戦争前夜の上海を舞台にしたロウ・イエ監督作。コン・リーと共演したオダギリ ジョーが感じ取ったもの
1941年、日本が真珠湾攻撃をする7日前の上海が、映画『サタデー・フィクション』の舞台。
当時の上海は日中欧の諜報部員が暗躍し、機密情報が行き交うスパイ合戦が繰り広げられていた。スパイには軍人もホテル支配人も、女優もいる。『蘭心大劇場』で公演される新作演劇のため、上海に人気女優のユー・ジン(コン・リー)が現れた。彼女は舞台稽古に参加しながら諜報活動をはじめ、日本軍人から暗号を聞き出す任務を受ける。資料として渡された写真には、日本海軍少佐の古谷三郎(オダギリ ジョー)と若い頃のユー・ジンに似た妻が写っていた。その妻は、以前スパイ活動中に殺害した女性だった。
本作を監督したロウ・イエは、中国の検閲と戦いながら『天安門、恋人たち』など作りたい作品を貫いてきた人だ。監督の両親は今回の撮影場所でもある『蘭心大劇場』でかつて裏方として実際に働いており、幼少期の監督は劇場と楽屋、虚と実を行ったり来たりする世界を覗き見てきた。その時の奇妙な感覚を、戦争前夜のスパイを扱った原案小説を読んだ際に味わったという。
オダギリはそんなロウ・イエ監督から「最初から決めていたのはオダギリさんで、彼がこの作品を左右すると言っても過言ではないです」と評されている。演じた古谷は、悲しみを背負いながら任務のため上海にやってくる。オダギリは突然妻を失った遺恨だけではなく、男の弱さや危うさ、様々な側面を役柄に宿させているように見えたが、すべては現場で、大先輩でもあるコン・リーとのセッションの中で育まれたと話していた。成り立ちも完成も、奇跡のような作品について話を聞いた。