聖のような優しい強さを兼ね備えた人になっていかなければいけない

バァフ 前回、「バァフアウト！」にご登場いただいたのが2021年1月号の時で。

佐藤 本当にお久しぶりです。もう4年も経ったのかという感じですね。

バァフ 今回は、映画『青春ゲシュタルト崩壊』についてお伺いできればと思います。早速ですが、主演決定のお話を聞いた時はちょうど歌番組の本番直前だったそうで。その時の心境は覚えていますか？

佐藤 IMP.のデビュー曲「CRUISIN’」を披露する10分前くらいに、サラッと「映画主演、決まったよ〜」と言われたんです。デビュー曲の披露で、ただでさえ気が気じゃなかったのに、主演をするという情報も上乗せされて……あの時の僕は何が何だか分からない状態になっていたと思います。緊張もしているし、でも本番に向けて気持ちもガンガン乗っているなかで、とりあえずメンバーに映画の主演が決まったと伝えました。そうしたら、「おめでとう！」とステージ袖で盛り上がって。ウワーッと盛り上がったままステージに出て、パフォーマンス自体はなんとか無事に終わりました（笑）。忘れられない思い出になりましたね。

バァフ パフォーマンス後も高揚感は残り続けましたか？

佐藤 高揚感マックスで楽屋に戻った後、「そういえば俺、映画の主演が決まったんだ」と、だんだん実感が湧いてきて。本当に夢みたいだなと思いました。

バァフ オファーのきっかけは、金髪だった佐藤さんと聖のイメージが合致したからだと伺いました。以前はどのような理由で金髪にしていたのでしょうか？

佐藤 デビュー前に出演したBLドラマ『高良くんと天城くん』で、金髪の役に挑戦したことがあって。そこでの反響がすごくて、佐藤 新といえば金髪でこの髪型で、というのがトレードマークになったんです。僕のことを応援してくださっている方はもちろん、ドラマを機に知ってくださった方にも金髪のイメージが強く付いたんだなと思ってからは、しばらくその髪型にしていました。デビューの時は少し暗くしたのですが、主演が決まったタイミングで原作を読んだら、聖は金髪の男の子だということを知りまして。ご縁を感じましたね。

バァフ 聖はかなり鮮明な金髪ですよね。

佐藤 そうなんです。ど金髪なのか少しブリーチをした感じなのか、色の具合も色々と話し合って。僕としては綺麗な金髪で演じたくて、その意思を伝えたら尊重してくださり、明るい色味で決まりました。原作から受けたイメージ通りの髪色にしたことも、役に入りやすかった一要素だったように思います。

バァフ 原作から聖のイメージを得ていったのですね。

佐藤 そうですね。でも原作の聖に寄せようとすればするほど、空回りしてしまう感覚もあって。監督やプロデューサー、渡邉さんとも話し合いながら、映画版としての聖を作っていったように思います。

バァフ みなさんとの話し合いを経て、人物像はどのように固まっていきましたか？

佐藤 最初は悪ガキっぽい感じが出たらいいね、と話していたんです。僕も頑張ってその雰囲気を出しながら演じていたのですが、あまり上手くできなくて……。聖の不器用さや朝葉への気配りなど、細やかな優しさを表現するというのも苦戦しました。でも渡邉さんからは、「これはこれで聖君の感じがするよ」と言っていただけたので、それはすごく救いだったなと思います。

バァフ 聖は朝葉が困っている時にスッと現れて助けてくれる、救世主のような一面もあります。

佐藤 そうですね。多分、もともとは聖も何も考えずに自分の意見をズバズバ言っていたと思うんです。でも、（聖とは水泳仲間であり幼馴染の山下）祈（藤本洸大）のおかげで、自分の意見を言い過ぎるのも良い方向にいかないこともあると、自分なりに学んだのかもしれないですね。朝葉ほどではないですが、思っていることをちゃんと伝えるということに難しさを感じている部分は、朝葉と共通しているのかなと思います。強そうに見えて、意外と繊細な子なんだろうなと。

バァフ 朝葉が発症してしまった「青年期失顔症」は、自分の気持ちを押し殺して思っていることを素直に言えない、という悩みが原因で患う症状です。佐藤さん自身は、そのような経験を学生時代にしたことはありますか？

佐藤 ありますね。僕はあまり自分の意見を言わないタイプで。何か言う時は心臓がバクバクして、頭に血が上って倒れそうになるほど緊張する性格でした。言い終わった後に、「俺、何やっているんだろう……」と思うくらい自分の考えを話すのが怖い人間だったので。朝葉の気持ちは痛いほど分かります。

バァフ 表に立つお仕事をされているなかで、緊張しいな自分とはどのように向き合ってきたのでしょうか。

佐藤 僕は実践のなかで少しずつ不安と向き合っていくタイプなんです。滝沢（秀明）さんプロデュースの舞台に出演していたのですが、公演回数が本当に多くて。どういうメンタルの持ち方でステージに立ったら自分らしく輝けるのか、自分らしく話せるのか、今日はこういう気持ちでステージに立ってみよう、というのを40公演ほどあるなかで1つずつ試していきました。なので、不安や自分を出す恐怖を一気に取っ払っていったというわけではなく、少しずつちぎって落としていったような感じで。メンバー7人で活動を始めた時ぐらいからだんだんと不安はなくなっていき、ようやく消えたのかなと思います。

バァフ 今は抱えていた不安は完全になくなった状態で舞台に立たれているのですね。

佐藤 そうですね。アイドルってキラキラしているように見えるけれど、儚くもある仕事だなと僕は思っていて。何回もあるステージのうちの1回を、不安な気持ちで立つのってもったいないじゃないですか。1分でも1秒でも、誰よりも輝いていたいですし、センターだからとか〈TOBE〉のデビュー・グループ第1号だからとか、気にしている暇がないくらい舞台に集中できるようになって。それこそ、「バァフアウト！」に初めて出させていただいた時と比べると、メンタル的にも成長したなと思います。当時のインタヴューを見ても、自分の弱い部分が目立っているというか、やっぱり不安だったんだろうなと。

バァフ 前回は、「やると決めたことは曲げずに突き進んでしまう」と話されていましたが、その気持ちは今も変わらずあり続けているように思いますか？

佐藤 変わっていないですね。ブレない芯は持ちつつも、朝葉のような良い意味で周りに合わせられる柔軟さと、聖のような優しい強さを兼ね備えた人になっていかなければいけないなと、今は思っています。

バァフ 朝葉にとって聖は居場所のような存在だと思いますが、佐藤さんにとっての居場所はどこにあるように思いますか？

佐藤 うーん……スーパーカッコ付けっぽい感じになってしまうのですが（笑）、僕にとってはステージですね。『to HEROes 〜TOBE 2nd Super Live〜』の時も開催2回目とはいえ、ドームだったし僕たち以外のファンの方もたくさんいるなかで、本番直前はめちゃくちゃ緊張していたんです。でも、いざ出るとバクバクしていた心臓がスッと平常に戻って、自分らしくエネルギーを会場にぶつけられて。お客さんを前にすると自分が輝くことだけに没頭しますし、やっぱり僕にとってステージは落ち着く場所なんだろうなと思います。