映画『花緑青が明ける日に』出演の古川琴音に訊く本作の魅力。「役と自分の身体が同期していくような感覚があった」(バァフアウト!25年7月号掲載)
風景や環境、伝統など、何かが姿を変えてしまうことや移ろっていくことに対して、喪失感やもどかしさ、あるいは憂いが心の中を占めることがある。けれど、たとえ形が異なったとしても、新たな視点を得たとしても、これまでの歩みが軽々しく忘れ去られるわけでもなければ、なかったことになるわけではない。“今”と“この先”をもっと柔らかな眼差しで見つめられたら 。そんな気持ちになれたのは、緑豊かな森の中にある花火工場「帯刀煙火店」で育った、3人の若者たちの姿を描いた長編アニメーション映画『花緑青が明ける日に』との出会いがあったから。
本作で声優に初挑戦となったのが、古川琴音だ。演じたのは、花火への強い想いを秘めながらも、地元を離れ、東京で暮らす式森カオル。過去に起きたある事件を境に、するすると自分の手からこぼれ落ちてしまったものの存在を感じながらも、過去にも未来にも振り切ることができず、ただ立ち止まっている。古川の澄んだ声は、言葉にならないほどの繊細な感情に揺り動かされるカオルの葛藤を、瑞々しく浮かび上がらせていた。
物語の始まりは、町の再開発で立ち退きを迫られている「帯刀煙火店」を、カオルが訪れる場面から。行方をくらませた父に代わり、幻の花火「シュハリ」の完成を目指して、花火作りに没頭していた帯刀敬太郎(萩原利久)との再会をきっかけに、大きく動き出していく。