FEB. 15 2025, 11:00AM
音楽プロデューサー、アーティスト、トークボックス・プレイヤー、DJなど、複数の顔を持つJUVENILEが、国内外のアーティストとフィーチャリングしたアルバム『INTERWEAVE』シリーズを経て、よりグローバルに視線を向けた『JUVENILE Global Project』を発足。第1弾の相手として白羽の矢が立ったのは、韓国のヒップホップ・ボーイズ・グループの82MAJORでメイン・ヴォーカルを務める、KIM DO GYUN(キム・ドギュン)だ。デジタル・シングルとしてリリース済みのバラード曲『Letter』は、J-POPベースのR&Bを主軸にしながらも、韓国語のラップ、JUVENILEならではの音楽的エッセンスなどが融合し、新しさとどことなく懐かしさも感じさせる。
作詞の参加だけでなく、18歳にしてこの曲を歌い上げたDO GYUNの歌唱力、表現力にも驚いた。恋人が手紙を残して消え去ってしまった主人公の悲哀や、在りし日の喜びを、大胆に、伸びやかに、切実に歌うのだ。
2つの才能が掛け合わされた『Letter』、完成までの道のりはどのようなものだったのか。JUVENILEと、この日初めて彼を「兄貴」と呼んだというDO GYUNに話を訊いた。
バァフ 先日開催された82MAJOR初の単独日本公演『82MAJOR BOOM in JAPAN』にお邪魔したのですが、とても素晴らしかったです。ほとんど装置がないシンプルなステージ、しかもホールという限られた空間なのに、サイズ以上の迫力と熱量がダイナミックに伝わってきて。DO GYUNさんは最年少メンバーですが堂々としてらっしゃる印象で、さりげなくMCのサポートをするなど余裕も見えました。
DO GYUN (日本語で)ありがとうございます。まいど、頑張ります!
JUVENILE (笑)僕は残念ながら仕事が入ってしまい今回は行けなかったんですが、過去に観た韓国の単独公演と日本のショーケースを思い出す限りでも、回を追うごとにどんどん良くなっている印象でした。といっても、彼らのトータルのライヴ数自体が、まだ数えるぐらいだからすごいことですよね。
バァフ JUVENILEさんは元々82MAJORの楽曲を聴かれていたそうですが、どんなところがアンテナに引っかかったのでしょうか? DO GYUNさんの魅力、どんな可能性を感じたのかも伺いたいです。
JUVENILE 82MAJORに関わらず韓国のアーティストは、ソロ・アーティストから、アイドル・グループ、ダンス&ヴォーカル・グループまで幅広く聴いていました。趣味もありますし、半分は仕事でもあり。楽曲提供のオファーをいただく際、リファレンスとなる参考曲として韓国アーティストの曲を提示されることが多いんですよね。その中の1つとして、82MAJORは際立った音楽だったのですごく耳に残りました。“ザ・K-POP”じゃない音楽、というんですかね。僕は普段、今までの流れとこれからくる流れを予想しながら曲作りをするんですけど、「ザ・K-POPってこうだよね」と、ある程度カテゴライズする上でも、良い意味で違うところにいる音楽だったんです。90’sのヒップホップの感じとか、ブレイクビーツの感じだったり。王道じゃないところにいて、かつ高いレヴェルで昇華しているなと。
DO GYUNくんに関しては 先ほどお話したように韓国と日本のライヴを拝見した中で、彼は一番パフォーマンスの差がなかったんです。特に初めて日本でライヴをするとなったら、当然硬さや緊張感が多少は出てくるじゃないですか。どうすれば日本のファンを盛り上げられるか?など色々と考えただろうけど、一番自然体に見えましたし、ホームである韓国の時も同じような印象だったので、彼はすごいなとマネージャーたちと話していて。(フィーチャリングをする上で)いろんな選択肢がありましたが、メンバーの1人と1曲やってみるのが良いんじゃないかという流れになった時に、だったら彼と一緒にやってみるのはどうかなと提案させてもらいました。
バァフ JUVENILEさんの言葉を受けて、DO GYUNさんはいかがですか?
DO GYUN 実は6人の中で一番緊張していたので、肝が据わっているわけではないんです。でも、自分が緊張しいだと自覚できたことで、それを乗り越えるために、「上手く見せようとは思わず、ただ自分の中にあるすべてを出そう」と意識をコントロールしていました。多分、そういうところを見ていただけたんじゃないかと思います。
バァフ JUVENILEさんがDO GYUNさんの魅力を話されている時も、冷静に受け止めていますよね。意識のコントロールもそうですが、普段からご自身を分析されるタイプなのかなと思ったんですけど。
DO GYUN そのように言ってくださりありがとうございます。僕は小さい頃から総合格闘技などの運動をしていたのですが、『YouTube』を観て独学で練習をしたり、自分を冷静に見つめて分析することを繰り返してきたので、それがアイドル活動にも影響されているのかもしれません。周りのスタッフの方からは、性格的な面でも落ち着いているとよく言われます。ただ、ステージでパフォーマンスをする時は、ファンのみなさんの反応に応えたくなるので、自分の気持ちにも大きく影響は受けますね。
今回のプロジェクトも僕1人だけなので最初は心配でしたし、怖さや不安がありました。でもいざやってみたら、JUVENILE兄貴が僕をリラックスさせて楽しめるようにしてくださったので、挑戦して良かったです。82MAJORはヒップホップ・ベースでのグループ活動がメインなのですが、今回のようにJ-POPベースのR&Bバラード曲を歌えたことも新鮮でした。素晴らしい曲に関わることができてすごく幸せです。
バァフ 『JUVENILE Global Project』の第1弾として、JUVENILEさんのアーティスト性、音楽性を海外に発信するという意味でも、例えばトークボックスなどを用いた楽曲がくるのかと思いきや、「Letter」は美しく切ないバラードに仕上がっています。楽曲やテーマといった土台の部分はどのように決めたのでしょう。
JUVENILE 基本的に僕は、相手のアーティストがどういう曲を作りたいのかをまず尋ねます。「JUVENILEさんの曲なのに良いんですか?」と言われることもありますが、僕が手掛けることで僕のフィルターは必ず通って色は出るから、どっちの方向に行くか?といった意思は聞くようにしていて。DO GYUNくんとは、普段聴いている曲について話す機会があったんですね。そうしたら、韓国のR&Bだったり、今回作ったような雰囲気の曲を好んで聴くとのことだったので、少なくとも直近の82MAJORのシングルで表題を張るタイプの曲ではないし、ソロで歌ってもらうのが良いんじゃないかなと思って。直接会って話すのは「こういうバラードが良いよね」ぐらいだったんですよ。その後リモートで曲の方向性を再確認できたので、僕がトラックを作り、彼が作詞をしてくれるとなったので、作詞ができる状態のデータを渡して。歌詞は韓国語で書いてもらったものを、一度スタッフさんに訳してもらいました。でもその段階だと、韓国語としては完成されたリリックなんだけども、単純に日本語訳にした文章になっていて。そこから僕が、なるべく意味が変わらないように、かつ少し僕の伝えたいことも加えてメロディに合わせた日本語詞にしていきました。
DO GYUNくんには、こういうストーリーだからこういう歌詞を書いて、とは言っていないんです。「冬のバラード」というテーマしかなくて、どういう登場人物でどう展開するかも任せました。それで返ってきた歌が、完成した曲の歌詞とほぼ同じようなもので。ある1人の男がいて、彼は好きだった女の子に振られてしまい、しかも「さよなら」もまともに言わずに手紙だけを残していっちゃった、みたいな。僕は今、心が寒いです、といったストーリー。最初のタイトルは「白い雪」でしたが、この曲は「手紙」の方が物語的にも強いんじゃないかなと思ったので、タイトルにさせてもらいました。この歌もまた、もう届かない相手に出した手紙なんだと。
バァフ DO GYUNさんは音源をもらった際、情景などがすぐに浮かんできましたか?
DO GYUN 最初はすぐに思い付かなかったんですけど、ビートを聴いてからは、先ほどJUVENILE兄貴が仰ったドラマのようなストーリーが一気に浮かんできました。
バァフ Aメロの歌詞を見ると、男女共に素直な気持ちを言葉にできないんだけど、曲が進むにつれて、〈僕は、寂しい。〉、〈このまま ワガママ聞いてくれない?〉、〈凍り付く胸 指先まで暖めてほしいよ〉、それから韓国語のラップ詞と、主人公の願望がストレートに出てきますよね。そこには後悔や、やりきれない想いも溢れている。曲の力があったとは言え、DO GYUNさんはどんな心境で書いたのだろうと考えてしまいました。
JUVENILE そんな体験をしたのかと(笑)。
DO GYUN 実体験ではないです(笑)。歌詞を書くことを任せていただいたので、たくさん勉強をしました。僕は普段ドラマを観ないのですが、恋愛のストーリーが分かるようなドラマだったり、『YouTube』などから資料を探しました。ただ、参考にはなったけれど、それでも書けなかったので、自分が同じ状況になった時を考えることにしました。それから、ラップの部分はメンバーのHWANG SEONG BIN(ファン・ソンビン)さんにも手伝ってもらっています。「ラップは日本語じゃなくて、韓国語でも英語でも良いよ」とJUVENILE兄貴が言ってくれたので、じゃあ韓国語で書いてみようかとなった時に、普段から、愛や悲しい別れの物語を書いているSEONG BINさんに相談しようと思い、一番に声をかけました。でも2人とも経験値がほとんど変わらなかったので(笑)、結局たくさんの資料を一緒に探していましたね。
バァフ ドラマはご覧にならないとのことですが、今回の「Letter」や82MAJORのMVを観ても、俳優としての表現力もお持ちのように感じます。レッスンは受けていたのですか?
DO GYUN 実はMV以外での演技経験はまったくなくて、レッスンを受けたこともないです。
JUVENILE やってみたらできちゃったパターンなんですね。
バァフ 日本でも俳優とアーティストの二足のわらじを履いている方は多くいらっしゃいますが、そういう方々って、どちらかだけを生業にしてきた方たちとは違う表現力を持っていると個人的には思うんですよね。
JUVENILE 歌が上手い、演技が上手いというのは2種類あると思っていて。1つは喉の使い方やどのように身体を動かしたら演技や歌が上手く感じられるのか、そういった技術の問題。もう1つは、技術云々ではなくて、どうすれば人の心に届くのかを考える力を持っていること。それって、頭を使って生きているかどうかだと思うんですよ。いろんな人の気持ちを考えて、自分だったらどうだろう、この時この人はどういうことを考えていたんだろうとか。DO GYUNくんにもそれは言えることで。
DO GYUN すごく嬉しい話をしていただき、ありがとうございます。実は僕も意識的にそういう努力をおこなっているので、今の話を聞いて驚きました。兄貴はなぜ僕の心の中にいるかのように分かるのでしょう……(日本語で)さすが!
バァフ 兄貴はお見通しでしたね。『82MAJOR BOOM in JAPAN』では、「Letter」も披露されましたが、回を重ねるごとに楽曲が身に染みついてきている感覚はありますか?
DO GYUN 何回も歌うことによって自分の中で解釈が深まっている自覚はありますが、馴染んできた感覚はまだないです。というのも僕は、この曲はとても難易度が高いと感じていて。毎回歌うたびに非常に神経を使います。
JUVENILE それで言うと、僕からも1つ質問が。レコーディングの時にキーをどうするかという話になり、僕が設定したキーは結構高かったので、「レコーディングではブロックごとに歌えるけど、ライヴのことを考えたら下げた方が良いんじゃないか」って意見が出たんですよ。僕も賛成だったし、ライヴも含め、すべてが良い形になる方がベストなので、キーを1つ下げることに関しても抵抗はまったくないと。だけど彼は元の高いキーでいきたい、大丈夫ですと言ってくれて。結局は最初に設定したキーのままだったんですけど、僕はライヴに行けなかったから結果どうだったんだろうと。
DO GYUN 正直に言うと、自分の人生の中でもナンバー5に入るくらい難しい曲でした。キーの問題だけじゃなく、ビートだったり、曲のいろんなディテールの部分も難しくて。ライヴで歌うのも心配でしたが、ファンのみなさんの反応が良かったので、これからずっと歌い続ければさらに大丈夫になっていくんじゃないかなと思っています。
JUVENILE キーを下げて安全な方を取るか、もしくは楽曲的には良いけど歌うのが大変な方を取るかとなった時に、大変な方を選ぶ彼はすごいなと思います。しかも、今なお挑戦し続けている。
バァフ ライヴでは、大切に大切に歌われている姿がとても素敵でした。悲しい曲だけど、不思議と喜びや幸せを感じたんですよね。
DO GYUN ライヴで聴いてくれる方に、大事にしているんだというのを分かってもらいたい、悲しい歌だけど幸せになってほしいという気持ちで歌っていたので、感じ取ってくださって嬉しいです。
バァフ 美しくて切ないバラードなんだけど、ブリッジのテープを巻き戻すような音や、その後のテクスチャーの変化など、楽曲展開も面白いですよね。
JUVENILE それが今のトレンドなんじゃないかなと思いますね。この曲のベース自体は、2000年代のR&Bの感じなんです。90’sのヒップホップはああいうビートでラップをしていて、2000年代に入ると、バラードを歌いながらもビートだけはヒップホップのまま、という形に変化した。やっぱり、EDMとK-POPの2つ存在がすごく大きいでしょうね。「Letter」のBメロのように、1回落としてもう1回サビに向かって上がるのは、EDMが出てきて以降どの曲も大体そうなっているのと、K-POPは特に、曲調が変わってまた戻る流れが多い。それから、曲も3分台と短めですよね。お約束のイントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、Aメロ、Bメロ、サビ、落ちサビ、アウトとかってやると5分ぐらいになるところを、「Letter」はBメロの後のブリッジにいきなりああいう音が入って、サビですっと終わるじゃないですか。最近のトレンドを2025年のリリースに合わせ、技術的に詰め込めたかなと思います。
DO GYUN テープが巻き戻るような音は、僕もすごく好きです。元々はもう少しシンプルだったのが変更になったのですが、聴くほどに「以前のはどういうものだったっけ?」と思うくらい魅力を感じました。
JUVENILE ブリッジの部分はMVも良いんですよ。僕はいつもMVの監督と細かく打ち合わせはせずに、曲を聴いて思ったことを映像にしてもらえたら良いと考えているんですけど、 上がってきた映像や、撮影中の映像を見た時に伝わっているなと思いましたね。「そういうこと! 白黒、そうです!」みたいな(笑)。説明をしなくても感じ取ってもらえたのは良かったし、成功したなと思いました。
バァフ 浮遊感のある音が入ることによって、 主人公は夢を見ていたんじゃないかとさえイメージしましたが、MVを観たらそこがモノクロで表現されていたので、まさにピッタリでした。
JUVENILE 一瞬のエゴなんですよね。あそこだけ(主人公は)格好付けたいのかなと思うし、全体的に悲しいけどハッピーだと感じられるのは、彼が強がっている部分も見えるからで。ただ、あそこ(ブリッジ)だけめちゃくちゃ自分のダーク・サイドというか、「本当は泣きてぇよ、俺も」みたいな気持ちがある。MVに映っているDO GYUNくんの表情もそうだし、そういうアクショニングにしてくれたのも良かったなと思います。ただDO GYUNくんは、相手役の女の子にタジタジでした(笑)。
(スタッフ) おでこをくっつけ合うシーンがあったのですが、撮影後に(DO GYUNは)何が起きたんだという表情をしていました。実は監督の演出で、彼には何をするか伝えず、女優さんとだけ打ち合わせをしていたんです。彼の素のリアクションを撮りたかったのではないかと。
JUVENILE 曲の世界観と同じく、女の子がずっと先攻していく感じでしたよね。彼女が一枚も二枚も上手で、気付いたら終わっている、みたいな。
バァフ そんな撮影背景もあったのですね。最後に、〈思い出をこの詩にのせて歌うよ〉のフレーズにちなみまして、お2人にとって特別な記憶を思い出させてくれる楽曲があれば教えてください。
JUVENILE 僕は元々クラシックピアノをずっとやっていて、それからシンセサイザーに興味を持ったのですが、そのきっかけがYMOなんです。音を打ち込む小さな機材を持っていたので、YMOの曲をひたすら耳コピして、1日何時間も打ち込んでいました。小学校5、6年生くらいから中学1年生の頃までやっていたのかな。今でも原曲を聴くと当時を思い出しますし、機材があれば全部のパートをすぐに再現できるぐらい覚えています。
DO GYUN 僕は、EXOの「Growl(韓国表記ではウルロン)」です。格闘技をやっていたので力強い男性に憧れていたのですが、偶然「ウルロン」のMVを観た時に、強さだけではない男性のカッコ良さを初めて感じて。自分も彼らのようなアイドルになりたいと思いました。とても強烈な記憶なので、曲を聴くと決心をした当時の自分を思い出します。自分のロール・モデルは、EXOメンバーのBAEKHYUN(ベクヒョン)さんなのですが、僕もいつか誰かのロール・モデルになることが夢です。
『Letter feat. KIM DO GYUN(82MAJOR)』
配信中
〈HPI Records〉
INFORMATION OF JUVENILE
音楽プロデューサー、アーティスト、トークボックス・プレイヤー、DJなど、幅広い分野にてマルチに活躍中。最新作に、歌唱・作詞・作曲・編曲を担当した「IMMORTAL」(TVアニメ『望まぬ不死の冒険者』OPテーマ)などがある。『P’s LIVE! 08 ~P’s GR∞VE~』の3月8日公演(DAY1)への出演を控える。
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INFORMATION OF KIM DO GYUN
2023年10月に82MAJORのメイン・ヴォーカルとしてデビュー。90年代のヒップホップを今風に表現するカッコ良くもパワフルなグループの音楽性は、ヨーロッパや北米を中心にグローバルで注目されている。また、その高いパフォーマンス力から「公演型アイドル」としての評価も確立している。2月9日に『<X-82> ASIA FANMEETING IN BANGKOK』を終え、2月16日に『<X-82> ASIA FANMEETING IN KUALA LUMPUR』を開催予定。新曲リリースに向けて絶賛準備中。
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