映画『さいはて』で生きる気力を無くした男性を全身全霊で演じた中島 歩、彼が語る俳優としての今の境地
昨年公開された映画は6本、今年も現時点で6本の映画が公開&発表されている俳優の中島 歩。テレビ・ドラマもコンスタントに出演するなど活動が目覚ましいが(5月23日から〈TBS〉系ドラマで初レギュラーとなる『スイートモラトリアム』にも)、本人はと言えば、今が踏ん張りどころ、といった佇まい。5月6日から公開される映画『さいはて』(越川道夫監督)の撮影も、「大変でしたー」といつものスロー・トーンで素直に振り返る。
「映画やったなって気がします。映画作ったな、と」と中島が語る本作は、夜の飲み屋で知り合ったモモ(北澤 響)という若い女性と、塾の国語教師・トウドウ(中島)が、今いる世界から逃げ出そうと、船に乗って海を目指す物語。2人は一体どこへ向かうのか? 哀愁漂うどこかほつれたロード・ムーヴィーと2人の恋愛模様が映画としての輪郭を引き立たせ、観ている時間はまさに映画の世界に逃避行できる、そんな作品となっていた。小説の一編のようなセリフ(実際、フラナリー・オコナー『賢い血』など幾つかの小説が引用されている)と独特な言い回しに中島は苦労したようだが、生きる気力を無くしたトウドウという男性のくたびれ加減を中島は自然と体現しており、彼がインタヴュー中に何度も「疲れました」と言っていたのは役をまっとうした証ではないのだろうか、そんなことを思いながら話を聞いた。