2025年7月9日に〈EX THEATER ROPPONGI〉にて開催された、山内総一郎ファーストライブ『The Hole In The Wall』をレポート。
今年2月、活動休止に突入したフジファブリック。それから約5ヶ月後、フロントマンである山内総一郎(V&G)のソロ・ライヴが開催された。それは彼が生み出す音楽、山内総一郎というアーティストに惹かれる理由が分かる、答え合わせのような時間だったと思う。
活動休止後初のステージとなったこの日。開演前の場内はどことなく緊張感が漂っていたように思うが、1曲目の「あやかし音頭」から、それを吹き飛ばしてしまうほど力強い音像が会場を支配していった。変幻自在に転調していくサウンドに、エモーショナルなギターの音。1曲の中に山内の豊饒な音楽性が凝縮されており、今やりたいこと、伝えたい想いがすべて音楽に昇華されているのだと実感した。〈ときめきをくれ 何度も〉と熱唱するその姿は、ここから新たな一歩を踏み出していく上での決意表明であり、音楽を愛し、どうしたって音楽から離れることのできない、不器用で真っ直ぐな人間の魂の叫び。以降の曲も、山内らしい一筋縄ではいかないひねりの要素が満載。それはバンドの曲の中で幾つも出会ってきたはずだが、どれも新鮮で、あくまで山内総一郎の音楽として鳴らしていることを実感した。
MCではライヴを開催できた喜びを露わにしていた山内だったが、今日という日が本当にやってくるのか不安だったことを告白。活動休止以降、この先どうやって生きていこうか悩んだが、悩んでも答えは見つからなかった。だが、光が見えない日々の中、何気なくギターを爪弾いてみると、ここから自分は始まったことに気付かされたのだという。光の先へ、音楽でみんなを引き連れて行きたい。その想いから生まれた「海に来てしまった」という曲は、特に山内総一郎らしさが溢れていたように思う。自身の葛藤も、言葉と音楽を通じて飾ることなくすべてをさらけ出す。そんな風に、アーティストとしても人としても、どこまでも真っ直ぐで在り続けるその姿勢は、こちらの気持ちをも鼓舞させてくれる。そして、音楽とは救いであり、言葉にならない想いを引き受けてくれるものなのだと改めて気付かされる。彼の決意や想いを観客が受け止めた証として、この日は1曲終わるごとに拍手が長い間鳴り響いていた。
全部で16曲が披露されたが、そのうち新曲が8曲、セルフ・カヴァーが3曲だった。「新曲ばかりなのに、みなさんが優しく受け止めてくれた」と山内は語っていたが、他の誰でもなく山内だからこそ、あの温かい空気で会場が満たされていたのだと思う。心の中にポツリと空いた穴から見える光や景色を、みんなと一緒に確かめたい その想いから今回の公演タイトル『The Hole In The Wall』が付けられたという。公式SNSやソロ・プロジェクト『A-UN』の始動など、新たな告知も満載だったこの日。彼の音楽を愛する人々全員で手を取り合って、光の先へ確かな一歩を踏み出す。それを実現した特別な一夜だった。
山内総一郎ファーストライブ『The Hole In The Wall』
7月9日〈EX THEATER ROPPONGI〉にて上演終了
INFORMATION OF SOUICHIRO YAMAUCHI
山内総一郎バースデイライブ『OCTOBER SONGS』が10月25日〈昭和女子大学 人見記念講堂〉にて開催。
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