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BARFOUT!2022 JULY-2

MUSIC 『初恋が泣いている』あいみょん

MUSIC 『初恋が泣いている』あいみょん

 表題曲は、あいみょん曰く「初恋、または恋に取り憑かれている主人公の話」。〈電柱にぶら下がったままの初恋は 痺れをきかして睨んでる〉という冒頭から、まるで擬人化した“恋”がこちらに問いかけてくるような1曲だ。もし、“恋”の姿をした者と対峙できるものなら会って話してみたい、という想像を掻き立ててくれる。広瀬アリス、松村北斗(SixTONES)、他が出演する、6人の男女が織りなす群像ラヴ・ストーリーを描いたドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』の主題歌。(松坂)

『初恋が泣いている』あいみょん
発売中
〈ワーナーミュージック・ジャパン〉

MUSIC 『太陽観測』あたし

MUSIC 『太陽観測』あたし

 2020年より歌い手として活動を開始した“(元)現役女子高生あたし”が、アーティスト名を“あたし”に改め「太陽観測」でデビュー。新世代クリエイター・harhaが作詞・作曲を手掛けた本曲は、〈君〉へのピュアな想いが駆け巡る仕上がり。太陽の光がキラキラと乱反射するようなイメージが浮かぶ、無垢な歌声がクセになる。デビュー曲の発売直後から、「うぉーしゃんだんす」、「着心音」と立て続けに配信リリースも。現在19歳、まだまだ変幻自在な可能性を秘めていそう。(松坂)

『太陽観測』あたし
発売中
〈MeMe Meets〉

FILM 『あなたの顔の前に』

FILM 『あなたの顔の前に』

『第71回ベルリン国際映画祭』「銀熊賞」に輝いた『イントロダクション』と同時公開のサンス監督の長編26作目。熟年に差し掛かった主人公のサンオクは、捨てたはずの母国に戻り久々に妹と再会。思い出の地を巡り、帰国の目的の1つであった「約束」も果たす。短くも濃いそれら1日の出来事を経てもなお彼女の中に湧き上がるのは、「顔の前には天国が隠れている」ということ。両作品とも、登場人物への目線が今までになく優しく、温かい。韓国語の響きも、柔らかで穏やか。(堂前)

『あなたの顔の前に』
監督・脚本・製作・撮影・編集・音楽/ホン・サンス
出演/イ・ヘヨン、チョ・クニ、クォン・ヘヒョ、シン・ソクホ、キム・セビョク、ハ・ソングク、ソ・ヨンファ、イ・ユンミ、カン・イソ、キム・シハ
6月24日より、〈ヒューマントラストシネマ有楽町〉他、全国公開
© 2020. Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved

FILM 『どうしようもない僕のちっぽけな世界は、』

FILM 『どうしようもない僕のちっぽけな世界は、』

 虐待を疑われ、娘を児童養護施設に引き取られている彼(郭 智博)。口先ばかりで母親としての責任を放棄した妻、職なし金なし、自堕落な生活――廃れたアパートの薄暗い部屋に変わらず存在するのは絶望だけ。「どうにもならん」けど、今日も人生は巡る。グレーのスウェットで自転車に乗り、ちっぽけな世界をぐるぐる彷徨う郭の姿が物悲しい。エンディング曲・クリープハイプの「二十九、三十」、〈前に進め 前に進め 不規則な生活リズムで〉が胸のつかえを少し楽にしてくれた。(多田)

『どうしようもない僕のちっぽけな世界は、』
監督・脚本/倉本朋幸
出演/郭 智博、古田結凪、和希沙也、冨手麻妙、美保 純、カトウシンスケ、後藤剛範、梅舟惟永、菅原永二、田中隆三、渡辺真起子
6月25日より〈渋谷ユーロスペース〉他にて全国順次公開
©︎TOM company

FILM 『ブラック・フォン』

FILM 『ブラック・フォン』

 映画に死者はしばしば登場するが、問題は彼らが劇中でどう振る舞うか?である。『ラストナイト・イン・ソーホー』(60年代オマージュ+ホラー)も新鮮だったが、本作(70年代アメリカが舞台)の求心力は、12歳の少年・フィニーと彼の妹(ある能力を持つ)との絆、恐怖に打ち勝つのは自分しかないというメッセージの強さだ。〈ブラムハウス・プロダクションズ〉×スコット・デリクソン(ex-『ドクター・ストレンジ』)×ジョー・ヒル(スティーヴン・キング息子)という布陣も最高。(堂前)

『ブラック・フォン』
監督/スコット・デリクソン
原作/『黒電話』ジョー・ヒル
出演/イーサン・ホーク、メイソン・テムズ、マデリーン・マックグロウ、他
7月1日より全国公開
© 2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

FILM 『リコリス・ピザ』

FILM 『リコリス・ピザ』

 70年代のハリウッド近郊に住む高校生のゲイリーと年上女性・アラナ(キャストの2人はデビュー作)の恋模様。「やっぱり君がいい」に辿り着くまでの紆余曲折は若ければなお大変だ。駆け引き、嫉妬、他への目移り……気持ちの揺らぎでつい愚かな行動に出てしまうが、色鮮やかな70年代の音楽(監督が選曲した青春のプレイリスト)が彩りを添え、彼らを眩しくさせる。会いたい気持ちが加速すると走るのは若さの特権だ。そう、若いって走り出せること(幾つになっても)。(堂前)

『リコリス・ピザ』
脚本・監督/ポール・トーマス・アンダーソン
出演/アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン、ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディ、他
7月1日より〈TOHOシネマズ シャンテ〉他、全国公開
(C) 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

FILM 『わたしは最悪。』

FILM 『わたしは最悪。』

 確かに私(=主人公のユリヤ)は最悪かもしれない。若さもあっての大胆さや、容姿や才能ゆえの自信家ぶりが鼻につかないでもない。けれど本作が共感を呼ぶと思うのは、誰しもが持つ繊細さを丁寧に掬い取り、彼女の愚直で貪欲な邁進をありありと描いているからだ。ユリアは他者に構って欲しい承認欲求の塊ではない。向き合うのは自分自身、自分で自分を認めたいのだ。かつての恋人からの「不安なことって案外上手くいくものだよ」など、含蓄のある台詞と映像美も必見。(堂前)

『わたしは最悪。』
監督/ヨアキム・トリアー
出演/レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム、他 7月1日より〈Bunkamuraル・シネマ〉他、全国公開
© 2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST - SNOWGLOBE - B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

FILM 『X エックス』

FILM 『X エックス』

 1979年、テキサスの農場に、映画製作のため俳優とスタッフらが訪れた。だが彼らに宿泊場所として納屋を提供した老人ハワードとその妻の老婆パールはサイコな高齢者だった――往年のエロ怖ホラーの再構築に「若者VS老人」が加わり斬新さを生んでいる。途中、「何を観させられているのか?」と戦慄が走り、血飛沫や殺戮場面より恐ろしかったのは、あるベッド・シーン。ここまで凄まじい「超老人」の恐ろしさを体感すると、現実世界のシニアも警戒してしまいそうになる。(堂前)

『X エックス』
監督・脚本/タイ・ウェスト
出演/ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、ブリタニー・スノウ、スコット・メスカディ(キッド・カディ)、マーティン・ヘンダーソン、オーウェン・キャンベル、ステファン・ウレ、他
7月8日より〈TOHOシネマズ日比谷〉他、全国公開
(C)2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved.

FILM 『魂のまなざし』

FILM 『魂のまなざし』

 モダニズムを代表するフィンランドの画家、ヘレン・シャルフベックの生誕160年を記念して公開される本作。祖国独立と内戦に伴い保守的な芸術が良しとされた時代、ヘレンが描き続けたのは戦争や貧困といった目の前の真実。静謐さの中に力強さを湛えた作品の数々は美しい自然光と馴染むことで、その本質が一層浮かび上がるように感じた。理不尽な男性社会、アマチュア画家との恋……着想は内外から湧き上がる。“女流”ではなく、1人の画家として信念を貫いた人間の物語。(多田)

『魂のまなざし』
監督/アンティ・ヨキネン
出演/ラウラ・ビルン、ヨハンネス・ホロパイネン、クリスタ・コソネン、エーロ・アホ、ピルッコ・サイシオ、ヤルッコ・ラフティ
7月15日〈Bunkamura ル・シネマ〉他にて
全国順次公開
©︎Finland Cinematic

WEBCAST 『QUEENDOM 2』

WEBCAST 『QUEENDOM 2』

 6組のK-POP界の女性アーティストが“女王の座”を懸けパフォーマンス対決を繰り広げるサバイバル番組。出演者はみな第一線で活躍する実力者ゆえ、どのステージも見惚れてしまう。が、ドキュメンタリーとして映し出される練習風景やバトルの裏側のシーンでは、等身大の姿が。華やかに見える世界で、彼女達が背負うものの大きさに、幾度となくハッとさせられた。グループの垣根を超えたユニット・パフォーマンスなど、ここでしか見られないステージの数々は必見。(賀国)

『QUEENDOM 2』
出演/テヨン(少女時代)、イ・ヨンジン、Brave Girls、VIVIZ、WJSN(宇宙少女)、LOONA(今月の少女)、Kep1er、ヒョリン
3月31日~6月2日〈ABEMA SPECIAL3 チャンネル〉にて放送終了、〈ABEMAプレミアム〉にて全話配信中
(C)CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved

ART ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 『写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』

ART ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 『写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』

 画家を目指して入った藝大で写真と出会った柴田敏雄と、写真の誕生と同時代を生きた画家たちが訪れた場所を巡り、作品を制作している鈴木理策。本展示は、2名の作家が関心を寄せ続けてきたポール・セザンヌの作品を起点に、現代の写真作品と絵画の関係性を問うというもの。一見無機質な柴田の写真には圧倒的な「見る」ということを突きつけられ、鈴木の写真には確かにそこに流れていたであろう時間を感じる。人間がものをみて表現する、その本質に触れられる内容だ。(松坂)

『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』
7月10日まで〈アーティゾン美術館〉6階展示室、4階展示室内ガラスケースにて開催中

BOOK 『薮IN』折坂悠太

BOOK 『薮IN』折坂悠太

 シンガー・ソングライター、折坂悠太の声と詞、楽曲の中に生まれる“間”に惹かれている。その折坂の魅力にじわじわと夢中になっている最中、折坂悠太展『薮IN』(会期終了)で、彼にとっての初の書籍『薮IN』をいち早く手に取った。オムニバス・ブックとなる本作には、折坂が書き下ろした短編小説「薮IN」、エッセイ、論考、対話集を収録。また、彼と共鳴する坂口恭平、イ・ランも寄稿。命の匂いを感じる文章に触れると、折坂悠太という人物の頭の中を覗くような感覚になる。(松坂)

『薮IN』折坂悠太
発売中
〈REPOR / TAGE〉