CULTURE

デジタル・シングル『渚で会いましょう』をリリースしたLaura day romanceが与えてくれる、海のイメージと居心地の良い場所

SEP. 6 2024, 4:00PM

Twitterでツイート Facebookでシェア
文 / 當山直花

デジタル・シングル『渚で会いましょう』をリリースしたLaura day romance。曲を再生した瞬間、目を閉じると目の前に海が広がり、潮の香りまでも鮮明に思い出すことができた。海をただ眺めていると、どこまでも広がるその果てしなさに、強く心を動かされるような感覚になる。セルフ・ライナー・ノーツで、井上花月(V)が「本当の海の手触りはわからないのに、なぜだかわかる」とコメントしているように、海のイメージが頭の中に強く浮かび上がってくるのだ。

 

新たな挑戦として、心の中のイメージに忠実に書かれたという本楽曲だからこそ、聴き手の1人ひとりにとって唯一無二の「渚で会いましょう」になるだろう。例えば、水の中に強く石を投げるほど、大きな波が広がっていくように、作り手の強い想いこそが、多くの人々を動かすのだと、Laura day romanceの音楽を聴いていると確信を持つことができる。楽曲のこと、10月からスタートするツアー『Laura day romance tour 2024 crash landing』への想いを訊いた。

説明的じゃないのに、なぜか強くイメージが入ってくる感覚(井上)

バァフ 本楽曲は鈴木 迅(G)さんが作詞と作曲をされています。渚や海のイメージは当初からあったのでしょうか?

鈴木 僕の実家が、ものすごく海が近いところにあって。だから今までも、景色の1つとして、海や海の近くにある町が登場していました。それ自体は手癖というか、曲を作るにあたって、ずっとあるイメージです。ただ、これくらい前面に出たのは初めてかな。

バァフ 鈴木さんのライナー・ノーツに「新たな挑戦として心の中にあるイメージにどこまでも忠実に書いた」とありました。

鈴木 そうですね。サウンドが、歌詞とかメロディの中にある物語の背景として、イメージを持つことは今までもありました。今回に関しては、歌詞もメロディも、イメージの一部で、より断片的。歌詞だけを読むとか、曲だけを聴くというよりかは、全部の情報を入れた時に、イメージが浮かび上がるように作っていきました。

バァフ 井上さん、礒本雄太(D)さんは初めてデモを聴いた時はいかがでしたか?

井上 最初は結構地味な印象でした。でもそれは迅くんあるあるというか(笑)。途中からアレンジが固まってきて、完成形が見えてくることが毎回なので。初期の頃はキャッチーさで引っ張っていくことが多かったような気がするんですけど。最近は、どんな曲の骨組でもアレンジでいろんな世界にしていけます、みたいな感じなので骨組がそもそもシンプルだと思うし、今までと比べても「この人なんでもできるな」って感じですね。

礒本 僕は輪郭が見えてきた状態でデモを共有されるので、世に出ている印象と近い状態で初めて聴いているんです。この曲に関しては「マジでこの曲やります?」と思って(笑)。

鈴木 マジで?(笑)

礒本 (笑)ドラムのフレーズも、彼(鈴木)自身の「こんな感じ」というイメージを繋ぎ合わせて、そのまま再現してみました。ただ、繰り返しのフレーズがまったくなかったので、「これを再現するのは無理じゃん」と、レコーディング当日までひやひやしていました。一般的な曲のリズムであるような繰り返しのフレーズだったり、メインとなるビートが、この曲はあるようでなくて。小節ごと、セクションごとに切り取ってみても、全部違うよね、みたいな。直感で、フィーリングで演奏したものをそのまま音源で再現していくのは、今までになかったことかなと思いますね。

バァフ 冒頭は歌に合わせたギターのフレーズが特徴的で。サビではアルペジオに変化するそのメリハリが、海を眺めている静かな状況と、心は大きく揺れているという乖離を感じられました。淡々としているようだけど、細かい変化が散りばめられている構成は、どこから生まれたものですか?

鈴木 そんなに意識をしていたわけではなくて、曲の尺が決まった時に、どれくらい聴き手の興味や意識を持続させられるかで、アレンジは組んでいきました。そこで世界観を壊すことのないように、慎重にアレンジを選んでいった結果かなと思いますね。

バァフ 歌詞についても伺わせてください。〈思い出は遠ざかる 悼むでも傷むでもなく〉や〈また巡る日と波に 追い抜かされるのに心がまだ留まって〉が特に印象的でした。自分の中の記憶や思い出と、今の自分との距離感を感じられる歌詞で。みなさんはそれぞれ好きな歌詞はありますか?

井上・礒本 うーん……。

鈴木 あれ? マジ?

一同 (笑)

井上 いや、ここの部分っていうよりは、全体的に好きです。過去のいろんな曲たちも好きなんですけど、この歌詞からはすごくフランス映画的な、説明的じゃないのに、なぜか強くイメージがずんって入ってくる感覚になると思っていて。最初はこういう曲を、自分が歌えるということが嬉しかったです。当初の歌詞からほとんど変わっていないのもすごいなと思いますね。

礒本 改めて見てみると、やっぱり〈追い抜かされるのに心がまだ留まって〉のフレーズ。メンバーとして、共感する部分がここに一番あると思っています。6、7年くらいバンドをやっていて、色々な活動がありますけど、同じような日々が続いていたりもするわけで。それでもちょっとずつ積み重なって、今この瞬間があるんだよね、みたいなところは日頃から思っている部分ではあって。押しては返すような、繰り返しの動きと波のイメージがマッチするというか。好きな部分を取り上げるとするとここなのかな。

鈴木 僕は、その時代を生きている人だから書ける歌詞を、さりげなく入れられたらいいなと思っていて。コンビニの、コーヒーの氷入りカップって、ここ10年ぐらいのものだし、そういうフレーズをしれっと登場させられるのは嬉しいですね。あと、文法的に変な部分は、結構意図的に残していて。1個前の文と繋がらないような部分が結構あるんですけど、それが断片的な感じで、景色の中に自分の考えが思わず溶け込んじゃっているような歌詞にできました。

バァフ 先ほどおっしゃっていたフランス映画的というのが、まさにそうだと思っていて。断片的なイメージや、作り手の強烈なイメージが、受け手の心を強く動かすんだろうなと、楽曲を聴いて感じていました。井上さんは、歌唱のイメージはありましたか?

井上 この曲に関しては、いかに淡々と歌いながら、良い味を出せるかを考えていたような気がします。当時ビリー・アイリッシュの楽曲をよく聴いていて、彼女のような感じで歌いたいなとなんとなく思っていました。『渚で会いましょう』という文字通りの雰囲気をそのまま出せたらいいなと思っていましたね。

鈴木 歌で演じにいくとか、曲を通して何か伝えにいってほしいわけではなくて。世界観を壊さないように、でもちゃんと歌っている人の視点からその言葉が出ている距離感が理想。そこは毎回チームの協力もあって、良い塩梅に落ち着いたと思いますね。

バァフ 秋からはツアー『Laura day romance tour 2024 crash landing』がスタートします。バンド初の規模ですが、どんなツアーにしたいですか?

礒本 新曲も引っ提げてのライヴになると思うし、ワンマンをするのは初めての場所がたくさんあるので、最近の曲を聴いて僕たちを知ってくれた人が最初に観るステージになると思います。初期の頃から応援してくれていた人たちに対してとはまたちょっと違う見せ方もしないといけないかなと。まだ不安もありますけど、新しさやワクワクも感じていますね。

鈴木 会場が大きいので、そこに見合うスケール感を、新たな曲でちゃんと出していけたらいいなと思っています。“その会場で映える曲”だと思われるのは嬉しいので、その会場に似合うバンドになれるようにやっていこうかな。

井上 私は、このツアーだからこうとかは思っていなくて。ワンマンだから頑張るというよりは、全部のライヴが等しく目の前にあって、いつも1つひとつ頑張っています。今できる最大限のことをやるしかないという気持ちで、全公演ガタつきがありすぎないようにできるのが一番いいなと思っていますね。初日から平均95点くらいを出せるのが、良いバンドだと思うので。

バァフ ステージに立つ時は、普段どんな気持ちで演奏されたり、歌われたりしていますか?

礒本 いつも通りっちゃいつも通りです。僕は特にお客さんを見ないというか、目には入っていますけど、基本一番奥にいるので。特別な気持ちというよりは、等身大のありのまま。

鈴木 お客さんとコミュニケーションを取ってライヴをしていく人もいますけど、僕らは割とそういうタイプじゃないと思っていて。

井上 まったくそういうタイプじゃないと思う(笑)。

鈴木 何かノリ方を強要することもしないし、単純にそこにある音楽だけを共有しようという。それが性に合っているし、メンバーの総意な気がしていて。音楽を共有して、空間に音楽を置くだけ。それが自分たちらしくて、いいかなと思っています。元気もらうだけ、エネルギーをぶつけるだけがライヴじゃないという気持ちはあります。

井上 “演劇や映画を観ている人と私たち”のような構図になっていると思うんですよ。特にお客さんは声を発していないけど、舞台の幕が下がったら拍手はする、みたいな。よくライヴが映画っぽかったと言ってくれるお客さんもいらっしゃるんですけど、そういう感覚なのかなと思います。

バァフ 初めてLaura day romanceのライヴを観たのが、おとぎ話との2マンライヴ『【溶】-YOU- vol.6』で。観ている人それぞれが、好きなように楽しんでいて、とても居心地が良い空間だと思っていました。

井上 あー! 最高の日だ。懐かしい。ありがとうございます。最高の褒め言葉です。

バァフ ツアーを経て、今後やってみたいことはありますか?

井上 なんだろう……。海外のフェスは出たいですね。アジアのフェスとかだったら、受け入れてもらえるんじゃないかという淡い期待がある(笑)。

鈴木 俺はバンドをさらに大きくして、何にでもお金を使えるようになりたい。

礒本 (笑)。

鈴木 例えば、オーケストラを入れたいって思い付いた時に、できてしまうくらいになるのが1つの目標です。結果的に、自分の思い付いたものを伸び伸びできるように、丁寧に作品を作って、ライヴをしていった上で、より面白いものが作れたらなと。そうすれば、自分たちの後ろのバンドにも夢を見させられるというか。ああいうケースがあるんだって、良い影響を少しでも与えられるんじゃないかなと思います。そういうバンドが自分の上の世代にもいたので、そんな風になれたらいいなと思いますね。

礒本 バンドの特徴として、聴く人の年齢を選ばないというか。それはファンの人もそうだし、自分たちが40歳とか50歳になって演奏していても、全然良いなって思えるバンドなので。今まで観に来てくれた人たちをずっと長く支えるじゃないけど、そういう活動ができたらいいんじゃないかなって。

鈴木 『フジロック(フェスティバル)』は、来年行かせていただきます。

一同 (笑)。

井上 元々、『フジロック』に出たくて組んだバンドだったんですよ(笑)。

バァフ そうなのですね! 来年の『フジロック』出演も祈りつつ……ツアーも楽しみにしています!

一同 ありがとうございます!

『渚で会いましょう』
配信中
〈FRIENDSHIP.〉

lauradayromance.lnk.to/onthebeach

INFORMATION OF Laura day romance

過去最大規模のワンマン・ライヴ・ツアー『Laura day romance tour 2024 crash landing』が10月6日〈札幌cube garden〉よりスタート。

 

【WEB SITE】
lauradayromance.fanpla.jp

【X】
@Lauradayromance

【Instagram】
@lauradayromance

【YouTube】
@lauradayromance

TOP