CULTURE

アニメ『妻、小学生になる。』のオープニング主題歌『アイノリユニオン』を書き下ろしたpachae。ストレートな愛を歌い、高度で緻密な演奏からなる1作を語る

OCT. 7 2024, 6:00PM

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対話 / 白土華乃子 文 / 上野綾子

新曲『アイノリユニオン』をリリースした3人組ポップス・バンドpachae。本楽曲は、初のタイアップとなるアニメ『妻、小学生になる。』のオープニング主題歌として書き下ろされたが、ノリに乗れるサウンドが心地良く、愛についてストレートに綴った歌詞に胸を掴まれる本当に素晴らしい1曲だ。彼らの過去作には、言葉や音の遊びをふんだんに取り入れている印象があるが、今回は原作の台詞やキャラクターの思考を抽出するというセンスが光る。そして、シティ・ポップ調のイントロから始まりジャズ・テイストの間奏が入るなど、1曲の中でもさまざまなジャンルの音楽を想起させる構成も面白く、高度で緻密な演奏も、印象的な緩急をもたらしている。制作の成り立ちから、音山大亮(V&G)、さなえ(K)、バンバ(G)に話を訊いた。また、インタヴューの一部は、10月18日発売のバァフアウト!本誌でも掲載する。

他の曲も聴いてくれるきっかけを少しでも多く散りばめられたら(音山)

音山 「アイノリユニオン」は、『妻、小学生になる。』 の原作漫画を読み込んで、そこから制作を始めたんです。作品に対する好きが溢れている分、曲でどうすれば華を添えられるか、よりこの作品の魅力を伝えるか、すごく悩みました。曲を聴いて、作品のことをより好きになったり感動してもらえたらという願いを込めて大事に作りたかったんです。歌詞も、『妻、小学生になる。』の登場人物たちは1人ひとりの考え方や想いが交錯しリアリスティックなので、彼らの言葉として書きたくて。彼らの気持ちを理解するのにかなりの時間を使いましたし、こだわりました。

さなえ 私は原作を読んだ時、途中からあまりの感動に正座して読んでいました。(音山が作った)曲も歌詞も、物語をまた思い返すようなもので、練習の時から演奏する度に情を込めてしまいます。

バァフ pachaeの作品は、作詞をすべて音山さんが担われていますが、普段はどのようなことを軸に考えているのでしょうか?

音山 普段は僕の価値観や想いを乗せることが多いです。でも、言われてみると、ただ元気付けるような曲はあまり書きたくないという意思があるかもしれません。音楽には依存させる力があると僕は思っていて、だからこそ無責任に励ますことはできないなと感じます。

バァフ これまでも、歌詞には言葉遊びが散りばめられていましたが「アイノリユニオン」では〈君のいない道はまるで カンナのようで 身が削られる〉など、選ぶワードが少し異なる印象がありました。

音山 「カンナ」は登場人物が言っていた言葉なんです。そんな風に今回は作品から、ワードを抜き出して歌詞にも入れています。100とか200くらいあった気がするなぁ(笑)。あくまで自分の言い方に落とし込まなあかんかったけど、「カンナ」は歌詞になった時にすごくフックがあるなと思い、入れてみたんです。

バァフ 歌詞を先に書かれたとのことですが、メロディはどのようなイメージから? パートごとにテイストも目まぐるしく変わり、耳が楽しいサウンドだと感じました。

音山 そう、曲全体に色々な展開を入れたかったんです。1つの雰囲気だけじゃなく、全然違うセクションが入ってきたりして、サビで一気に開ける感じが欲しくて。そんなイメージはあったものの、どうやったらそんな雰囲気にできるのかというところは悩みましたね。選択肢があり過ぎて、やり過ぎないところを見つけるのに必死でした。そんな行程も、想像力が掻き立てられるので僕は好きなんです。ただ、作品を邪魔せず、あくまで下から持ち上げるようなものにしたいなとはずっと考えていました。

バンバ それにしてもちょっと演奏するには難し過ぎたよね。

バァフ 音山さんから上がってきた曲を聴いて「演奏はどうしよう」など練られますよね。

バンバ それが「アイノリユニオン」はそんな余裕もないくらいで(笑)。ギターなんてメロディが分裂しちゃっていますから。

音山 我ながらアニメのことしか考えていなかったなと反省しました(笑)。演奏する僕たちのことは何も考えずに作っちゃって。難しく聴こえないかもしれませんが、これまでのpachaeの曲の中でダントツに複雑です。

バンバ 「人が弾くことを想像して作った!?」と思いましたからね(笑)。

バァフ イントロなんてギターの重なりがものすごいですよね。

音山 あそこはストーリーとも親和性を出して、生まれ変わっているところをイメージして音作りをしました。ホールトーンと言うんですが、ホールトーンなメロディを入れて、そういう効果を出したいなと。僕もまだ一度で綺麗に弾けたことはなくて。みなさんの前で演奏する頃には、少しでも余裕のある状態にしておきたいです。

バンバ (笑)難易度は高いけど、その分ダイナミックだよね。演奏のスケールが大きくて、作品のキャラクターの感情の動きにも負けない素敵な曲になったと思います。

音山 実は他にも狙いがあって。アニメで流れるサイズって、フル・サイズの「アイノリユニオン」とは違うじゃないですか。pachaeを知らない人がアニメで知ってフルで聴いてくれた時に、せっかく聴いてくれるなら「アニメの尺とは違うこともするのよ」というところも知ってほしくて。僕たちの他の曲も聴いてくれるきっかけを少しでも多く散りばめられたらと思ったんですよね。

バァフ そういう狙いも込められていたんですね!

音山 いや、今自分でも驚いています(笑)。こんなにスラスラ言葉が出てくるとは。作りながら「こうなればいいな」、「こういう要素も入れてみたいな」となんとなく考えていたことが今綺麗にまとまりました(笑)。

バァフ (笑)いろんな要素と言えば、間奏のピアノ・ラインもすごく華やかですよね。

さなえ (音山から届いた)デモの時点で大枠は華やかな音色だったんです。でも、音色を相談する段階で“華やかさ”にはいつもよりかなりこだわりましたね。

音山 うんうん。

さなえ 寂しさも感じますが、愛があって前へ進んでいくという明るさを音にしたいなと思ったので、そう聴こえていたら嬉しいです。

バァフ 今年の夏は、大型フェスにも初出演されましたよね。大きなステージを経験してみて、今、どのような想いですか?

音山 まだまだ研究中なのですが、他のアーティストと同じようなライヴにはしたくなかったんです。みんなが同じライヴをしているという意味ではないんですが、pachaeを観に来てくれる方は求めている何かがあって足を運んでくれているのだと思うので、求められるものに応えられるライヴを届けたいという想いが一番にあります。でも、その上で、どれだけ自由な面を見せられるか?が今探しているもので。「マジで自由に楽しんでんな、この人ら」と本気で思わせることができたら、本当の意味で人を元気にできるのではないかなと。ライヴ作りって難しいですが、そこは追求していきたいと思っています。

バンバ 確かに。これまで立ってきたライヴ・ハウスとは全然違う感覚でした。「フェスのあのステージに立った!」という事実は確かにあって。もっとフェスに出てみたいなと思いましたね。

バァフ 11月には『pachae presents 「Trick or Trick」vol.3』も開催されますが、こちらは現状どんなイヴェントになりそうでしょうか?

音山 テンションで言うと、半狂乱の宴にしたいですね(笑)。

バァフ 回を重ねるごとに1会場ずつ増えていますが、今年は名古屋が新たに加わっていますよね。

音山 そうですね。各会場でゲスト・バンドにも出演してもらうのですが、ある意味好き勝手にやってもらいたくて。化学反応なんて大きな言い方はしたくないですが、みんなが交わって全然違う雰囲気でライヴをし合うのも自由で面白いかなと思って。単純に、僕たちが今の実力を存分に披露できる場として用意している面もあるので、pachaeの最大のパフォーマンスをお見せしたいですね。

さなえ 『vol.3』はフェスも経て、次に繋がる1歩にしたいですね。

バンバ 「忙し過ぎてやべぇぜ!」となりたいです(笑)。「今年はどこがゴールか?」なんて決めていないですが、下半期も来年も、忙しく年を取っていきたくて。気付いたら「5年経ってたんだけど!」くらいのスピード感で生きていきたいです。

『アイノリユニオン』
発売中
〈ユニバーサルシグマ〉

INFORMATION OF pachae

11月20日から、pachaeが主催する『pachae presents 「Trick or Trick」vol.3』が、名古屋、大阪、東京にて開催。

 

【WEB SITE】
pachae.ryzm.jp
【Instagram】
@pachae_official
(音山)
@otoyamadaisuke
(さなえ)
@sanae_pachae
(バンバ)
@pachae_bambam

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【YouTube】
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