主演舞台『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』で怪盗・ルパンを演じる古川雄大。キャリアを重ねた今、改めて「失敗」に目を向ける理由
凛とした様から漂う心地良い緊張感とメロウなムード。相反するものを空間に同居させ、掴もうとしてもするりと手から抜けてしまうような独特の浮遊感の持ち主である古川雄大の撮影は、まるで徐々に変化する水面のようで、いつまでも見ていたくなるほど惹き付けられた。そんな彼が挑む次なる作品は、〈帝国劇場〉にて念願の単独初主演を飾る、ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』。その素顔は謎に包まれ、様々な人物に変装し金持ちを相手に盗みを働く怪盗、アルセーヌ・ルパンを演じる。本作はフランスの小説家、モーリス・ルブランの『怪盗ルパン』シリーズを下敷きに、脚本・歌詞・演出を手掛ける小池修一郎の自由な創造性によって、ルパン、令嬢クラリス、魅惑的な美女・カリオストロ伯爵夫人、さらにはシャーロック・ホームズといった著名なキャラクターたちが集結し、華やかな冒険活劇ロマンへと仕立て上げられる。それだけでも十二分に心は躍るが、前述したように実体の掴めない古川の姿にはどこかルパンの影を重ねてしまい、早くも期待は高まるばかりだ。
真摯さの狭間で時折顔を出すユニークな古川の人柄にも魅了されながら(本人が意図していないのもまた良かった)、作品や表現者としての在り方について話を進めた。