CULTURE

次世代ポップ・ミュージックを創出するBillyrrom。新進気鋭の若手バンドの全容に迫る

NOV. 16 2024, 11:53AM

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文 / 白土華乃子

東京都町田市出身の6人組バンド、Billyrrom。活動開始から程なくして、心地の良い洗練されたサウンドとアレンジ・スキルで、瞬く間に話題に。ワンマン・ライヴはソールド・アウトが常で、『FUJI ROCK FESTIVAL』などの大型フェスへひっきりなしに出演していることも注目を集めている。

 

9月25日にリリースした『WiND』はバンドとして初のアルバム。音楽はもちろんのこと、カルチャー全般に感度の高い若者たちが創る楽曲は、非常に緻密だ。ソウルやファンク、ロックなど幅広いルーツを持つ彼らだからこそ、各々の個性が1曲1曲に厚みを与え、全体を通して重厚感のある1枚に仕上がっているのだと思う。5周年を目前にした現在、「やっと自分たちのやりたいことが形として表せられるようになった」と話す彼らの表情は晴れやかだった。

 

今回はアルバム『WiND』を軸に、Billyrromとしての音楽の原点、そしてバンドのこれからに迫っていく。

ガムシャラに頑張っていきたい(Shunsuke)

バァフ 皆さんは元々、地元で繋がりがあったんですよね。どのような出会いだったのでしょうか?

Rin(G) 僕が元々、大学に入学するくらいのタイミングでバンドをやってみたいなと思っていたんです。僕とShunsuke(D)とTaisei(watabiki)(B)は中学校が一緒で、ShunsukeとTaiseiとMol(V)は高校が一緒。僕とMolは大学が一緒という繋がりがあります。大学に入学したタイミングでちょうどコロナ禍になって授業もオンラインになり、バンド結成のために色々と動いていたのに上手くいかなくて……。それで、Molに「バンドやろう」と誘って、最初は僕とMolとTaiseiとShunsukeの4人で結成しました。2020年の9月でしたね。

バァフ そこから今の6人体制はどのような経緯で?

Rin アー写がほしくて、撮ってくれる人を探していたんです。その時に、Yuta(DJ/MPC)が当時は写真を撮っていて。

Yuta Hara 元々、Taiseiから「高校の頃に仲良かった友達がバンドをやっている」と聞いていて。で、その1週間後ぐらいにTaiseiから「アー写、撮ってくれない?」と連絡がきたんです。同い年だしやってみたいなと思って。同時に音源も送られてきたんですけど、超カッコ良かったんですよ。それで、最初にメンバーと会ったのが21年の1月くらい……割と寒い時期に会いました。そこから意気投合してライヴの写真を撮ったり、最初のMVを撮ったりして。その流れでVJもやっていて、ライヴで投影する映像も流していたんですけど、ある時からそのままメンバーに加入しまして。その当時、音楽性的にも鍵盤がほしいよねとバンド内で話していた時に、僕の小中の幼馴染のLeno(Key / Syn)と4人のライヴを観に行ったんです。

Leno Yutaづてに、Billyrromの存在は知っていました。キーボードを探していると聞いた時は、「これは入るしかないでしょ」と。実はオファーを待っていたんです。初めて4人のライヴを観て、後日一緒にスタジオに入った時、お互い言葉にせずとも勝手に加入していましたね。素直に嬉しかったです。

バァフ 6人になり、バンドとしての音楽の方向性はどのように擦り合わせていったのでしょうか?

Taiseiwatabiki そもそもRinとMolが「バンドを始めたい」と言っていた時、その時点でデモが2、3曲あったんです。それが最初のEP『Frontier』に収録されている「Babel」と「Magnet」だったかな。でも当時、2人でブラック・ミュージック系のものをやろうという話し合いは、そんなにしてなかったよね?

Mol してないね。「曲作りに関しては右も左も分からないけど、とりあえず良い感じじゃん」と思える曲を作るというのが今でも続いている感じです。ジャンルに捉われず、カッコ良いと思う音楽をやりたいという想いで、最初から進んでいるように思いますね。

バァフ リリースのスピードはかなり速いですよね。このタイミングで初のアルバムを制作しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

Taiseiwatabiki それこそ、去年から「アルバムを出したいね」という話はしていました。シングルを10枚以上作り、昨年はEP『noidleap』も出して――何曲か入った作品を出した上で、今なら自分たちが作りたかったアルバムが満を持してできるんじゃないかなと思って。「絶対に今、アルバムを作ろう」という感じではなかったんですけど、今までの過程が自信になり、自然な流れで制作することになりましたね。

バァフ 収録曲のジャンルも多様ですよね。それこそ、5月号の誌面で皆さんの紹介記事を書いた時、ちょうどシングル『DUNE』がリリースされるタイミングだったんですよ。今までにないオーヴァー・スケールのロックな曲で、すごく新鮮に感じたのを覚えています。今作はジャンルの幅の広がりを意識して制作されたのでしょうか?

Rin そうですね。「DUNE」に関して言うと、以前からスタジアム・ロックのような曲を作りたいという気持ちはありました。でも、作ろうと言っても、ロックって幅広いものだから方向性を合わせるのが大変で。2年ほどみんなでいろんな景色を見ながらやっと方向性を合わせて、スケールのあるロックを作れるようになりましたね。で、「DUNE」を表題曲にしてシングルをリリースした時くらいから、それぞれどういう風に個を出したらいいのかというのを掴んできて、制作に関しても変わった部分があって。1個のデモに対して自分の色をより濃く入れていくという作業をすればするほど、ジャンルの幅も広がっていくというか……。多彩な音楽性のアルバムを作ろうと話したわけでもなく自然と広がっていきましたし、でもその中にはちゃんとBillyrromの芯の部分もあるから、それが上手くアルバムとしてパッケージできたのは嬉しいですね。

バァフ 今回のアルバムだと、個人的に「SERENADE for Brahma」と「Sun shower」が好きで。

Mol 嬉しい! 渋いっすね(笑)。俺らが1番好きな2曲ですよ。

バァフ 本当ですか(笑)。世界観に魅入ってしまうような、没入感のある楽曲だなと。

Rin この2曲だけスタジオで、楽器隊は一斉にRECしたんです。自分たちの音が同じ空間で鳴っているというのを意識したというか。一体感がサウンド面に反映できているのかなと思います。

Mol ちなみに「SERENADE for Brahma」は4ピース時代に、4、5曲目とかでRinが作ってきた曲なんです。本当はずっと昔からあって、ライヴでは演奏していたんですけど。でも、当時はアレンジも今とは全然違って、ライヴでやっていく中で今のような形になっていきました。

バァフ このタイミングで収録しようと思った心境の変化は何かあったんですか?

Mol この曲を好きと言ってくれる人が多くて。でもライヴでしか聴けないから、幻の曲みたいな存在になっていたんですよね。で、「アルバムを出すなら今でしょ」となって(笑)。

Rin 曲の長さは絶対に妥協したくなかったです。シングルとして出すために短くしたりとか、そんなことは絶対にしたくないなと。となったら、やっぱりこのアルバムに収めることが良いなと思ったんですよね。

バァフ 歌詞に関していうと、〈テロリズム〉など結構強めのワードが入っていますよね。Rinさんが作詞を担当されている曲ですが、どういうところから着想を得たのでしょうか?

Rin ちょうど、コロナの時期に書いた歌詞なんです。結成して1年目ですね。家に篭っていた時に書いた詞なので、当時僕が思っていたことが詰まっていて。今読んでも「そうだったなぁ」と思いますね。作ってからこれだけ期間が空いて出した曲はないし、しかも歌詞に関しては1文字も変えていません。だからその時の記憶だったり、その当時のことがそのまま冷凍保存されている感覚です。

バァフ 変えたいとは少しも思わなかったのでしょうか?

Rin 変えようとは思わなかったですね。正直、歌詞って今の自分だけを書くものではないと思っていて。それこそタイトルの「WiND」は、新しい方に歩み出していくという意味の「Walk in New Directions」という言葉から引っ張ってきています。今まで歩んできた部分がないと新しいものも生まれないですし、現在地までの過程をそのまま書きたいという気持ちはすごくありました。だから、僕個人としては変えたくなかったですね。

バァフ これまでの悩みや歩みの部分も、感じ取ることのできるアルバムになっているのですね。「Once Upon a Night」と「CALL, CALL」は「SERENADE for Brahma」と「Sun shower」とは打って変わって、スピード感のある軽快な楽曲です。DJが映えますよね。

Yuta Hara 「CALL, CALL」と「Once Upon a Night」はDJ的には割と対極にある気がするんですよ。「CALL, CALL」はバンド全体としてミニマムな曲で、「Once Upon a Night」は今までで1番DJを入れている曲。「CALL, CALL」はシンプルなループにどういう風に癖になるDJを入れるか?という悩みがあって、「Once Upon a Night」はどうやったらごちゃごちゃせずに自分のアクセントを多めに入れられるか?というバランスをすごく考えた気がします。

バァフ ラストの「Clock Hands」は、フュージョンっぽいバンド・サウンドに、DJのスクラッチが入るBillyrromらしい楽曲です。

Rin そうですね。シンデレラがテーマにあった曲なんです。シンデレラと言ったら、12時を過ぎたらすべての魔法が解けてしまうじゃないですか。魔法が解けた以後の時間をどう捉えるのか  ここに対してネガティヴな感情を抱いたらそのままになってしまいますけど、その捉え方について書いています。今後のことは自分たちも予測はできないけど、それでも進んでいくのを見守ってほしい気持ちを表現していますね。

バァフ シンデレラがテーマだったんですね。ロマンチックで素敵です。今作を経て、次に挑戦してみたいことや新しい発見はありましたか?

Taiseiwatabiki 曲数的に今回のアルバムに入れられなかった曲もあるよね?

Rin そう。でも、来年のツアーでまたいろんな新しい景色をたくさん見ることによって、やりたいことが自然と出てくるんじゃないかなと。今は「次はこれをやりたい」というのが固まっているわけではないですが、そんなに心配もしてないですね。

バァフ 今年も気付けば終わりに差し掛かっていますが、皆さんにとってどのような1年でしたか?

Shunsuke 今年はBillyrromとしても大きなステージを経験して、メンバーと一緒にいる時間もだいぶ長くなって。制作過程のお互いのポジションのことも含め、6人で活動している意義が改めて強くなった1年ですね。

Mol 初めて海外公演もおこなって、ライヴそのものの考え方が変わったというか。それこそフェスとかは、別に観なくてもいいわけじゃないですか。そういうお客さんをどう惹きつけるか?とか。あと、毎公演同じものをパッケージングしたライヴをただ観せにいくというよりは、場所や国、土地に合わせてその空間を僕らがどう作り上げていくか?という視点が養われた感じがします。制作面で言うと、最初にRinが言ったように、お互いの癖が感覚的に分かるようになってきて。この曲はこの人が暴れた方が良い感じになるなとか、ここはちょっと引いておこうかなとか、足し引きの感覚が分かるようになりました。その上で、「次はどんな曲を作ろうか?」というのを楽しみにしていますね。

バァフ 来年は5周年を迎えますが、節目としての意識は高まっていますか?

Shunsuke 5年目だからというのは特にないんですけど、今までも「大きなライヴハウスでワンマンやるしかない!」という感じで活動してきたので、これからもずっとそのスタンスは変わんないとは思います。ガムシャラに頑張っていきたいですね(笑)。

バァフ (笑)5年目の皆さんも楽しみにしています!

『WiND』
配信中
〈2024 SPYGLASS AGENT〉

 

INFORMATION OF Billyrrom

過去最大規模となる6都市ツアー『Billyrrom Oneman Tour 2025 WiND』が2025年2月9日よりスタート

 

 

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