男女の関係性を含蓄のある台詞で紡ぎ、回を増すごとに話題となっているドラマ『いちばんすきな花』で、主人公の塾講師・潮ゆくえ(多部未華子)の生徒・望月希子を演じている白鳥玉季。学校の集団行動に馴染めなかった過去もあり、学校の先生ではなく塾講師の道を選んだゆくえが向き合う、希子もまた学校に溶け込めていない。ただ、人と群れることが苦手なだけで、希子はひょうきんさや明るさも持ち合わせている。白鳥は希子の個性に心を寄せて、友達について語るかのようにインタヴューに応えてくれた。
今年出演した大河ドラマ『どうする家康』の茶々役は、静かな気迫が宿り、目が離せないほどの鮮烈な印象が話題に。子役から活動し、ドラマ『凪のお暇』、映画『ステップ』など多くの作品でも、胸に迫り記憶に残る演技を見せてきた。一方で、素顔の白鳥は天真爛漫さを持った柔らかな人柄でもある。話を聞くと映画『流浪の月』の現場で意識が変わってきたと言うが、他にも、彼女が触れてきた芸術やイマジネーションの源が感性を高め、表現へと注がれているように感じる。これからたくさんの素晴らしい芝居を見せてくれるだろう、底知れない魅力を持った新星だ。
バァフ 白鳥さんは2016年に出演した映画『永い言い訳』と連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で本格的にお芝居を始めたそうですが、当時はどのような思い出がありますか?
白鳥 『永い言い訳』を撮影していたのは5歳で、正直まだ芝居をしているという感覚がなくて。あるシーンで特殊メイクをしたんですけど、それが私、すごく嫌だったみたいで。申し訳ないことによく覚えてないのですが、撮影前に泣いてしまい、すごく皆さんを困らせたという話を母から聞きました。でもそんな記憶がないくらい、芝居の現場は楽しかったという印象です。その楽しいっていう気持ちから興味が膨らんで、ずっと惹かれ続けています。芝居をするということは別の人生を生きることでもあると思うんです。育った場所や環境、性格も全然違う人の歩みを辿れる。そこには苦しさや難しいこともたくさんあるけど、やり甲斐と楽しさを感じてから、芝居に対する意識が変わったと思います。
バァフ 意識が変わったと感じたのは、どれくらいの時期ですか?
白鳥 年齢的なタイミングもあるかもしれないですが、李相日監督の『流浪の月』で大きく考え方が変わりました。撮影は2021年夏で、ものの見え方も変わって、すごく特別な体験をさせていただいたと思っています。例えば、分からないことは溜め込まず監督に質問してもいいんだなと思えたんです。それまでは、ここはどうしようって思ったとしても、恥ずかしいし、私は台詞も多くないのに時間をかけてもらうのも申し訳ないとか、自分で考えた方がいいんじゃないかと思って質問できなかったんです。でも、李監督はどっしり構えていてくれたというか。私が理解できるまで何回聞いても応えてくれて、監督と私とでは考えていることが同じなわけがないので、そこを合わせるためにもコミュニケーションを取ることはすごく大切だと思いました。それと、李監督は本番前に芝居の確認をする時、演者と監督と少人数のスタッフでドライをするスタイルだったんです。物語の中で役柄がいる状況と、できるだけ同じ環境を作ってくれて、これまでにない体験だったのですごく衝撃的でした。役に入りやすいとても贅沢な環境でしたし、作品への関わり方や考え方を変えてくれました。
バァフ これまでも白鳥さんは印象的な役柄をたくさん演じていて、最近では大河ドラマ『どうする家康』のお芝居も印象的でした。役それぞれ違いはあると思いますが、今はどういう風に役と向き合っていますか?
白鳥 まず最初に台本を読むと、ここはこういう風なんじゃないかっていう想像が、たくさん頭に出てくるんです。そこから、やっぱりこうした方がいいんじゃないかと整理して、声に出して台詞を読むことを今は大切にしています。最近は特に、声のトーンやテンポ感が大事だなと思っていて、客観的に捉えるためにも、台詞を録音して確認しています。自分のイメージと聞こえ方が全然違うこともあるので、毎回色々な気付きがあります。それから演じる役について、「家ではどう過ごしているだろう?」と考えるようにしています。家での過ごし方って人によって変わるし、生活の仕方にはその人の特徴が出るように思っていて。帰ってきてすぐにソファーに寝転がる人もいるし、椅子にきっちり座る人もいると思うんです。そういう時間の過ごし方をイメージするとどういう人物なのか私は掴みやすいです。
バァフ ドラマ『いちばんすきな花』では、『流浪の月』で共演した多部未華子さん演じる塾講師・潮ゆくえの生徒・希子役です。どんな女の子だと思って演じていますか?
白鳥 『流浪の月』では多部さんとの共演シーンがなかったので、今回ご一緒できてすごく嬉しいです。優しくて雰囲気が柔らかい方で、素敵だなぁと思って憧れの目で見ています。希子ちゃんはしっかり者ではあるんですけど、可愛らしい部分も持っている子なので、ただ大人しい感じで表情を隠してしまわないように、丁寧に表現していきたいと思っています。
バァフ 本作の物語自体については、友情と恋愛というテーマがあります。白鳥さんご自身は、現在は恋愛や友情の感情についてどういうものだと捉えていますか。
白鳥 私はこの話を読んで、恋愛や友情というのは大人になっても難しいものなのかなって思いました(笑)。ただ今のところ私は、男女の友情は成立したいと思っていて。好きという感情の形って1つだけではないじゃないですか。友情、家族愛、もちろん恋愛も、全部違う形でいいんじゃないかな?と思うんです。ゲームや漫画の話とか、異性だからこそ気が合って仲良くなれる場合もあるかもしれないし、逆に同性だから分かり合えることもたくさんあると思うので。これから出会う人によって考え方も変わりそうですけど、せっかく素敵な出会いをしたのに、好きの形に囚われて仲良くなれないっていうのはもったいないかなと思います。
バァフ 白鳥さんのお話を聞いていると、深く役柄のことを考えて演じてらっしゃることが分かります。想像力が豊かなのは、何かからのインプットから感受性が育まれているのかな?と思って、調べたら別の記事で谷川俊太郎さんの詩がお好きだとおっしゃっていました。詩や好きな芸術が、お芝居に活きていると感じていますか?
白鳥 そうですね。私は趣味や好きなものがたくさんあるんですけど、考えてみたらそれは作品として残るものばかりで。おっしゃってくださった詩はもちろん好きですし、編み物をしたり、写真を撮ったり、あとはイラストも練習中です。例えば、寝る前に夜空の綺麗なイラストを検索して見たりすると、厳かでしんみりする気持ちになったりして、日常にはない感覚が味わえるところも好きです。そうやってインプットすると、日々の小さなことに感謝できたりもして。芝居をする時にイメージがしやすくなったり、自分にはない感覚に実感が持てて、まだまだですけど、役柄を生きているなっていう風に感じられる瞬間もあります。色々な役を演じていて、私だけの人生では知ることのなかった気持ちを感じ取ることができる、芝居に出会えて良かったと思っています。
©️フジテレビ
『いちばんすきな花』
監督/髙野 舞 脚本/生方美久
出演/多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠、齋藤飛鳥、一ノ瀬 颯、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀、他
毎週木曜夜10時より〈フジテレビ〉系にて放送中
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INFORMATION OF TAMAKI SHIRATORI
11月10日に公開した映画『正欲』、〈Netflix〉で配信中のドラマ『御手洗家、炎上する』に出演。〈太陽ホールディングス〉CM「宇宙少女 楽しんだもんがち」篇に出演中。
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