「code of the film」vol.15

撮影:濱村健誉
スタイリング:(二階堂)髙山エリ ヘア&メイクアップ:(二階堂)TORI.
文:松坂 愛
(二階堂)ニット(80,000yen) / an/eddy(ハウス@ミキリハッシン tel.03-3486-7673 ) デニム(参考商品) / ピンクハウス(tel.03-5784-7800) ※共に税別
行定 勲 ISAO YUKISADA
1968年生まれ、熊本県出身。監督。2000年、長編第一作となる『ひまわり』が、『第5回釜山国際映画祭』の国際批評家連盟賞を受賞。2001年『GO』では、国内外の50の賞に輝き、2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』では、同年実写映画1位の大ヒットを記録。近年の作品に、『ピンクとグレー』、『うつくしいひと』、『ナラタージュ』などがある。
二階堂ふみ FUMI NIKAIDO
1994年生まれ、沖縄県出身。女優。2009年、役所広司監督の『ガマの油』でスクリーン・デビュー。2011年、園子温監督の『ヒミズ』では、『ヴェネチア国際映画祭』にて最優秀新人賞にあたる、マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。他、近年では『SCOOP!』、『何者』などに出演。2018年の大河ドラマ『西郷どん』、映画『いぬやしき』にも出演する。
家入一真 KAZUMA IEIRI
1978年生まれ、福岡県出身。起業家。〈CAMPFIRE〉代表取締役社長。〈paperboy&co.(現〈GMOペパボ〉)〉創業社長。〈BASE〉共同創業取締役。50社以上のスタートアップ・ベンチャー投資や、渋谷〈ON THE CORNER〉の経営も。近著に『なめらかなお金がめぐる社会。』〈ディスカヴァー・トゥエンティワン〉がある。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする、クラウドファンディングのプラットホーム〈CAMPFIRE〉との映画連載企画。〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作について話を伺う。第15回のゲストは、映画『リバーズ・エッジ』の監督である行定 勲監督、主演の二階堂ふみ。10代の青春期ならではの、ヒリヒリした感情が入り乱れる本作の話をさらに聞くにつれ、映画化に至った強い原動力は何だったのか?など、いろんなことが見えてくる取材となった。「知りたいことがあるから映画にする」。そう行定監督が話していたが、そんなシンプルな想いは受け手側にも一番強く響いてくるものだとも思う。

小さな声をあげて、みんなで革命を起こしていけばいい(行定)

ずっと頭にこの作品がありました(二階堂)
バァフ:お2人が岡崎京子さんの、『リバーズ・エッジ』に出会ったのはいつ頃のお話でしょうか?
行定:僕が出会ったのは、単行本として出版されてからなので、1994年ですね。その頃には、岡崎京子さんの『pink』とかをすでに読んでいて、かなり影響を受けていたんです。読みながら、クリエイティヴということの尊さ、大変さを常に考えさせられました。同じ様に『リバーズ・エッジ』も当時、周りのみんな、熱狂的に読まれていて。それで、先輩監督たちがこぞって映画化しようと動いたんですよ。僕はそれを傍目で見ながら、愚かだなと思っていました。『リバーズ・エッジ』のような、漫画を凌駕した純文学的な驚異の作品を映画化しようとする人は、どれくらい自分に自信があるんだろうって。ただ、この作品には、ある種、神格化される空気があるのは確かで。時代はちょうど、この作品の後くらいにオウム真理教の地下鉄サリン事件が起こるんですよ。あの頃の少年少女たちは、そういうギリギリの地点に立たされていて。あれから何十年も経って考えてみると、『リバーズ・エッジ』というタイトルがそのことを暗示していたんだなと思います。
二階堂:私は、16歳の時に、『ヒミズ』という映画の撮影中に現場で仲良くなった美術の方が教えてくれて。読み終わった時、出てくるキャラクターのヒリッとした感覚を体感したのを覚えています。今読むと、大人の視点で読み解いているように思いますが、あの頃は登場人物と同世代だったので、作品全体の空気感を自分に近しいものとして感じましたね。
家入:分かります。僕も15歳くらいの時に原作を読んだので、その感覚にはとても共感しますね。監督は映画を作る中で、登場人物の「若さ」とどう向き合われたのでしょうか。
行定:まず、「これを映画化できませんか?」と言ってきたのは二階堂ふみなんですよ。2014年に釜山の映画祭で会った時に、「一緒に何かやりましょう」と話をしていて。次に会った時に、「『リバーズ・エッジ』って興味ありますか?」って。そう尋ねられて、「いや、あれをやるのは愚かだよ」とは言えないじゃないですか。だから、「興味はあるよ」とだけ言ったら、「じゃあ、また話しましょう」とだけ(笑)。何なんだ?と気になって、モヤモヤするわけ。それで、彼女のマネージャーさんに問い合わせたら、どうやら『リバーズ・エッジ』を映画化したいと思っているらしいというのが分かって。さらに深く聞いてみると、自分が実感しているヒリヒリした感情が、大人になって薄れていく前に、映画化しておきたいと考えているらしいという。映画って、誰かが「作りたい」と強く想うことから始まるんですよ。二階堂は『GO』とか『贅沢な骨』とかが作られていた頃の作品をよく知っていて、「何で今、ああいうものが作られないのか」と問われたんですけど、少しでも前を歩いている僕が「今は、ヒットしないから作れないんだよ」と映画人の先輩として、ひよったことは言えないですよね。だから、ある種、これは二階堂からの果し状っていうかね、それを渡されて、受けない手はないなと思わされたというか。二階堂たちの世代と、一緒に取り組むからこそできる映画を作りたいと思ったんです。僕は、今の若者たちの感情が分からない。だから、知りたい。あの頃、みんなが持っていたヒリッとした痛みは、今の時代にもあるはずだし。それを二階堂ふみや同世代の若い俳優がどう体現するのか。彼らから手掛かりを見付け出そうと。それが上手くいけば、岡崎京子という偉大なる漫画家が僕らに残したものも、しっかりと生き続けることができると思ったんです。
バァフ:二階堂さんは16歳の時に原作を読んで、監督にお話をされたのが20歳ということですけど、その4年間はどんな想いでいたのですか?
二階堂:ずっと頭にこの作品がありました。役者が企画に関わるのって良くないのかな?と思いながら。でも、声を掛けさせてもらったんです。早く進めなきゃという焦りがあって。10代という時代は、二度と戻ってこないし、私自身、大人になってきているなという実感があったので。でも、その焦りも撮影が決まると、自然となくなって。それよりも、どう自分と向き合うか?とか、この作品をやることにはいろんなリスクがあるんだろうな、ということに想いが至るようになりました。だから、ちゃんとまっとうしなきゃいけないなと。でも、導かれていったというと、おこがましいんですけど、いろんな出会いがあって。(主題歌を担当する)小沢健二さんとも知り合うことができ、「この作品を映画化したいんです」というお話も直接伝えることができました。
バァフ:小沢さんとの会話では、どんなお話を聞くことができましたか?
二階堂:私、60年代に生まれた人に憧れを抱いていたんですね。70年代、80年代に青春を過ごした人、あんなにカッコ良いものが世の中に溢れている時代に生きていた人を羨ましく思っていて。でも、小沢さんが90年代、活躍されていたということ、岡崎さんがあの時代に作品を書き、影響を受けた人たちが少し上の世代にいたことで、私たちもいろんなことを感じられたのかもしれないって。小沢さんとお話して、そう思うようになりました。
家入:それほど惚れ込んだ作品の、主人公を演じるわけですよね。どんな役作りを?原作を再現しようとしたのか、新しいハルナを作り出そうとしたのか……。
二階堂:その中間というか。新しいハルナも意識しながら、岡崎さんの原作の力強い絵にどれだけ自分を持っていけるか?ということを考えました。現場でみんなと話していても、不思議と最終的に孤独になるんですよね。最後には自分で考えなくちゃいけない現場だったので、自分がどう考えるか、感じるかが一番大事だったんじゃないかなと思います。
行定:僕は、二階堂ふみが感じたヒリッとした感覚を撮れているんだろうか?という不安に苦しみました。受難ですよね。この年になって、受難を僕は与えられるのか?と何度も恨みましたよ(笑)。でも、やって良かった、と最後には思えました。僕の中ではこんなに必死になったのは、正直、『GO』の時代以来かもしれない。
二階堂:嬉しいですね(笑)。ここまで苦しんでいただけて。
行定:それほどの作品なんですよ。『リバーズ・エッジ』は。映画では、オリジナルのアイデアとして、インタヴュー形式で登場人物に話を聞く場面があるんです。後で気付いたんですけど、岡崎さんの『チワワちゃん』という作品にもそういうところがあって。完全に岡崎京子って、知らないうちに僕たちに影響を与えているんだなと思わされましたね。
バァフ:最後となりますが、クラウドファンディングのことも伺わせてください。
家入:監督は、映画予算を集める手段についてどう考えているのでしょうか。これから、どのように変化すべきだと思いますか?
行定:僕の会社は、ファンドも持っていて、いつでも使える状態ではあるんです。今は特にそれを使って映画を撮っているわけではないのですが、好き勝手に使えるお金を持っているというのはすごく強みで。足りない時はそこから出せばいいわけですから。クラウドファンディングも同じで、あなたの新作が観たい、二階堂ふみの映画が観たいという支持者がいるなら、クラウドファンディングをすればいい。今は、作り手と観客と出資者が全部対等である、フェアな時代が到来していると思うんです。その中で、小さな声をあげて、みんなで革命を起こしていけばいい。クラウドファンディングは、その1つだったりするような気がしますね。
二階堂:私も何かぜひやってみたいです。
行定:じゃあ、家入さんを巻き込んでみんなで何かやろう。受難だよ、受難(笑)。
『リバーズ・ エッジ』
監督/行定 勲 原作/岡崎京子『リバーズ・ エッジ』〈宝島社〉
出演/二階堂ふみ、吉沢 亮、森川 葵、上杉柊平、SUMIRE、土居志央梨、他
全国公開中
©2018「リバーズ・ エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
INFORMATION OF CAMPFIRE
日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会、家入一真が代表取締役社長を務める。2017年11月、アーティストの活動をサポートする「CAMPFIRE MUSIC」を法人化。レンディング・サーヴィス「Polca」も好調。詳しくはホームページまで。
camp-fire.jp

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