「code of the film」vol.13

撮影:濱村健誉
文:松坂 愛
山崎 貴 TAKASHI YAMAZAKI
1964年生まれ、長野県出身。2000年『ジュブナイル』で映画監督デビュー。CGによる高度なヴィジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』では、『第29回日本アカデミー賞』において計12部門で最優秀賞を受賞。他、『永遠の0』、『STAND BY ME ドラえもん』など、多数の話題作を手掛ける。
家入一真 KAZUMA IEIRI
1978年生まれ、福岡県出身。起業家。〈CAMPFIRE〉代表取締役社長。〈paperboy&co.(現〈GMOペパボ〉)〉創業社長。〈BASE〉共同創業取締役。50社以上のスタートアップ・ベンチャー投資や、渋谷〈ON THE CORNER〉の経営も。近著に『なめらかなお金がめぐる社会。』〈ディスカヴァー・トゥエンティワン〉がある。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする、クラウドファンディングのプラットホーム〈CAMPFIRE〉との映画連載企画。〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作について話を伺う。第13回のゲストは、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(以下、『三丁目』)チームが再集結した最新作『DESTINY 鎌倉ものがたり』が公開となる、山崎 貴監督。「観た人がちょっと幸せになれると、映画を作った意味があるじゃないですか」と言う本作は、もしかするとあるかもしれない異世界への想像と希望がどんどん膨らんでいく作品だ。舞台は、人間と人間ならざるものたちが仲良く暮らす鎌倉。そこに住むミステリー作家の一色正和(堺 雅人)と、彼のもとに嫁いだ年若い妻・亜紀子(高畑充希)のちょっと不思議な暮らしが描かれる。物語に触れた時の温もりと、もはや同様と言わんばかりの優しい温度感で話を進めてくれる監督。心地良さが満点で、楽しく、かつ監督が放った言葉の意味を噛み締めたくなる話題が続いた。

関わった全員がハッピーになれるように。全員が勝てる仕事でもあるわけですよ(山崎)

この日常の暮らしも、未来永劫あるわけじゃない
バァフ:西岸良平先生の作品が原作で。監督ご自身は、この物語のどんなところに惹かれ、映画化を実現したい、と思われたのですか?
山崎:元々、西岸良平先生の世界観が好きですし、『三丁目』をやらせていただいたというご縁もあって。あと、今回の作品は、僕の好きなものがいっぱい出てくるんです。魔物の世界や死後の世界とか。死んでしまった人との距離感が近いところも好きだったので、この作品を映画にしたいと思っていました。
家入:監督がそういう世界観を好きになったのは、いつくらいからなんですか?
山崎:近年に親しい友人が次々と突然亡くなったんですね。それから、死んだらどうなるんだろう?ということをずっと考えていて。ただ、ネガティヴには考えたくないんですよ。あの人たちと死んだ後に再会できるといいなという想いもあるので。死後の世界が描かれた作品って、たくさんあるじゃないですか。僕、1つも満足していないんです。白い服を着ていて、お花畑がある、みたいな、そんなところには行きたくないんですよね。だから、この映画で、自分専用の死後の世界を作っておくのは悪くないなというか。僕が考えるに、死後は自分が思っている世界に行く気がするんですよね。それで温泉郷みたいな世界を提示したんです。湯治場で骨休めをして、現世の垢を流し、また生まれ変わるというイメージで。最近亡くなった友人とも、そこで会いたいですし。西岸先生が持っている世界観って、フワッとその世界に移ることも、大したことじゃないと思えるんですよね。そういう感覚と僕のイメージがちょうどリンクしたので、これは映画になるんじゃないかと思ったところもあったんです。
家入:小さい頃に観た作品に何か影響された、というわけでもなかったんですね。
山崎:むしろ、それの否定から始まっています。天国って言葉自体、僕は好きじゃないし、そんなものではない気がするんですよ。だって、良いことをした人だけが良いところに行けて、悪いことをした人が悪いところに行くなんて誰が決めるんだって。原作は、死者との距離が近い世界なので、死をネガティヴに捉えず、ポジティヴなものとしたら、どういうものができるかな?と思って作ってみました。
バァフ:黄泉の世界ながら、すごくポジティヴな感じが溢れていて、癒しの場というか、ホッとする空間に感じました。あと、日常というものの大切さにも気付ける作品でもあって。
山崎:主人公の2人のカップルが幸せでいればいるほど、引き裂かれた時が辛くなるんですよね。でも、そのことによって、日常生活ってステキなんだなぁと思わせるようなものを描きたかったんです。だから、一色先生は一度知った幸せな生活を取り戻すために、ものすごい状況に身を投じるわけですけど、あれだけ大変な思いをして手に入れるのは日常生活なんですよね。当たり前だと思っているこの日常の暮らしも、未来永劫あるわけじゃない。どこかで消えてしまうものだし、それまでのこの時間はすごく大事なんだと、そういうことを感じてもらいたいなと思いました。
バァフ:山崎監督ご自身も、日常の時間は大事にされていらっしゃるところがありますか?
山崎:そうですね。僕は、奥さんが死んじゃうのがすごく怖いなと思っていて。今の日常の感じがなくなることに対し、全体的に大きな恐怖を抱いている気がするんです。だから、日常生活って、積み重ねなんですけど、1つひとつ大事な時間なんだよな、ということを思い出すように生きていこうと思っています。どこで断ち切られるか分からないですからね。
バァフ:そうですよね……急に断ち切られることもある、という意識は必要だなぁと感じます。現場では、堺さんと高畑さんとどんなお話をされましたか?
山崎:2人とも、とてもスキルがある方なので、僕がちょこっと言うだけですぐに掴んでくれるんですよね。その中でも、「2人がバカップルに見えるくらい、仲良くしてほしい」ということは伝えました。一色先生が危険を承知で、それを乗り越えて黄泉の国に行くことにも説得力が出るので。とにかく良いカップルになってほしかったんですけど、それって相当スキルがないと嫌味なものに見えてしまうんですよね。年の差カップルだし。でも、2人は素晴らしかったです。可愛らしい夫婦を演じてくれました。
バァフ:家入さんは、山崎監督の他の作品もたくさん観られていらっしゃるんですよね。
家入:はい。この映画を観た後に改めて『永遠の0』を観ると、少し救われるような気がして。悔いを残して亡くなった登場人物もいたと思うのですが、死の先にこの作品のような世界があると思えば、救われる部分もあるのかなと……。あと、監督は元々VFXの技術者だったというのも気になっていました。
山崎:完全にそっちの技術者としてこの業界に入って、そこで長いことやっていました。でも、僕がVFXでやりたかったのは『スター・ウォーズ』とか『未知との遭遇』のような作品なんですよ。けれど、そんな仕事はなかったんです。だったら、1作でも良いから、自分が好きなものを詰め込んだ映画をやれればいいなということで、最初に『ジュブナイル』を作ったんです。もうこれで終わりだと思ったので、あの作品には好きなものをすべて詰め込んでいて。だから、元々はVFXをやりたいがために監督になったんですよ。
家入:その『ジュブナイル』の頃と今では、監督は何が一番大きく変化したと感じますか?
山崎:何だろう……その頃から考えると、新鮮な気持ちを失いつつある自分が恐ろしいです(笑)。映画を作らせてもらえていることって、毎度、奇跡的なことだと思うんですよね。だから、この機会は本当に最後のチャンスかもしれないという、作らせてもらえている幸福を意識しなきゃいけないなという想いが生まれてきました。その上で、関わった全員がハッピーになれるように。全員が勝てる仕事でもあるわけですよ。できるだけ、その勝率を上げていきたい気持ちが強くなっています。
家入:僕らは今、〈CAMPFIRE〉というプラットホームで、クラウドファンディングのサーヴィスを展開しています。これまでとは違う資金集めの形を通じて、「僕らにできることは何だろう?」と自ら問い続けているところなんです。監督は、映画の予算をクラウドファンディングを使って集めることについて、どのように考えていらっしゃいますか?
山崎:クラウドファンディングが良いなと思うのは、最初から参加する人たちが多いわけじゃないですか。僕が、私が育てたという人たちが、どれだけ増えるかが大事な気がするんです。みんなが真剣に関わって、でき上がった後に、「どうだ、私たちが協力した映画はこんな素晴らしい映画になったぞ」という人たちが多ければ多い方が良いわけで。
家入:そう言いたくなりますしね。
山崎:「勝利は百人の父親を持つが、敗北は孤児である」という言葉があるんですけど、親がたくさんいるって、すごく幸せだと思うんですよ。だから、「私が作った」と言えることがクラウドファンディングの大きなエネルギーなんじゃないかなと思います。今の時代って細分化されていて、それぞれの人の「好き」があり過ぎちゃうんですよね。そうすると、マスにウケるものを作るのが難しくなっていく。その時に、1つの切り開き方としてクラウドファンディングがあると思うんです。最初からたくさんの人の支持を集めていれば、映画会社とか大きなお金を出してくれるところにも響きますし。説得材料にもなる。これからの時代の、お金の使い方の1つの大発明だと思います。それがどんどん日常化していけば、独りよがりではない映画がどんどん存在していくわけで。作る側も、信用を失ったらお終いなので、真剣にもなる。そういう中で、これまで世に出なかったものが世に出ていくチャンスを手にすることができるようになってきたなと。時代の流れが変わったというのを、今、ひしひしと感じています。
『DESTINY 鎌倉ものがたり』
原作/西岸良平『鎌倉ものがたり』(『月刊まんがタウン』〈双葉社〉連載)
監督・脚本・VFX/山崎 貴
出演/堺 雅人、高畑充希、堤 真一、安藤サクラ、田中 泯、中村玉緒、他
全国公開中
©2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
INFORMATION OF CAMPFIRE
日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会、家入一真が代表取締役社長を務める。7月に開始したレンディング・サーヴィス「Polca」が好調。融資の分野でも小さな声を拾う。詳しくはホームページまで。
camp-fire.jp

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