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BARFOUT!2022 Augest-2

MUSIC 『余白のメロディ』寺尾紗穂

MUSIC 『余白のメロディ』寺尾紗穂

 『余白のメロディ』を聴いていると、慌ただしさや憂鬱さなどが予想外に舞い込む日常とは距離を取った別の時間が流れる感覚がある。作品に滲むのは、希望や夢を感じさせる暖かな空気。「人」としての営みを、今一度、思い出させてくれる。これまで社会的な問題意識を反映させた楽曲も多く発表してきた彼女だが、今作ではより奥深くにある心象の部分に目を向けているような印象だ。本作には、寺尾にとって歌の道を選ぶきっかけとなった西岡恭蔵「Glory Hallelujah」のカヴァーも収録。(松坂)

『余白のメロディ』寺尾紗穂
発売中
〈こほろぎ舎〉

MUSIC 『L –fifty-』藤木直人

MUSIC 『L –fifty-』藤木直人

50歳の節目を記念した、藤木直人のミニ・アルバムが誕生。疾走感あるメロディと気持ちを鼓舞させる詞が魅力的な「ミライ」で披露する歌声は、変わらぬフレッシュさと甘さのバランスが心地良いから、“藤木直人(50歳)”の字面に頭がなかなか追いつかない。だがそこから続くのは、岡崎体育が手掛ける「湿布」、寺岡呼人の「ナイスなミドル!」など、加齢をポジティヴかつポップに捉えた楽曲勢。アップデートしつつも遊び心は忘れない、藤木のウィットに富んだ人間性を再確認する。(多田)

『L –fifty-』藤木直人
発売中
〈ポニーキャニオン〉
※東京、大阪、愛知を巡るツアー『Naohito Fujiki Live Tour ver13.0〜 L -fifty- 〜』が7月18日より開催

FILM 『こちらあみ子』

FILM 『こちらあみ子』

 誰しもが自分だけのこだわりや世界観を持っているだろうが、その多くは、環境の変化や成長と共に、知らず知らず心の奥底へと仕舞われていくのかもしれない。小学生のあみ子は中学生になってもその感性を失うことなく、“あみ子”で在り続ける。だが彼女の不変と比例するように、周りの人たちはあみ子の呼びかけが届かない所へと離れてしまう。決して善悪に分けられないからこそ難しい。演技未経験ながらあみ子役に抜擢された、大沢一菜のドキュメンタリーかとも錯覚する作品。(多田)

『こちらあみ子』
監督・脚本/森井勇佑
原作/『こちらあみ子』今村夏子〈ちくま文庫〉
出演/大沢一菜、井浦 新、尾野真千子、他
全国公開中
©︎2022『こちらあみ子』フィルムパートナーズ

FILM 『戦争と女の顔』

FILM 『戦争と女の顔』

 冒頭、真っ暗なスクリーンから聞こえてくる“声にならない声”――後に主人公・イーヤの戦争による後遺症の発作の声だと分かる――が本作を象徴している。1945年、終戦直後のレニングラードを舞台に、PTSDを抱えながら病院で働くイーヤと、戦地から帰還した戦友のマーシャは、それぞれの“切なる願い”だけを希望に懸命に生きていた。「戦争のせいだ」と心では分かっていても、どうにもならない問題への苛立ちは誰に届くわけでも、誰が解決してくれるわけでもないのだ。(堂前)

『戦争と女の顔』
監督・脚本/カンテミール・バラーゴフ 
原案/『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(三浦みどり・訳)〈岩波現代文庫〉 
出演/ヴィクトリア・ミロシニチェンコ、ヴァシリサ・ペレリギナ、アンドレイ・ヴァイコフ、イーゴリ・シローコフ、他
7月15日より〈新宿武蔵野館〉他、全国公開
© Non-Stop Production, LLC, 2019

FILM  『女神の継承』

FILM 『女神の継承』

 『チェイサー』、『悲しき獣』、『哭声/コクソン』を経てナ・ホンジン監督が初めて海外(タイ)監督と組み、製作・原案を手掛けた本作は、タイ東北部で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族の悪霊退散に至る記録映画であり、恐怖映像集でもある。最終局面は日本映画『来る』のような着地を迎えると思いきやまさかの……。ドキュメンタリーの体裁を取っているのであえて強調させてもらいたいのが、「迫真が過ぎる」のと、「恐いもの見たさ」で気軽に観るのは少し危険という点。(堂前)

『女神の継承』
原案・プロデュース/ナ・ホンジン 
監督/バンジョン・ピサンタナクーン 
出演/サワニー・ウトーンマ、ナリルヤ・グルモンコルペチ、シラニ・ヤンキッティカン、他 
7月29日より〈シネマート新宿〉他、全国公開
© 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

DRAMA 『ANIMALS-アニマルズ-』

DRAMA 『ANIMALS-アニマルズ-』

海(鈴木愛理)はブラック企業で働き詰めの“幸せ迷子のズタボロ女子”。そんな彼女の前に、年上社長・圭祐(白洲 迅)と年下カメラマン・風緒(本田響矢)が現れ、転機を迎える大逆転劇。連続ドラマ初主演の鈴木愛理が、ハードなテレビの制作現場でADとして奮闘する姿は、とにかく一生懸命で応援したくなる。圭祐や風緒、凜とした登場で海を導くモデルの雛(村上愛花)など、どの登場人物も魅力的で、観ていると爽やかで前向きな気持ちになれる作品。(賀国)

【作品情報】
『ANIMALS-アニマルズ-』
監督/原 桂之介
出演/鈴木愛理、本田響矢、村上愛花、星乃夢奈、白洲 迅、他
毎週木曜夜10時より〈ABEMA〉SPECIALチャンネルにて放送中
©️AbemaTV, Inc

ART 『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』

ART 『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』

 ブライアン・イーノが提唱したアンビエント・ミュージックは進化の過程を辿り昨今ではあらゆる音楽シーンに影響を及ぼしているが、いまいち大衆性を勝ち得ていない日本で大規模なインスタレーション展を行うというのがまた面白い。未だある種の閉鎖的な環境で自身と向き合う日々を送る我々が一歩外へ踏み出し、ここで何を体験できるのか? イーノは「ありきたりな日常を手放し、別の世界に身を委ねることで、自分の想像力を自由に発揮することができる」と語っている。(堂前)

『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』
8月21日まで〈京都中央信用金庫 旧厚生センター〉にて開催中

ART 『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』

ART 『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』

 携帯カメラで気軽に撮影し加工もできる現代とは違い、フィルム・カメラのアナログな手法で写真表現を追求していた1930〜40年代。マン・レイやブラッサイなど、欧米の写真家から伝わったシュルレアリスムや抽象美術の影響を受けた前衛写真が、全国各地のアマチュア団体を中心に流行していた。本展は、戦争の陰に隠れてしまっていた当時の写真が、近年の研究により一堂に会する貴重な機会。現実を超える夢のような世界観、それを生み出す巧みなアイデアは、今観ても劇的だ。(岡田)

『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』
8月21日まで〈東京都写真美術館〉にて開催中
(画像キャプ)
平井輝七《風》1938年 東京都写真美術館蔵

ART 『ゲルハルト・リヒター展』

ART 『ゲルハルト・リヒター展』

 日本では16年ぶり、東京では初となる現代アートの巨匠・リヒター(生誕90年、画業60年!)の美術館での個展。ホロコーストをテーマにした「ビルケナウ」(2014年)も圧巻だが、40年以上描き続けられた「アブストラクト・ペインティング」シリーズの2017年の作品は、これを描き終えたことでもう絵(油)は描かないと本人が宣言したのも頷ける素晴らしさ。巨大な「4900の色彩」、「ストリップ」などはもちろん、写真と絵画を行き来した作品群が投げかける面白さときたら傑作だ。(堂前)

『ゲルハルト・リヒター展』
10月2日まで〈東京国立近代美術館〉にて開催中
ゲルハルト・リヒター《モーターボート(第一ヴァージョン)(CR:79a)》
1965年 ゲルハルト・リヒター財団蔵
© Gerhard Richter 2022 (07062022)

ART 『アレック・ソス Gathered Leaves』

ART 『アレック・ソス Gathered Leaves』

 ドキュメンタリー写真の手法を継承しながらも、独自の詩的な静謐さのある作風が特徴のアメリカの現代写真家、アレック・ソス。国内美術館では初となる個展が開催中だ。本展は、初期の代表作『Sleeping by the Mississippi』から最新作の『A Pound of Pictures』まで、アメリカを題材とする5つのシリーズで構成。一挙に約80点もの作品が並ぶ。葉山の一色海岸の目の前に建つ美術館で、ソスが捉えた静かな眼差しを体感する。なんと贅沢な時間を過ごせることだろう。(松坂)

『アレック・ソス Gathered Leaves』
10月10日まで〈神奈川県立近代美術館 葉山〉にて開催中
※感染防止対策として、入場制限を行う場合あり
(写真下クレジット)
《チャールズ、ミネソタ州ヴァーサ》〈Sleeping by the Mississippi〉より 2002年 ©Alec Soth, courtesy LOOCK Galerie, Berlin

STAGE  『超歌舞伎2022 Powered by NTT』

STAGE 『超歌舞伎2022 Powered by NTT』

毎年〈幕張メッセ〉で開催している『ニコニコ超会議』で、2016年に初演された『超歌舞伎』。中村獅童を中心とした歌舞伎俳優と、初音ミクやボーカロイドが共演する最先端技術を融合した公演で、新しい歌舞伎の形が生まれた。観客はペンライトを振って応援するスタイルが定着し、『ニコニコ生放送』視聴者のコメントが会場にも投影されるように。今年も盛況で、恒例行事の枠を超えて、全国4カ所の劇場での公演が決定。伝統を現代的に革新する、中村獅童の熱い挑戦だ。(岡田)

『超歌舞伎2022 Powered by NTT』
8月4日〜7日まで福岡〈博多座〉、8月13日〜16日まで名古屋〈御園座〉、8月21日〜9月3日まで東京〈新橋演舞場〉、9月8日〜25日まで京都〈南座〉にて上演
chokabuki.jp/2022theatre

BOOK 『うえから京都』篠 友子

BOOK 『うえから京都』篠 友子

 何年にも渡り本誌の取材時にお世話になっている、映画宣伝を手掛ける〈MUSA〉の篠 友子が60歳を過ぎて作家デビュー!という非常に嬉しいニュースが飛び込んできた。初執筆となる本作の主人公は、令和の新ヒーロー・坂本龍子。ウイルス終結後も経済が混迷を続けている中、京都府のトップ・桂 大吾が「都を西に動かしたい」と坂本に声を掛けたことをきっかけに、京都 VS 大阪や西の笑える“あるある”話が展開されていく。無謀だとしても始めてみる。篠の想いが詰まった1作。(松坂)

『うえから京都』篠 友子
7月15日発売
〈角川春樹事務所〉