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〈sio〉と、料理と、今日の私。第5回 Guest/緒川たまき

撮影 久富健太郎(SPUTNIK)
文 松坂 愛

料理だけでなく様々なホスピタリティが高く、味わったことのない驚きの出会いがある、代々木上原のモダン・フレンチ〈sio〉。オーナー・シェフの鳥羽周作をホストとして、多彩なゲストを招き、新しいレストラン体験を伝える当企画。第5回は、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と新ユニット・ケムリ研究室を立ち上げた女優・緒川たまきをゲストに迎えた。

各国を旅するような広がりを見せる料理

緒川たまきがそこにいるだけで、気持ちが軽やかになるような、柔らかく優しい時間が流れ出す。〈sio〉全体にその空気感が広がったところで、会津若松産のフレッシュな馬肉を使用した1品目「薫る馬肉タルタル」が緒川の前に。口へ運ぶやいなや「日常の中では出会わない広がり、海外に行った感じがします」と笑みが零れる。

次いで「懐かしい料理でも少し角度を変えることで、新しいものに変わるということって大事だと思っていて」とシェフの鳥羽が話す、エスニックに仕立てたホッケ料理へ。彩りの美しさと香りからして、「ザ・好みです」と早々に緒川の心を掴んだ模様。続けて「噛むところで風味が違っていて、懐かしく出会ったつもりでいるのに、意外な味がきますね。安心感と異国の心細さが混ざった感じがあって……一気にモロッコに連れて行かれた感じがします」とも。

そしてペアリングのソフト・ドリンクを合間にじっくり味わう緒川の元に、「羊のソテー」が到着すると「羊に目がないんです」と嬉しそうな表情を浮かべる。その味は?と問うと、「野生味と品のある感じが同居していて衝撃的。付け合わせの焼き茄子は、和食としても成立するおいしさなんですけど、羊の持つ野生味の後にいただくと、茄子が野蛮な感じがしてそれもまた良いですね」と想像が膨らむように表現してくれた。代々木上原にいながら世界を巡る。これも〈sio〉ならではだ。

1つひとつの料理を味わい深く噛み締め、丁寧に言葉にしてくれた緒川。その姿を見た鳥羽は、「料理は作る側と食べる側の相互の愛情があって成り立つものだと思っているんです。今日はそれを強く感じました」と感謝の言葉を送った

今回のメニュー

「ホッケパクチー デュカスタイル」

パクチーやリンゴを使った意外性の強いホッケ料理。脂が多く身もヴォリュームがあるホッケだからこそ、緒川の言う「スパイスに支配されず、空白もよく分かる」という感触を味わえるそうだ

「薫る馬肉タルタル」

「馬肉なんですけど、フルーツ寄りな感じで。それでいて馬肉の持っている『元気出しなよ!』というところもあるんです。すごくおいしいです」と、新感覚に驚き

「羊のソテー スパイシーソース」

「ゆっくり味わうと、どこかメディテーションのように心が凪いでいく感じもします」と、途中目を閉じたり、五感で料理を堪能する緒川。「焼き茄子と羊の融合は、僕らがこれから打ち出していく『現代日本料理』というジャンルに近い感じでもあって。この融合は、今日のおかげで生まれた感じがあります」とそっと鳥羽が教えてくれた

「sioアイス」

ラストは、フランスのチーズを練り込んだ定番のアイス。「このギリギリ素性を隠している癖みたいなところが、愛嬌があってものすごく好みです」とパクパクと止まらない様子
INFORMATION OF sio

INFORMATION OF sio

〈DIRITTO〉、〈Florilege〉、〈Aria di Tacubo〉などで研鑽を積み、〈Gris〉のシェフに就任した鳥羽周作が、 2018年7月、オーナー・シェフとして自身のすべてを出し尽くしてオープンしたレストラン。

東京都渋谷区上原1-35-3
tel.03-6804-7607(12:00〜22:00)
予約制
水曜定休、不定休(ランチは土・日・祝日のみ)
ディナーコース10皿(10,000yen)、ランチコース6皿(7,000yen)
※別途、ペアリング・ドリンクを頼むと、各料理によって取り合わせが楽しい、希少なアルコールかティーが供される。

ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』

ケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』

作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演/緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子、他
9月13日より9月27日まで〈世田谷パブリックシアター〉にて上演予定。兵庫公演、北九州公演もあり。