『箱男』を映画化。しかも一度、1997年に永瀬正敏主演で立ち上がった企画が頓挫しており、時を経て2024年に同じく永瀬主演で公開すると聞けば、気になって仕方がない。共演には、浅野忠信と佐藤浩市。成り立ちも座組みも特別な本作で、石井監督が「葉子役にはこの人しかいない」と言い切るほど信頼を寄せているのが、白本彩奈だ。
『箱男』は、ダンボールを頭からすっぽりと被り、都市を徘徊し、覗き窓から一方的に世界を覗き、ひたすら妄想をノートに記述する“わたし”(永瀬正敏)が主人公。しかし、箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野忠信)や、完全犯罪に利用しようと企む軍医(佐藤浩市)、“わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本)らが関わるようになり、状況が変化していく。
取材で白本の話を聞いていると、役柄について細やかに分析し解釈を深めていて、とことん考え抜いている様子が伝わってくる。その原動力は、芝居への情熱。役の人物についてあれこれ憂うことができるのは、俳優にとって重要な要素のように思う。白本の演じる葉子には、強く惹きつけられた。