CULTURE

上白石萌音がアルバム『texte』をリリース。映像に息づく楽曲への想いと、表現における大切な軸とは?

MAR. 7 2026, 11:05AM

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対話 / 山崎二郎

今年、歌手としてデビュー10周年を迎える上白石萌音。10周年イヤーの第1弾として届けられたニュー・アルバム『texte』は、“映像作品の音楽を歌う”というデビュー作『chouchou』と同じテーマで選曲された1枚。『NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」』の主題歌「アルデバラン」、小林武史の新たなプロデュースによる「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」、映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』主題歌「奇跡のようなこと」、そして「変わらないもの」「なんでもないや(movie ver.)」の再録音まで、全8曲に上白石の10年が凝縮されている。歌を解釈して、自己を投影していく過程は、演じる者ならではの視点、姿勢、そして、表現者の在り方そのものだった。

 

今回はWEBの登場に加え、『BARFOUT!』2026年4月号(3月19日発売)では編集長・山崎二郎による連載「柔軟力」のゲストとして話を伺っている。ここではアルバム『texte』を軸に、音楽活動への想いや表現との向き合い方などについても話を聞いているので、作品と合わせて触れていただきたい。

自己肯定より他己肯定の方が信じられる

バァフ 先月号で藤原さくらさんにご登場いただき、藤原さんのアルバム『uku』に上白石さんがフィーチャリングで参加されていることを伺いました。

上白石 さくらちゃんは、一番の仲良しです。

バァフ 10周年の第1弾としてアルバムをリリースされましたが、映像作品にまつわる楽曲ということで。選曲はどのように決められたんですか?

上白石 好きな曲、歌いたい曲ですね。最初のミーティングで、私がその場でどんどん言ったものがほとんど叶いました。

バァフ ご自身の声質については、どのように捉えていますか?

上白石 お芝居の現場で、ある監督に言われたことがあるんです。「あなたの声は、中にある感情が透けやすい声なんだ。透明度が高い。そこにどういう気持ちが入っているか、入っていないか全部分かっているよ」と。そういう声なんだということを自覚して、緊張感を持ちながらやっています。

バァフ 今回のレコーディングで、特にテイクを重ねた曲はありますか?

上白石 「なんでもないや(movie ver.)」です。10年前に歌ったものを、楽器を含めて再録音したんですが、この一番歌っている曲が一番難しかったです。本当に全部透けて見えるような感覚があって。10年前のイメージが私の中にもすごくあって、ライヴでもずっと歌っていて、その度に今のヴァージョンを見つけてきたつもりだったんですけど、やっぱりレコーディング・マイクの前に立つと色々蘇ってくるものがあったり、追い掛けてしまうものがあって。なかなか最後までたどり着けなくて、時間が掛かりました。

バァフ 勝手ながら、上白石さんはすごく自分に厳しい方なんじゃないかなと感じていました。

上白石 そうですね。自分の中の理想が高いというか、「いや、まだやれる」みたいなことをよく考えています。

バァフ 理想とのギャップが常にあって、また次の理想に向かっていくような感覚でしょうか? 喜びが一瞬で終わってしまうというか。

上白石 おっしゃる通りです。自分の表現に対する喜びっていうのはほとんどなくて、出来上がった作品を観たり聴いたりした時に、本当にありがたいなとか、参加できて良かったなとか、この作品が好きだなという喜びに変わります。自分で「よし、上手くできた」と思うことが全然なくて。基本的には作品のために何ができるかということを思っているので、それは正しい喜びの返ってき方かなとも思うんですけど、自分のアウトプットに関しては全然納得がいかないまま10年きてしまいました。でも、それが特別なことだとは思っていなくて。たぶん気楽にやった方が辛かったと思いますね。一番やりたいことをやりたいようにやってきて、結果、なかなか自分にOKが出せなくなったという感じです。

バァフ その反面、すごく柔らかい部分も持っていらっしゃる方だと思います。譲れるものも多いといいますか。

上白石 確かに、譲れるものの方が多いと思います。

バァフ 藤原さくらさんでいうと、楽曲制作では譲れない部分があるようですが、アートワークなどはスタッフの方々に委ねていると伺いました。

上白石 私の場合、特に音楽活動は与えていただくものという感覚があって。曲に対して自分の形を変えながら、そこに1本線を通すみたいな感覚ですね。なので、自分からフィットしに行くための柔軟さはすごく必要だなと思っています。

バァフ 演技の現場でもありますか?

上白石 そうですね。自分らしさを追求するというよりは、役をやるために私に何が足りていないかを考えている気がします。

バァフ ご自身の中で満点を得るよりも、作品に携わる皆さんやファンの方が楽しいと感じられることを優先する。そうすると、上白石さんも楽しいと思える  お話を伺いながら、そんな感覚を持っていらっしゃるのかなと思いましたが。

上白石 エンタメって村みたいなものだと思うんです。ここに住みたい人やいいなと思った人が訪れて、みんなでワーイってはしゃぐような。そういう繋がりが見えた時にやっぱり嬉しいなと思います。自己肯定より他己肯定の方が信じられるというか。

バァフ 今回のアルバムで「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」のトラックがすごく印象的でした。Charaさんが歌う原曲を、上白石さんが歌うとこうなるんだ、という新鮮さを感じました。

上白石 嬉しいです。Charaさんの歌声は絶対に真似できないですし、しちゃいけないので、芯の部分を改めて探すというか、なぜ私が歌うのかを考えながら向き合いました。その中で1つ指針になったのが、映画『スワロウテイル』で。Charaさんが演じた女の子と伊藤 歩さんが演じた女の子がいて、私は伊藤さんが演じられたアゲハとして歌ってみようかな?ってなんとなく思ったのが最初のアプローチだったんです。彼女の表情とか佇まいをすごく見て、「この子がもし歌ったら?」って視点を宿してやってみよう、といった意識が頭の片隅にありました。

バァフ アーティストがカヴァーするとなると、まず原曲を自分なりにどう歌うか考えると思うんです。でも、上白石さんは役に入り込むという。これは演じられている方ならではの視点ですよね。

上白石 なんか文字にすると天才みたいになっちゃいそう(笑)。

バァフ いやいや、これは皆さんが納得するお話だと思いますよ。

上白石 今回はやっぱりテーマが映像作品なので、参照できるものがたくさんあって。シーンとか人とか。主題歌はきっと台詞に付随して生まれているので、元になったものがたくさん映像作品の中にあるんですよね。その素材を集めるのもすごく楽しかったです。

『texte』
発売中〈Polydor Records / UNIVERSAL MUSIC〉

 

INFORMATION OF MONE KAMISHIRAISHI
アルバム・リリース記念ライヴ『Mone Kamishiraishi “yattokosa” 26 《texte》』を3月21〜22日〈神戸国際会館こくさいホール〉、3月29日に〈パシフィコ横浜 国立大ホール〉、4月11日〈東京ガーデンシアター〉にて開催

 

【WEB SITE】
kamishiraishimone.com

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【YouTube】
@上白石萌音-r5p

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