90年続いた劇場を守り続けた人々の物語に出演した峯田和伸。峯田にとって「別れ」と「映画館」とは?
今はもうなくなってしまった人や場所を、こんな風に晴れやかな気持ちで思い返すことができたらどんなに素敵だろう。そう感じられたのは、映画『BAUS 映画から船出した映画館』。登場人物の台詞や映像の温度から、劇中の様々な「別れ」に対して敬意と愛情を感じられ、心が温かくなった。少しの悲しみと寂しさを抱えながら、変化や別れの先にある希望を見つけることができるのだと教えてくれる。
舞台は1927年。活動写真に憧れ青森から上京したサネオ(染谷将太)と兄のハジメ(峯田和伸)は、吉祥寺初の映画館である〈井の頭会館〉で働くことを決意。ハジメは活弁士、サネオは社長として劇場のさらなる発展を目指すも、時代は戦争へと流れていく。1951年には〈吉祥寺バウスシアター〉の前身となる〈ムサシノ映画劇場〉が誕生し、30年の歴史を築いた。本作は時代の変化に流されず人々に娯楽を提供し続けた劇場、そしてそれを守り続けた人々の物語である。原作は、〈吉祥寺バウスシアター〉の元館主・本田拓夫による著書『吉祥寺に育てられた映画館 イノカン・MEG・バウス 吉祥寺っ子映画館三代記』。同書をもとに映画監督・青山真治(2022年に逝去)が執筆した脚本を、バンド・Bialystocksのヴォーカルとしても活動する甫⽊元 空が引き継ぎ、監督を務めた。また、劇中の⾳楽は〈吉祥寺バウスシアター〉や青山とも縁の深い⼤友良英が担当している。
ハジメを演じたのはロック・バンド銀杏BOYZの峯田和伸。スクリーンの中で生きるハジメは飄々としているように見えて、繊細でどこか寂しげで、峯田自身に思えてならなかった。それは、ミュージシャンとしても活動している彼の楽曲にはいつも生と死、そして寂しさがつきまとっているように見えるからだと思う。ハジメの人生を生きた峯田に、作品のこと、そして別れや喪失について訊いた。