MAR. 10 2026, 7:00PM
風景や環境、伝統など、何かが姿を変えてしまうことや移ろっていくことに対して、喪失感やもどかしさ、あるいは憂いが心の中を占めることがある。けれど、たとえ形が異なったとしても、新たな視点を得たとしても、これまでの歩みが軽々しく忘れ去られるわけでもなければ、なかったことになるわけではない。“今”と“この先”をもっと柔らかな眼差しで見つめられたら 。そんな気持ちになれたのは、緑豊かな森の中にある花火工場「帯刀煙火店」で育った、3人の若者たちの姿を描いた長編アニメーション映画『花緑青が明ける日に』との出会いがあったから。
本作で声優に初挑戦となったのが、古川琴音だ。演じたのは、花火への強い想いを秘めながらも、地元を離れ、東京で暮らす式森カオル。過去に起きたある事件を境に、するすると自分の手からこぼれ落ちてしまったものの存在を感じながらも、過去にも未来にも振り切ることができず、ただ立ち止まっている。古川の澄んだ声は、言葉にならないほどの繊細な感情に揺り動かされるカオルの葛藤を、瑞々しく浮かび上がらせていた。
物語の始まりは、町の再開発で立ち退きを迫られている「帯刀煙火店」を、カオルが訪れる場面から。行方をくらませた父に代わり、
バァフ 物語を読まれた時、どのような感情が表出したと感じましたか?
古川 最初から最後まで手に汗握る展開が続き、どんどん引き込まれていきました。それほどの疾走感があるなと。すたれていくと言うと少し強い表現かもしれませんが 日本文化やその土地ならではの伝統が少しずつ失われている現実があって。それに今後どう向き合っていけばいいか?ということも考えさせられたことでした。私は、失われてしまうことをマイナスな気持ちで捉えていたけれど、四宮(義俊)監督はプラスな気持ちとして作品に表していた印象があって。形は違えども精神を受け継ぎながら、次の世代や時代に渡っていくものがある。そんな明るいメッセージを受け取ることができました。日本画出身で、日本の文化に触れてきた監督だからこそ描ける物語なのかなと感じます。
バァフ 移りゆくことに対して、時には抗いたくなることもありますが、おっしゃるように前向きな想いを物語から感じました。今作ではカオルの声を演じられています。台本を読まれた時、どんな人物像が立ち上がってきましたか?
古川 (入野自由が演じる敬太郎の兄である)チッチ(千太郎)と敬太郎、カオルの3人の幼なじみの関係性の中だと、2人の緩衝材でもあるような面倒見の良いお姉さんという感じがしました。でも、物語の中ではカオル自身も揺らぎがあるキャラクターで。「帯刀煙火店」がなくなるという時、それぞれが違った向き合い方をしていたんですけど チッチは現実的に切り替えて、行動を起こしていくタイプ。一方で敬太郎は、自分の本心に純粋に向き合っていくタイプで。そのどちらにも振り切れず、葛藤しているのがカオルなんです。物語の中でもどんどん自分の気持ちが変わっていくのがカオルだったので、とてもリアリティのあるキャラクターだなと思っていました。
(続きは、2025年7月号にて。「BACK COVER STORY」にて掲載)
長編アニメーション映画『花緑青が明ける日に』
原作・脚本・監督/四宮義俊
出演/萩原利久、古川琴音、入野自由、岡部たかし、他
全国公開中
©2025 A NEW DAWN Film Partners
INFORMATION OF KOTONE FURUKAWA
【WEB SITE】
humanite.co.jp
【Instagram】
@harp_tone