ゆりかとホストたちの奮闘が話題のラヴ・コメ『埼玉のホスト』。座長の山本千尋自身にも現れた変化とは?
歌舞伎町随一のホストクラブから買収の危機にある、埼玉のホストクラブ「エーイチ」。接客もキャストの容姿も粒揃い……とは言い難いほど廃れた店の経営再生に乗り込んだのは、業界で名を馳せている超優秀なコンサルタントのゆりか(山本千尋)だった。店のナンバー1になり得る逸材、キセキ(福本大晴/Aぇ! group / 関西ジャニーズJr.)を見つけ改革へと乗り出すが、さまざまな困難に行く手を阻まれてしまう。放送中のドラマ『埼玉のホスト』は先々が気になるストーリー展開と、役者たちの小気味良い芝居のテンポ感が後を引く作品だ。中でも、本作で連続ドラマ初主演となる山本が扮するゆりかは自分以外の人間を信じず、鉄壁という言葉がよく似合う佇まいで、投げかける言葉にも一切ノイズが混じらない。山本の代表作として紹介されることの多い、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』、〈Netflix〉『今際の国のアリス』シーズン2では、しなやかでキレのあるアクションを度々披露してきたが、本作ではスーツを身に纏い、感情をほとんど出さず動きも少ない、静の芝居がベースとなっている(ゆえに、取材時も役衣装でカメラ前に現れた途端、「ゆりかの表情になっちゃう!」と本人が吹き出してしまうほど役が染み付いているようだった)。だからこそ回を重ねるごとに見えてくる、ゆりかの義理堅さ、ふとした瞬間の綻びには一気に身近さを感じてしまい、愛らしさすら覚えるのだ。
俳優を生業としてから10周年を迎える山本。役を芝居に落とし込む過程を紐解くと、丹念で真摯な人柄が見えてきた。