バァフ 岩澤さんはフィルムカメラから写真を始められたんですよね。

岩澤 モノクロが好きで、〈RICOH〉の『GR』や『サムライ』〈京セラ〉を使っていました。

AAAMYYY 私も『サムライ』使ってる！

岩澤 大学生の頃に使い始めたんだけど、『サムライ』は当時中古だと500円くらいで買えたんだよね。所属していた写真美術部でカメラにシールを貼ったり絵を描くのが流行っていて、僕も自分でデコレーションしたカメラを10台くらい持っていました。ハーフカメラだから72枚も撮れるし縦に構えて撮影するのも新鮮で。僕は、写真を撮るのはもちろんカメラ自体も大好きなので、合計100台くらいは色々試してきたと思います。

AAAMYYY 会う度に「またカメラ買っちゃったんだ〜」とか言っていたよね。

岩澤 デビューしたてで最初に『バァフアウト！』に営業させてもらった時も、「新しいカメラを買ったので何か撮らせてください」みたいな（笑）。モノクロ写真って、白・黒のカラーコピーのイメージが強かったんですが、写真美術部で（現像をした時に）グレーの中間色の綺麗さにびっくりしちゃって。モノクロは2色じゃないんだと感動したところからハマり出して、1日10本くらいは撮っていました。

飯川 デジタルカメラが主流になってきて、デジタルの良さも当然ありますが、フィルムカメラのどんなところに魅力を感じますか？

岩澤 温かみがありますよね。撮影した写真を友達にプレゼントするんですけど、フィルムだとよりスペシャル感があって、受け取ってくれるみんなの喜び方も違う印象です。AAAMYYYちゃんとは5年くらいの付き合いになりますが、仕事でライヴに密着させてもらう時も、僕としては仲の良いメンバーたちを撮るプライヴェートな感覚なので、楽屋やステージ裏の楽しい空気感を残すならやっぱりフィルムで撮りたくて。

AAAMYYY 一緒に遊んだ時や、お家にきて撮ってもらうこともあるよね。妊娠して臨月に入った頃、それから子供のお宮参りの時も撮ってもらいましたが、額縁に入れて飾るほどの素敵さで。とても特別な写真になりました。

バァフ AAAMYYYさんは日常的にフィルムカメラを使われていますか？

AAAMYYY 常に携帯しています。スマホでも撮りますが、今は『μ（ミュー）』〈オリンパス〉を2個持ちしていて、1個はフラッシュが壊れてしまったので太陽光の下で撮る時用に。自分の子供もそうですが、人を撮るのが好きなので、たくさん撮ってはみんなにあげています。

岩澤 ネガがクラッシュすることもそんなにないから物として残るのもいいよね。あと、スマホだとなぜか撮りすぎちゃう。

AAAMYYY 分かる。手軽に撮れて便利なんだけど、有り難みが薄まっちゃうよね。

鈴木 ほとんどの人がスマホを持っていますし、気軽に撮れる便利さがある前提で、さらにもう1台フィルムカメラを持ちたいなと思ってもらえると我々も嬉しくて。でも、AAAMYYYさんの『μ』のように、一度壊れてしまうと修理できないのが現状なんですよね。かなり古いカメラであれば、メカニカル時計と同じ機械なので頑張ったら直せる。だけど、ある程度進んで自動化されると電子基板とかが入ってくるんですよ。それをやられてしまうとね、もう直らない。なのでフラッシュがダメになったら、別の個体を探して入れ替えたりしない限り直らないし、残っている個体も少ないからどんどん減ってきてしまう。

岩澤 シンセサイザーに近いかもね。

AAAMYYY 近いと思う。私はTempalayでシンセサイザーを担当しているんですけど、YMOさんなどが使っていた80年代の機材とかになると、修理できる人がほとんどいないんですね。数少ない職人さんに何とかメンテナンスをしてもらって使っているものの、修理をする方がお金がかかってしまうから、私の周りの方たちも段々と手放してしまって。

鈴木 レコードにしてもそうですよね。かつては日本のメーカーさんがたくさんあったのに時代と共になくなって。だけど、クラブでアナログ盤が使われたり、アーティストが新譜でドーナツ盤を出すようになったことで、またレコードが戻ってきた。若いユーザーさんがカルチャーを復活させちゃったんですよね。今、フィルムカメラにも同じようなことが起きていて、押し上げるパワーの力強さを実感しています。

飯川 せっかくなので今日は、お二人にも検討段階の試作機を触っていただいてご意見を伺いたいです。若いユーザーさんや販売店さんなど色々な方にご意見を聞いて、プロジェクト内でも悩んで入れた機構とかもたくさんあるんです。初めて使う人でも失敗しないように、だけど、自分でいじる楽しさも感じていただきたかったので、オートとマニュアルを組み合わせています。

AAAMYYY ダイヤルのガイドが分かりやすいですね。巻きの感じが気持ち良いし、シャッター音も可愛いです。

鈴木 まさにそこを楽しんでほしくて。当時の〈PENTAX〉の一眼レフの図面から起こした手巻き機構でそこだけメカなんですよ。自動化した方が作るのは簡単ですが、巻く時のカチカチする感覚は昔のままにしたいなと思って。現時点ではまだ詳細にご説明できませんが、他にも色々と楽しめるように細部までこだわっています。先日、出張で台湾やヨーロッパに行った際に、初めて検討段階の試作機で試し撮りをしてみまして。街の風景やおじさんたちのセルフィーなど、想像以上に綺麗に写っていて感動でした。

岩澤 （写真を見て）フィルムのエッジが出ていますよね。このカメラの技法や良さを生かした作品が増えるんじゃないかな。

AAAMYYY 素敵な写真が撮れそう。私の友達がちょうど半年前くらいにアメリカに遊びに行っていて、フィルムで撮った写真を見せてもらったらすごく素敵だったんですよね。ふと目に入った風景や、気持ち良いなと感じた光を撮ったり……このカメラはすごく軽いし薄いので、私も海外旅行に持っていって色々な写真を撮りたいです。手巻きのフィルムカメラにハマったけど本体が重たくて続かなかった子がいたので、このカメラが発売されたらオススメしたいです。

バァフ 岩澤さんだったら、どういう風に使ってみたいですか？

岩澤 まず実験しちゃうかな。裏蓋を開けてわざと感光させてみたり、前ボケの感じがどれくらいなのか写真の技法を試したいです。今いくつか作品を作っているので、それらのコンセプトともハマりそうだなと触りながら考えていました。

飯川 写真家さんと撮られる側の人たち、それから我々カメラを作る人間、フィルムを作っている人の想いが繋がって　　今、SNSを見るとそれが1つの作品として形になっているんですよね。「何のカメラで撮ったの？」みたいな声だったり、たくさんの人たちの興味がどんどん広がっている。このカメラがその架け橋になってくれたら、本当に嬉しい限りです。

PHOTOGRAPHS BY AAAMYYY＆TAKAO IWASAWA

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①「AAAMYYYちゃんにプレゼントしたマタニティ・フォト。たしか、一緒にラーメンを食べて、光が綺麗になったタイミングで屋上で撮影しました（岩澤）」

②「ライヴ・リハーサル中の1枚。いつでもどこでも、飾らない姿を撮らせてくれます（岩澤）」

③「伊豆の洞窟クルーズにて。真ん中だけ陽が差して岩肌や海の深い青色が神秘的に撮れました（AAAMYYY）」

（AAAMYYY）ボレロ（79,200yen）、ロンT（20,900yen）、サロペット（61,600yen） /以上、フミエタナカ（ドール　tel.03-4361-8240）　※すべて税込