
BARFOUT!2022 November

MUSIC『from here to there』Ryu Matsuyama
色鮮やかで深遠なサウンド・スケープを描く、ピアノ・スリーピース・バンド。mabanuaや優河、BIMといった豪華客演を迎えた3rdフル・アルバムは、インスト曲「satellite」の繊細な音像に思わず息を呑むという感触から始まる。続くノスタルジックな気持ちが浮かぶ「kid feat. 優河」から、今の自分を肯定してくれるようなラスト曲「all at home」まで、全曲が濃く脳裏に刻まれていくのが彼らのすごさ。身も心も一気に掴まれる。2022年、心底出会えて良かったと思える1枚。(松坂)
『from here to there』Ryu Matsuyama
発売中
〈バップ〉

FILM 『天間荘の三姉妹』
天間荘は、天界と地上の間にある街・三ツ瀬に存在する「魂の宿」。現世で交通事故に遭い臨死状態となったたまえ(のん)が、天間荘や三ツ瀬の街で時を過ごし、自らの魂の行先を決断する。原作は、漫画『スカイハイ』のスピンオフとして、東日本大震災後に描かれた『天間荘の三姉妹―スカイハイ―』。「お逝きなさい」の名台詞が本作でも登場するが、恨みや呪いではなく、悲しみや心残りを抱える人々の姿が優しく描かれる。生と死について、向き合い、見つめ直そうと思える作品。(賀国)
『天間荘の三姉妹』
監督/北村龍平
出演/のん、門脇 麦、大島優子、高良健吾、山谷花純、萩原利久、平山浩行、柳葉敏郎、中村雅俊、三田佳子、永瀬正敏、寺島しのぶ、柴咲コウ、他
10月28日より全国公開
©2022髙橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会

FILM 『パラレル・マザーズ』
スペイン内戦で犠牲になった曽祖父らの骨を掘り起こしきちんと埋葬したいと願うジャニスと、「母性がない」と密かに嘆く母を持つ17歳のアナは同じ日に同じ病院で女の子を出産。後にDNAテストで取り違えが発覚し2人は苦しむ。最後のカットを見て、監督の一貫した主題「母親(の物語)」だけでなく、「スペイン内戦」という過去と向き合うことこそを「パラレル」に描いたのではないかと感じる。ジャニスのアナへの「少しは自分の国を知るべき」という言葉が強烈だ。(堂前)
『パラレル・マザーズ』
監督・脚本/ペドロ・アルモドバル
出演/ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、他
11月3日より〈ヒューマントラストシネマ有楽町〉他、全国公開
© Remotamente Films AIE & El Deseo DASLU

FILM 『犯罪都市 THE ROUNDUP』
主演のマ・ドンソクがプロデュースを務めるクライム・アクション作の第2弾が日本上陸。ドンソク演じる強力犯係の刑事マ・ソクトが対峙するのは、残忍な凶悪犯罪を繰り返すカン・ヘサン。『私の解放日誌』〈Netflix〉で影を背負い匂い立つような色気を纏っていたソン・ソックが、本作では眼光鋭い非情な犯罪者へと様変わりしている。丸腰で挑むソクト(だが張り手だけで相手を10mほど吹き飛ばす威力あり)と、ヘサンの高速アクション・シーンは、さながら異種格闘技戦のような面白さ。(多田)
『犯罪都市 THE ROUNDUP』
監督/イ・サンヨン
出演/マ・ドンソク、ソン・ソック、チェ・グィファ、パク・ジファン、ホ・ドンウォン、ハジュン、チョン・ジェグァン、他
11月3日より〈TOHOシネマズ 日比谷〉他にて全国公開
©ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION

FILM 『すずめの戸締まり』
新海 誠監督の作品は、その映画を観た者の内側を変えてしまう力を持っている。日本各地の廃墟を舞台に災いの元となる“扉”を閉めていくという、少女・岩戸鈴芽の解放と成長を描く新作『すずめの戸締まり』もまさしく。人々との出会いと別れ、驚きと困難の数々に遭遇する姿から垣間見られるのは、淀みのない真っ直ぐさ、必死さ。純度の高いものに直接触れる体験こそが、人の心を動かすのだと思う。今作でも、スクリーンからその場の空気の匂いすらも湧き立つような風景美も健在。(松坂)
『すずめの戸締まり』
原作・脚本・監督/新海 誠
声の出演/原 菜乃華、松村北斗、他
キャラクターデザイン/田中将賀
作画監督/土屋堅一
美術監督/丹治 匠
11月11日より〈東宝〉系にて全国公開
©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

BOOK 『磯村勇斗写真集「PASSAGE」』
5年もの時間をかけて撮り溜められた、俳優・磯村勇斗と、フォトグラファー・レスリー・キーの写真群が写真集として発売に。美しい日本の大地をバックに、躍動を見せる磯村を静止である写真に残す。リアルタイムに続く互いの変化を写真に落とし込み続けた、2人の軌跡をじっくりと堪能できる一作。それにしても、30歳を迎え、表現者として一層の厚みを感じる磯村に今後も期待が止まらない。卓上カレンダーやメイキングDVDなど特典付きセットの販売も要チェックだ。(上野)
【作品概要】
『磯村勇斗写真集「PASSAGE」』
撮影/レスリー・キー
11月4日発売
〈東京ニュース通信社〉
※11月6日、東京で発売記念イヴェントの開催が決定