IMP.のメンバーとしても活躍中の影山拓也が昨年、自身初の単独主演を務めた舞台『星列車で行こう』。歌舞伎俳優であり、舞台の演出や世界中の芸術家とのコラボレーションもおこなう人間国宝・坂東玉三郎が演出と補綴を担う本作がこの度、満を持して再演することが決まった。再演というだけあって、ストーリーや劇中歌は更に深みのあるものに。悩みを抱えた青年たちが“夢を見つけられる”という伝説の「星列車」に乗り込み、何者でもない自分と対峙することで新たな希望を見出していく物語だが、今年は新たなキャストも迎え、青年たちの旅と成長が描かれる。
影山が演じる太郎は何不自由ない恵まれた環境で育ちながらも、“自分がないこと”に悩んでいる。そして、星列車で出会う次郎(松田悟志)は孤独な過去から闇バイトに手を染め、逃げている最中。歌舞伎俳優の装いをした五郎(松村龍之介)は夢が叶わず、誰かに必要とされたいと願う日々。ファンタジーの世界観の中で美しく展開される物語ではあるが、悩みを抱えながらも前進しようともがく彼らの姿は決して現実離れしていないリアルなものだ。影山は「太郎たちが抱えている闇に共鳴する場面もあるはずだし、少しでも希望を感じてもらえたら嬉しい」と話す傍らで、彼自身も再演という心地良いプレッシャーを感じながらより良い舞台を届けようと模索していた。
初の単独主演として走り切った昨年。今年も夢を追い求める太郎と時を同じくして、影山自身も更なるステージへと歩みを進める。
バァフ 再演が決まった時の心境はいかがでしたか?
影山 初の単独主演を務めた作品の再演ということで、まずは感謝の気持ちが本当に大きかったです。そして玉三郎さんともまたご一緒させていただける嬉しさもあって。今回、新たに小波津(亜廉)さんが加わることで、どのような作品になるのかなというワクワク感もありつつ、稽古自体はまだ始まっていないので今は想像を膨らませて楽しみにしているところです。(取材は9月上旬)
バァフ 改めて太郎と向き合う中で、どのように役との距離を縮めていこうと考えていますか?
影山 昨年は太郎を演じる中で「もう少しこうやっておけば良かったな」とか、「こういう表現をしたら説得力が増したんじゃないかな」という反省があったんです。なので、今年はその反省を活かして、より成長した太郎の姿をみなさんにお見せできたらなと思っています。僕自身、太郎と重なる部分もあるので、自分の経験も役に落とし込めることができたらいいなと。
バァフ 太郎とご自身の重なる部分というと?
影山 太郎って自分の意見や想いをあまり言えないんですけど、人の悩みにはすごく親身に、冷静に考えられる一面があって。僕も悩んでいる時はどうして悩んでいるのか?という答えが出せないのですが、家族や友達、メンバーといった対人関係の悩みには冷静に答えを出せるので、その点は太郎と似ているのかなと思います。相手と同じ気持ちで寄り添うという感情は演じる上で大事にしている部分ですね。
バァフ ちなみに、昨年の反省点はどういったところだったのでしょうか?
影山 太郎と一緒に星列車に乗って旅をしていく次郎と五郎との接し方は、もう少し工夫した方が良かったなと思っていて。太郎は五郎と仲が良くて、次郎とは五郎ほど仲良くはないので、そこの距離感をちゃんと差別化できるように今年は演じられたらいいなと思います。
バァフ 玉三郎さんが今年も演出を担いますが、昨年の稽古では丁寧に厳しく指導していただいたと伺っています。今年はどのような意識を持って稽古に挑もうと考えていますか?
影山 昨年は発声の仕方や芝居をしている時の癖など、色々と指摘していただきました。僕、台詞を言う時に動いてしまう癖があって。玉三郎さんに「動作なしで説得力のある芝居をしてほしい」とご指導いただいたことは特に印象に残っています。今年は教えていただいたことを頭に入れて稽古に挑むというのは大事にしつつ、言われたことを台本に書き込まないのも意識したいですね。
バァフ 文字ではなく、すべて頭で覚えるということでしょうか……?
影山 そうですね。今までは自分のプランなども台本に書き込んでいたのですが、玉三郎さんに書いて覚えるより頭で覚えなさいと言われまして。もちろん書くことも大事だと思いますが、どちらかというと僕は頭で覚える癖を付けるようにしています。というのも、書いて覚えているとその場で言われたことがインプットできないように思うんです。常に紙とペンを持っているわけではないですし、ステージ上で何か言われることもある。玉三郎さんがおっしゃることって「なるほどなぁ」と思えることが本当に多いので、鮮度のある状態で頭に叩き込みたくて。『星列車』以降、僕の台本はめちゃくちゃ綺麗な状態で保たれています(笑)。
バァフ 1回の稽古でたくさんのことを学ぶと思いますが、頭と身体で覚えるのはやはり大変ではないですか?
影山 『星列車』を通して、より強化されたなと思いますが、昔からそのように覚えていたので慣れはありました。舞台やライヴの立ち位置とか振り付けって頭で覚えるしかないので、その点、頭で覚えることに難しさは特に感じていなくて。あとは、“好き”という気持ちがやはり原動力になっていますね。ステージに立つことが好きだから覚えられるし、頑張れるんだと思います。
バァフ なるほど。その気持ちが影山さんを常に奮い立たせているのですね。
影山 そうですね。前回のインタヴューで夢を叶える秘訣について話した時に、「好きなことをずっと続けることが叶う秘訣」と答えたのですが 僕がこのお仕事をさせていただいているのも本当にこの理由でしかなくて。この世界に入ったきっかけは小さい頃にテレビに出ていた方を見て「カッコ良いな」、「自分も夢を与えられる存在になりたいな」と思ったからなんです。元々、人前に立つのは得意ではなかったのですが、いざやってみるとすごく楽しいなと思えて。だからやっぱり、“夢を見つける”というよりは好きなことをやり続けた延長線上に自分の夢が存在しているのかなと思います。夢の可能性って無限大なので自分を信じて進んでいってほしいですし、宇宙が題材の『星列車』も夢を追い掛けている青年たちの物語なので、舞台を観てそのように感じていただけたら嬉しいです。
バァフ 好きなことを夢に繋げた影山さんが思う、現時点での自分の可能性って何だと思いますか? もし今、「自分の可能性を見つけてください」と言われたらどのように考えるのかなと。
影山 僕、昔から根拠のない自信はあって……。マイナスな意味ではなく、相手が求めているもの以上の結果を出せると言い聞かせているんです。自分で言うのはなんだか恥ずかしいですが(笑)、ファンの方と自分の想像を超えるくらいの結果を出せるよと。IMP.としても個人としても、活動をする上でその可能性は信じていますね。100%ではなく120%を出すくらいの気持ちじゃないと自分の目指しているものに届かないですし、僕は常にそういう気持ちで頑張っています。
バァフ 素晴らしいですね。いつも全力投球の影山さんだからこそ、周りにいる人たちもその姿を見て鼓舞されるのだと思います。最後に、再演にあたっての見どころを教えてください。
影山 今年は終盤でショータイムがあるのですが、そのシーンは衣裳もガラリと変わるんです。役ではなく、影山拓也としてのシーンが見られるので楽しみにしていただけたらなと思います。個人的に思い入れのある〈新橋演舞場〉と〈大阪松竹座〉で上演させていただくので、その舞台で座長としてみなさんの前に立てるという喜びは本当に大きくて。『星列車』をきっかけに勇気付けられたり、何かを感じ取っていただくきっかけになれば嬉しいです。
脚本/真山 仁
演出・補綴/坂東玉三郎
出演/影山拓也(IMP.)、松田悟志、松村龍之介、小波津亜廉、石井一孝、他
10月4日〜26日〈新橋演舞場〉、10月30日〜11月9日〈大阪松竹座〉にて上演
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