CULTURE

「結末は悲劇ですが、過程は面白い」高杉真宙が挑む『ロミオとジュリエット』のテーマはいかに世界を広げるか?

AUG. 18 2023, 11:00AM

Twitterでツイート Facebookでシェア
撮影 / 駒谷 優 
スタイリング / 菊池陽之介 
ヘア&メイクアップ / 堤 紗也香 
文 / 堂前 茜

ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲『ロミオとジュリエット』を今、この日本でやるということ。何を届けるのか、届けたいのか?ということ。ロミオ役として主演する高杉真宙は、ロミオとジュリエットがいる世界をもっと広げたいと言う。2人には縮こまってほしくない、2人を邪魔する壁を突き破ってほしい。高杉のそんな願いを聞いていると、これはもしかして我々へのメッセージが背景にあるのではと考えてしまう。繰り返しの毎日を送るうちに、視野が狭くなったり、会う人が決まってきたり。「どうせここでは」と諦めたり、目の前の楽しいことに逃げてしまったり。けれど一歩踏み出せば、世界はもっと広くて、いろんな人がいて、いろんな考えがあるのだと気付く。気付いて然るべきだ、そこに人の成長の伸び代はある——高杉をはじめとする今回のカンパニーがどんな『ロミオとジュリエット』を作ってくれるのか、高杉との対話を通して期待値が高まった。

今って、世間からの目もありつつ、周りの目よりも自分の目が厳しいですよね。石橋を叩いちゃうのは自分自身。本当は、もっと自由であってもいいと思うのですが

バァフ 『ロミオとジュリエット』と言えば、日本でもこれまで多くの公演がおこなわれてきました。プレッシャーなどはありましたか?

高杉 めちゃくちゃありますね。でもだからこそ、今回のカンパニーの皆さんと一緒にやる『ロミオとジュリエット』を、僕自身が演じるロミオ、藤野(涼子)さんが演じるジュリエットを僕は楽しみにしています。いろんな人が知っている物語だからこそ、僕自身が演じる意味があるのかなと思っていて。僕は基本的には、すごく負けん気の強いタイプではあるので、僕自身のロミオで戦いたいという気持ちが強くて。なので、これまでにやってこられた方たちの作品を観る機会は作れるのですが、観ないようにしておこうかなと思っています。

バァフ 高杉さんがロミオをやると聞いた時、「ロミオ似合う、ロミオ感ある」と思いました(笑)。

高杉 本当ですか。それは嬉しいです。

バァフ あくまで私の中のロミオ感ですが、ちょっと突っ走ってしまうところがあったり、ヴィジュアル含めてどこか少年っぽさが見え隠れするような、スラッとした好青年なので、そういう役、高杉さん上手そうだなと。高杉さんの中のロミオはどんなイメージですか?

高杉 すごくアホな子だなって、僕は思っていますよ。真っすぐで、情熱的だけど、ちょっとアホ。そこが純粋に魅力だし、だからこそ愛されるキャラクターだと僕は思いますし、一心に愛を背負えるのだと思います。

バァフ 母性をくすぐるようなところもありますよね。そして隙も多いからか、色気もあったりして。

高杉 そうですね。ロミオとジュリエットの関係自体、色気があると思います。だから、僕自身には備えることのできない色気は、役を通して着飾ってやれば、自然ともらえるものなのかなと何となく思っています。

バァフ 台詞回しの難しさはどう考えていますか?

高杉 かなり原作に寄って作られた台本になると思いますから、難しさはあると思います。翻訳してくださった松岡(和子)さんのお言葉を借りて僕らが作っていくことになるので、現代感を出すことは少ないかもしれません。だからこそ、台詞の本質、伝えたい意味を、翻訳のままどれくらい僕らが伝えることができるか? 表現できるか? そこが難しい部分かなと思います。

バァフ 現時点での好きな台詞や場面はありますか?

高杉 やっぱり名前を呼び合うくだりやその後の場面は、かなり僕は好きですね。「ロミオ、どうしてあなたはロミオなの」の後、2人で会うシーンの台詞で、「あなたのおびえた耳を貫いたのはナイチンゲールよ、ヒバリじゃない。」というくだりがあるんですけど、そのシーンのロミオとジュリエットの会話が好きです。「捕まってもいい、殺されてもいい。君がそう望むなら、僕は本望だ。」、「頭上高く大空に響くのはヒバリの歌声ではないと言いもしよう」っていう。台詞の言い回しもそうですし、ロミオの覚悟を含めて好きです。

バァフ どんな解釈になるんですか?

高杉 ジュリエットが、あれは夜鳴くナイチンゲール、朝を告げるヒバリではないと言っているのは、朝が来ると見張りが来るから殺されちゃうから。ロミオはジュリエットの屋敷に侵入しているので見つかると殺されちゃうんです。だから、「朝の鳥じゃなくて夜の鳥」だとジュリエットは言うんです。で、ロミオはそれを信じて、「ここにとどまろう」と言っている。時間というものを鳥という表現を通して伝えていて素敵だなと。時代もありますよね。日本だって和歌があったわけですから。和歌で想いを繋げたりするのと一緒で、彼らは詩で想いを告げていた。だからアホなんです。

バァフ アホ押しですね(笑)。

高杉 いや、じゃないと、何か……僕はそうであってほしいなと思います。ロミオとジュリエットは悲しいお話ですけど、僕は面白い話でもあるなと思っているから。

バァフ 確かに。ツッコミ所満載ですもんね。

高杉 はい。でも、時代が作ったものではあるから、どうしたって、その感覚を理解できないのは当然で。理解をしていかなきゃいけないんだろうと思っています。

バァフ 翻って現代の若い人の恋愛を考えてみると、例えば恋愛のリアリティ番組を観ても思いますが、コミュ力や空気を察する力が高いですよね。『ロミオとジュリエット』のようなボタンの掛け違いではない別のかけ違いは生まれそうですが、ツッコミ所は少ないのかなと。これだけ突っ走って、周りを巻き込むっていうのは……。

高杉 ないですよね。やっぱり今って、世間からの目もありつつ、周りの目よりも自分の目が厳しいですよね。石橋を叩いちゃうのは自分自身。本当は、もっと自由であってもいいと思うのですが、自分で自分を制してしまうところがあるし、周りの意見に今の時代はかなり大きく左右されるから。昔からあったのでしょうけど、今はどんな人でも、色々と気にしながら生きていかないといけないから息苦しいですよね。

バァフ 俳優さんもその最前線ですよね。

高杉 でもそれはもう職業としてね、仕方がないところもあるから。もちろん、もっと自由でいいところは、僕はあると思うんですけど、でも、この職業をしていない人たちですらそうせざるを得ないのは、辛いと思います。

バァフ 高杉さんはデビューしてから一貫してはみ出るようなことはなく品行方正なままというイメージが。

高杉 環境のお陰もあると思いますが、はっちゃけたりするのが合わないんだと思います。何に合わないのか分からないけど(笑)。僕自身、あまり自分のそういうところを見たくないところはあるかもしれません。

バァフ どんな自己像をお持ちですか?

高杉 何だろう? 理想の自分と、好きな自分って、違うじゃないですか。という中で、僕が好きな自分、理想の高杉っていう人物像があって、それからあまりはみ出さないように生きたいなと思って生きていて。

バァフ その高杉像っていうのは?

高杉 できる限りやっぱり……フワッとした言い方になるのですが、例えば、目立つ格好をしてこないとか。僕の中の高杉の理想像ですよ? そうあってほしいなと何となく思います。僕自身は派手な服も嫌いじゃないんですが、何か似合わないんだよなって、いつも思うんです。高杉真宙が取材日に着てくる服がすごく派手でもいいと思うし、着たいけど、とも思います。高杉真宙が表に出る時のブランディングとしては派手な服を着てもいい。だけど、表に出る前の高杉真宙はどうあるべきか?という方が、僕の中では大事なんです。

バァフ 高杉さんはお芝居においても、作品が一番大事なので、自分は目立たなくていい、というスタンスです。

高杉 そうだと思います。

バァフ でも今日お話を聞いて思ったのですが、ロミオが突っ走ってしまう少しおバカなキャラクターだとしたら、作品からはみ出すぐらいのモードで臨まれる高杉さんを一度見てみたい気もします。

高杉 そう、今回、僕の中の理想というか、やりたいなと思っていることの1つが――ロミオとジュリエットの世界は抗争が当たり前で、二分されています。それは町なのか国なのか? その規模の大きさをもう少し明確にして演じていくことが、チャレンジな気がしていて。さっき言っていた、ロミオが突っ走って突き出ていくことと近い話ですが、世界を大きくしていくことの重要性っていうんですかね。僕の中では今回、小さく縮こまっているロミオとジュリエットをあまり観たくなくて。悲劇は大きくあればあるほど悲劇ですし。だから、できる限り世界を広げて、大きくしていきたいと思っています。

バァフ ロミオとジュリエットはある種の閉鎖的な世界で生きています。その村社会みたいなところからどう飛び出すか? 世界を広げられるか?っていう?

高杉 そうなんですよ。世界を大きくしたいんです。それをどう表現したら良いのかはこれからの話ですが、舞台だからこその可能性が僕はあると思っているので。

バァフ シェイクスピアはもちろんですが、喜劇と悲劇は隣り合わせじゃないですか。『ロミオとジュリエット』も、悲劇的に描こうとすればするほど、小さく縮こまってしまいそうな気もします。だからこそ、高杉さんはロミオをどう愛すべきアホとして演じるのか。

高杉 そういう話だと思います。僕は最初から笑える話だと思っているから。笑えますもん。結末は悲劇ですが、過程は面白いと思っています。だって好きな女の子がいたのにパーティに行って一目惚れして別の女の子をすごく好きになって。まぁ運命の人を見つけたわけですが、日数的には短い話なんです。5日間の出来事。

バァフ そんなに短かったんですね。

高杉 はい。出会って死ぬまでが5日間。ヤバいです。

ジャケット、(66,000yen)、パンツ(41,800yen)/ 共に、レインメーカー(レインメーカー tel.075-708-2280) シャツ(37,400yen) / グラフペーパー(tel.03-6418-9402) ※すべて税込

『ロミオとジュリエット』

演出/井上尊晶 作/ウィリアム・シェイクスピア

出演/高杉真宙、藤野涼子、他

9月13日〜24日〈有楽町よみうりホール〉、29日〜10月1日〈森ノ宮ピロティホール〉、7日・8日〈富山県民会館ホール〉、14日・15日 <東海市芸術劇場 大ホール>、21日・22日〈キャナルシティ劇場〉、28日・29日〈仙台電力ホール〉にて上演

 

【WEB SITE】

2023-romeoandjuliet.com

INFORMATION OF MAHIRO TAKASUGI

 

【WEB SITE】

takasugi-mahiro.jp

【Instagram】

@mahirotakasugi_

【X】

@MahiroTakasugi_

PRESENT

高杉真宙 サイン入りチェキ(1名様)

 

以下のフォームからご応募ください。
プレゼントのご応募にはメルマガ配信の登録が必要です。

 

応募期限:9/18(月)まで

【背景透過】応募ボタン

TOP