CULTURE

「わたしの歌はわたしたちの歌」――ELAIZAの約半年ぶりの新曲「わたしたち」がすごくいい!

JUL. 26 2023, 11:00AM

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文 / 堂前 茜

ELAIZAの約半年ぶりの新曲「わたしたち」がすごくいい。延々とリピートして聴いてしまうのは、いつになく軽やかで弾むようなテンポと、ミニマムだがアクセントのあるトラック、そして何より、スキップしながら歌うようなELAIZAの歌声によるものが大きい。「伝えたいものがある」とばかりに強く歌い上げるヴォーカライゼーションの良さもあるが、歌い手に気負いがないと、歌い手が楽しそうにリラックスして歌っていると、こうもスッとこちらの気持ちに、日常に入ってくるものか。

 

〈わたし

Working laughing eating sleeping

雨の日も

Working laughing eating sleeping

めげないぜ

Working laughing eating sleeping

大丈夫

Working laughing eating sleeping

 

 

自分と身近な人に対して、「毎日色々あるけど、きっと大丈夫。がんばろか」と背中をポンと押してくれるELAIZAのリリックも、シンプルだが聴くたびに染み入ってくる。ついループして聴いてしまうマジックは、ELAIZAが「わたしたち」の気持ちを汲んで歌ってくれているから。それがちゃんと届いているからだと思う。

でも、やっぱり疲れます。働くのって。ギブ、タイム。これが言い辛い。でも友達や家族には言ってもいいじゃないか。そんな感じです

バァフ イントロからしていつになく軽やかな空気を感じましたし、MVの表情もリラックスして見えました。どんなモードでこの曲を作られたのでしょうか?

ELAIZA 前回のアルバムではコロナ禍ということもあり、どこか俯瞰した視点から曲作りをしていたような気がします。話のスケールも大きくて、聴いてくださる方々との距離が遠かったのではなかろうか、と反省もしました。今回、「わたしたち」の歌詞を書くにあたって意識したことは、同じ時代を過ごした友人や家族に手紙を認める感覚で書く、ということでした。個人的な思い出、個人的な弱音、まだ頭の中で纏まってすらいない漠然とした想いなど……。27歳の池田さん、そんなテーマを持って臨みました。

バァフ 歌い上げるというより、お喋りしているような、誰かに話しかけているような身軽なヴォーカルで、とても聴き心地がいいです。どんなことを心がけましたか?

ELAIZA 仰るように、親しい人に近況を伝えるような感覚で歌いました。意識した声ではなく、あくまで電話している時のような、等身大で飾り気のない普段の自分の声です。スピーカーから流れてくる自分の気軽な声が、自分でも少しくすぐったいです。

バァフ 歌い出しの〈裏原が丁度いい夕立〉というラインからして引き込まれました。今の裏原よりも少し前の時代感も感じつつ、どんなイメージで描き始められましたか?

ELAIZA 中学生の時からお仕事で頻繁に東京に来ていて、原宿には何度も行きました。竹下通りの人混みもキラキラ輝いているように感じていました。ですが、18歳で東京に越してからは足が遠のいてしまいました。思いがけないスケジュールに戸惑い、人混みを避けてしまったのかもしれません。ですが、裏原の古着屋にはわざわざ行くのです。休みの日に、裏原めがけて車を出すのです。昔から変わらない。それは街並みだけではなく、私の気持ちによるところなのだと思います。〈裏原がちょうどいい夕立〉、これは私の記憶や実体験から来たものでした。

バァフ 〈愛情の裏返しも何だか めんどうになってきました〉、〈そろそろ 深呼吸したいよ〉というラインなど、ELAIZAさん「らしさ」が満載の歌詞のように感じました。特に〈Working laughing eating sleeping〉の繰り返しはシンプルですがとてもクセになります。繰り返しの毎日に変わりはなくとも、自分の気持ちの持ちようによって良い日にもできる……言ってみれば寝て食べて働いてというありのままを英語にしただけの歌詞なのに、受け取り方はその日の気分によって変わる感じが好きです。このラインはどんな時に生まれましたか?

ELAIZA この歌詞を書くのに時間はかかりませんでした。1時間以内には書き上げていたと思います。一番弱音が吐ける大切な人と話す時、会話に詰まることがないように、すらすらと言葉が出てきました。十数年前は思春期だったのに、今では自分の部下や後輩に、なんだか偉そうなことを言えてしまう立場になっていて、まだ脳みその近いところにギャルのマインドがくっきり残っているのに、キャリア・ウーマン風が似合うようになってきた。だけど上司には「すみません、気をつけます。」と謝らなきゃいけない。なんだか変な年齢になったぞ、って思うけど、昔カッコいいなって思った「働く女性」っぽくてカッコいいじゃん! そうも思えてしまうのです。でも、やっぱり疲れます。働くのって。ギブ、タイム。これが言い辛い。でも友達や家族には言ってもいいじゃないか。そんな感じです。

バァフ 「わたしたち」というタイトルにはどんな気持ちを込められましたか?

ELAIZA この歌は基本的にはわたし自身の歌ではありますが、個人的なことは政治的なことであるように、わたしの歌はわたしたちの歌なのだと思います。ティーン雑誌の時から応援してくれていた女の子たちも、気付けばお母さんになっていたりして、そんなわたしたちの日々。自分を嫌いになったり好きになったりしながら、毎日が有意義ってわけでもないけど、いい感じに流れていくわたしたちの日々。今を生きる全ての人に、最大限のリスペクトを込めて、このタイトルにしました。

バァフ 『失楽園』の頃と今とで、ご本人は変わられていないとは思いますが、発信するもののトーンなどが変わってきているように感じます。それは心境の変化なのか、世の中の温度感や空気を感じ取られてなのか、その 辺はいかがでしょうか?

ELAIZA お伝えしたように、世の中の温度感に合わせて曲作りのアプローチを変えました。好きなものはなんだって好きなので、ジャンルを変えたというような感覚はありませんが、今やりたいこと、という感覚には忠実に動いています。活気も戻ってきたことだし、明るい曲やりたいな〜と思ったからこそ「わたしたち」が生まれました。

バァフ 音楽活動は「やりたいことをやれる場所」とおっしゃっていました。デビューから今に至るまで、音楽という軸が生まれたことでご自身の中で何か変化などありましたか? この後、発信するものも楽しみです!

ELAIZA ありがとうございます。特に変化はありません。楽しいし好きだから熱中できる。ということには変わりはありませんが、より沢山の人に届けるにはどうすれば良いのだろうか?と考えるようにはなりました。(この後発信するものは)思ったより明るめだと思います! 次々出すと思います。

『わたしたち』

配信中

〈ユニバーサルミュージック〉

 

【WEB SITE】

lnk.to/elaiza_watashitachi

INFORMATION OF ELAIZA

 

【WEB SITE】

ikedaelaiza.jp

【Instagram】

@elaiza_ikd

【YouTube】

@elaiza9949

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