岡田将生への信頼感から生まれた“男性ヒロイン”が主人公。山下敦弘と宮藤官九郎の初共作映画『1秒先の彼』
山下敦弘監督と脚本家・宮藤官九郎がタッグを組む映画『1秒先の彼』が、ついに公開される。お互いの作品に出演したり関わりはあったものの、意見を交わし合いながらがっちりと共作するのは初めて。どうしたって期待が高まる。
本作は台湾映画『1秒先の彼女』が原作で、制作陣はリスペクトを持ったリメイクを模索したのち、日本版は男女のキャラクターを反対に配役する設定となった。主演に指名されたのは、両者の作品に出演してきた岡田将生。「誰が演じるのかが肝だと思っていた」と監督が零していたが、話を聞いて思うのは、山下と宮藤からの岡田への特別な愛着と信頼感。岡田は口が悪いのに憎めない、何もかもが1秒早い男・皇一(以下、ハジメ)を演じる。ハジメはせっかちでスタートダッシュもドアを開けるのも人より早い、郵便局の窓口で働く局員で、ある日なぜか丸1日の記憶がない。毎日やってくる長宗我部麗華(清原果耶)が何かを知っているようだが、彼女は逆に何でも1秒遅い大学生だった——。
社会の枠からちょっとはみ出してしまう人々をすくい上げてきた山下と宮藤は、自分のテンポを大事に生きて良いのだと、今作でもそっと背中を押してくれる。岡田はその肯定を真正面から受け取って突き進み、愛らしい人物を立ち上げた。終始和やかだった鼎談の雰囲気が伝わると嬉しい。