JUL. 22 2023, 11:00AM
放送中のドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』で瓜生陽介役を演じているのが、いま注目の若手俳優、山時聡真だ。2016年に映画『ゆずの葉ゆれて』でデビューして以来、『NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」』や映画『約束のネバーランド』、『ラーゲリより愛を込めて』など話題作で経験を積んでいき、公開中の映画『君たちはどう生きるか』では何と主役で声優デビュー。本作ではいよいよメイン回もある大きな役を手に入れた(山時の顔は「ノクリア」というエアコンのCM、石田ゆり子の息子役で見たことがある人も多いはず)。複雑な背景がある役にどう挑んだのだろう?
1話で自分が担当していたクラスの生徒に卒業式の日に突き落とされた鳳来高校3年D組の教師・九条里奈(松岡茉優)は、「死にたくない!」と強く願った後、何と1年前の始業式の日の教室に戻ってくる。自分の「死」の未来を変えるべく、真相を突き止めるべく、ハラスメントの懸念から適切な距離でしか生徒と接してこなかった自分を改め、生徒のためなら何でもやると心を決める。が、その過程は生半可な覚悟では務まらない過酷さ。山時が演じる瓜生も九条を苦悩させる1人で、クラスの問題児集団の中でも悪態をつく生徒だ。しかし、彼がバイト三昧の毎日を送るにはある理由があった——。
バァフ めちゃくちゃ先が気になるお話で。1話目だけ観ていると、瓜生君って悪ガキ感がありますが、次第に彼のバックボーンが出てきてから見方が変わってきました。このお話が来て台本を読まれて、どんなことを感じましたか?
山時 まず、こういう学園ドラマの2話目で僕にしっかり役目をいただけたことが嬉しくて。1話目の芦田(愛菜)さんからの流れで2話に僕を託してくれた、信頼してくださったプロデューサーの福井(雄太)さんや監督の鈴木(勇馬)さんに感謝しています。以前、『ZIP!』内の朝ドラマ『サヨウナラのその前に』でご一緒させてもらっていたんです。その時、浅野竣哉さんと奥平大兼くんと僕の3人でのシーンが多かったので、今回3人が同じ作品に出ているのも嬉しくて。福井さんが「信じているよ。任せるよ」と言ってくださった時は少しプレッシャーにも感じましたが、ここまで信じてくれて、それを僕に直接言ってくださるのであれば自信を持った方がいいはずだって。なのでやってやろう、自分をそのまま見せていこうと思いました。
バァフ 日頃からプレッシャーは跳ね除けられるタイプだったのですか?
山時 今回は少し違って。いつもはプレッシャーを感じるタイプです。以前ご一緒した時、すごく褒めてくださったことも自信になりましたし、信頼関係があったので、頑張ろう、恩返ししようという気持ちの方が大きかったかもしれません。
バァフ どういう点を褒めてくださっていましたか?
山時 監督は「山時の演技が好き」と言ってくださっていました。『ZIP!』の朝ドラはオーディション(番組)があったのですが、ラスト5人に残ったうちの1人が僕で。その時からずっと、「ほんとに芝居が良いよね」と。撮影が終わった後も、最後に「また何かあったら一緒に作品を作りたいね」と言ってくれて。それが実現したのは本当に嬉しかったです。作品をご一緒したのが1年前だったので、僕は変わったぞというところも福井さん含めて見せたいですし、視聴者の皆さんにも見ていただきたい気持ちでいっぱいです。あと、この作品は「想いを届ける」というメッセージが強くて。生徒それぞれが自分の悩みや思っていることを主張していく過程の中で、もしかしたら救われる気持ちになってくれる方もいるかもしれない。僕が演じる瓜生という生徒も色々と背景があるんです。いまの世の中には実際瓜生と同じような環境にいる方もいると思うので、僕の想いを届ける、と言うとちょっと偉そうですけど——俳優という仕事を通して人を救っていきたいという気持ちが強いです。
バァフ ご自身も救われた経験があるとか?
山時 救われたというか、映画やドラマは娯楽として楽しんできたのですが、僕はSNS含めてコメントや感想を見るのが好きなんです。「このシーンは泣けた」、「このシーンは心に響いた」とか。自分が出た作品もそうですが、読むと「こういう風に観てくださっているんだな」、「想いがこう届いたんだな」と感激するので、自分もそういう作品を送り出す一員になりたいなと。
バァフ 今回まさにその一員となりますが、お話のラストまで知った上で演じられているのですか?
山時 ラストは分かっていないです。今、分かっているのは4話まで。でも、それがまたいいところなのかなと思うんです。新鮮さを持ってお芝居できるので。僕は先を知っていると、先を知ったお芝居をしてしまう時があるんです。先を知らない方が役を作っていきやすいところはあります。
バァフ この記事が出るタイミングで言える範囲だと、瓜生はどんな人だと思いますか?
山時 瓜生って空気を読んで自分を隠すんです。自分より下だと思う人は見下すし、上だと思う人には上手く付いていく部分もあるんだけど、何にせよ自分の本当の気持ちは隠し通す。なので彼の人間性があまり滲み出過ぎないよう少し注意して演じました。後から「そういうことだったんだ」と感じてくださる方が面白く観てもらえるのかなと思うので。そういう考え方は今回で身に付いたことです。あと瓜生は正直、クラスの中でも一番適応能力が高いなと思います。社交性を取ってみても、性格的には本当にいい奴だなと思うんですよ。TPOがあるというか、学校じゃない場所では違う面が見えたりしますし、そういうところには共感できます。ちゃんと考えて生きている人だなと思うので、僕は仲良くなれる気がします。
バァフ 山時さんはまだ高校生ですよね。
山時 はい、高3です。
バァフ 瓜生のようにTPOを意識したりしますか?
山時 僕はどこでも素でしかないです。自分を隠さない。隠すのが面倒臭いんです。自分で言うのもあれなんですけど、僕はあまり裏もないと思います。ずっと、おちゃらけていたい感じ。「聞いて、聞いて!」みたいな(笑)。相談をめちゃくちゃしちゃうし、されるタイプでもある。いい意味で心が開けているのかなって思います。
バァフ D組の生徒たちは、学校からは問題児の塊みたいなレッテルを貼られていて、開き直っている感じの子もいると思います。それぞれのキャラクターも濃く、スクールカースト的なヒエラルキーもある。山時さんは、学校ではどんなポジションだったのですか?
山時 僕は明るくみんなを盛り上げるタイプですね。学校行事でレクリエーションがあっても、「何か企画しない?」と友達を誘ってイヴェントを考えたり、他の人を巻き込んで、「みんなでなんかしよう」と言うタイプ。先生に頼まれて、「じゃあ、これやろうよ」と言ってクラスを盛り上げたりする感じですね。
バァフ すごい。悩みとかはあまりないんですか?
山時 悩みはめちゃくちゃあります。
バァフ 悩みはあるけど明るくいられると。
山時 はい。悩みはめちゃくちゃあるんですけど、明るいです。寝たら忘れるタイプなので。寝て忘れますけど、結局また戻ってきちゃう。だけど1日は楽しく過ごせているなっていう気はします。
バァフ お話を聞いていると——例えばですけど、日頃上手く自分の意見を言えないから言葉で伝えようと小説家になりたいと思ったり、生き苦しさを感じている時に救われた映画があって映画監督を目指したり。本当に人それぞれですが、今の仕事に就くには何かしらのきっかけがあると思います。役者さんも、何をやっても続かなかったけど役者の仕事は飽きないから続けているとか、憧れの役者みたいになりたくてとか、いろんな理由があると思います。山時さんはリアルが充実していそうな中で、どうして今の仕事をやろうと思ったのですか?
山時 僕のきっかけはスカウトですけど、今、楽しいと思っている理由は、単純にみんなと違う経験をしているっていう自負があると思います。学校でもそうですが、目立ちたいとかじゃなくて、自分が人を楽しませてあげたい、自分がいることで人が幸せになっているなと思える時の気持ちが好きなんです。だから役者として僕が演じることで、届けたい想いが届いたり、僕のことを好きになってくれる人がこれから出てきてくれるかもしれない中で、自分がいることで救われた人がここから増えてくれば嬉しいなって。それが今、役者を続けられている理由になっていると思います。あとはベタですけど、いろんな経験ができるのが楽しいです。僕、すごくいろんなことに興味がいっちゃうんですよ。だけどすぐ飽きちゃう。何かをコレクションしていても飽きちゃったりするんですけど、役者の仕事は、例えば1ヶ月警察官の役を演じます、次はヤンチャなヤンキーの役をやります、とどんどん変わっていく。それが楽しいし、自分の性格に合っている気がします。出会う方も、芸能界にいるだけあって、みなさん個性豊かじゃないですか。そこで聞く話も面白くて。自分がこの仕事をやっていることに「不思議だなぁ」と思う時もありますが、不思議だから続けられる気がします。自分がテレビに出ているのを観ると「不思議だなぁ」といまでも思います。出ているCMを見ると、「あ、自分だ」ってなるんですけど、なかなか慣れないです。当たり前になり過ぎないところがいいのかもしれないですね。
バァフ スカウトされてから演技レッスンなど始められたのですか?
山時 はい、これまでレッスンを受けたことはなくて、今の事務所に入ってから始めました。昔からちょっと勘が良くて、スポーツも勘でできちゃうタイプだったのですが、勘でやっていたらいつか、勘でやっていない人に負ける。なので基本的なこと、滑舌とかも勉強しながらレッスンをちゃんとやっていきたいです。あと僕は人のマネが結構上手いらしくて、「お父さんの仕草のマネをしてみるね」と言って家族の前で披露するとウケるんです。そこは特技です。なので役者の仕事を始めてからは特に、映画やドラマで役者さんが演じている演技を取り入れたりもします。そのままではなく、自分なりに加工して、自分の演技にするっていう作業が好きです。
バァフ めちゃくちゃ向いているじゃないですか、この職業が。
山時 自分的にはもう本当に、これしかないって思っています。
バァフ いまの課題は?
山時 僕の課題は……自信を持つことです。ある程度は持っているつもりなんですけど、やっぱり人と比べちゃうところがあります。「ああ、この人より劣っているな」と。「自分は自分」と自信を持つことが課題だなと思っているし、この仕事をする上では誰かと比べる必要はないはずだ、という風に感じています。
『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』
演出/鈴木勇馬、二宮 崇 出演/松岡茉優/芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅野みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流/松下洸平、他 毎週土曜22時より〈日本テレビ〉系にて放送中
【WEB SITE】
www.ntv.co.jp/saikyo
INFORMATION OF SOMA SANTOKI
〈スタジオジブリ〉最新作映画『君たちはどう生きるか』(声の出演・主人公 眞人役)が公開中。
【WEB SITE】
topcoat.co.jp/soma_santoki
【TikTok】
@somasantoki_0606
※12月31日までの期間限定