「code of the film」vol.11

撮影:濱村健誉
スタイリング:(瑛太)猪塚慶太 ヘア&メイクアップ:(瑛太)KENICHI for sense of humour(eight peace)
文:松坂 愛
武 正晴 MASAHARU TAKE
67年生まれ、愛知県出身。86年、明治大学入学とともに明大映研に参加。卒業後、本格的にフリー助監督として映画現場に参加。『ボーイ・ミーツ・プサン』で、長編映画デビュー。14年公開の『百円の恋』では、『第27回東京国際映画祭』日本映画スプラッシュ部門作品賞など、映画賞を総なめにした。本作は『百円の恋』スタッフと手掛けたオリジナル作品。
瑛太 EITA
82年生まれ、東京都出身。『青い春』で映画デビュー。『サマータイムマシン・ブルース』で主演デビューを果たす。近年の出演作は、ドラマ『ハロー張りネズミ』〈TBSテレビ〉系、映画『64-ロクヨン-前編/後編』、『殿、利息でござる!』など。10月21日公開の『ミックス。』、11月25日公開の『光』にも出演。18年には、大河ドラマ『西郷どん』〈NHK総合〉、映画『友罪』の出演も控える。
吉崎沙弥 SAYA YOSHIZAKI
〈CAMPFIRE〉音楽事業部ディレクター。生き馬の目を抜く、広告業界から羽ばたいたその名は通称ペガサス。国内最大のクラウドファンディング・プラットフォーム〈CAMPFIRE〉の音楽事業ディレクターとして、駿馬に最高の小屋(ステージ)を用意している。広告業界で培った数字とマーケティングの経験で、音楽×インターネット・カルチャーに風を通すため、おはようからおやすみまでオンライン。稀に渋谷/恵比寿のクラブにDJとして出没。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする、クラウドファンディングのプラットホーム〈CAMPFIRE〉との映画連載企画。〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作について話を伺う(今回は家入一真が病欠のため、〈CAMPFIRE〉の吉崎沙弥が駆け付けてくれた)。第11回のゲストは、武 正晴監督と瑛太。数々の映画祭で賞を受賞した『百円の恋』から約3年、武監督の最新作『リングサイド・ストーリー』が完成した。K-1やプロレス界のトップ・アスリートたちがこぞって出演する本作。スポットライトを浴びる舞台の裏側を軸とし、夢だけがでかい売れない役者の村上ヒデオ(瑛太)と、それを健気に支える江ノ島カナコ(佐藤江梨子)の人間模様が描かれる。予測できない事件ばかりが起こり、息つく暇もないが、登場人物が身近な人物に感じられ、ほっと胸をなで下ろしたり、クスクスしてしまったり、そのドタバタ劇の波が心地良かった。今回は、武監督と瑛太に登場してもらい、映画ができあがるきっかけから、ダメ男の話まで、色々と伺った。

自然とダメ男ができていたのかな(瑛太)
できていたってことですよ(武)

もう一波乱、二波乱あってほしい(武)
バァフ:今回の作品は、どういうところがきっかけとなったのですか?
武:プロデューサーの李 鳳宇さんと久しぶりに会った時に、「プロレスとK-1が出てくる映画を作りたい」と言われたんですね。最初は何のことだろう?と思ったんですけど、僕の知人で足立 紳という脚本家がいて、彼の奥さんがプロレス団体で働いていたことがあったので、その話をしたんです。まさにこの映画のベースになる話なんですけど。それを聞いた李さんがとても面白がって。それからしばらくしてまた呼ばれて行ったら、もう企画書が上がっていたんですよ。「何ですか、これ!?」って(笑)。これはちょっとその知人にも、了承を取らないと、と急いで。そこからですね、始まりは。
バァフ:何気ない話からスタートしたものだったのですね。
武:そうですね。与太話から出た話を、早速シナリオとプロットにしてみようという話になって。最初は、ダメな男とそいつに振り回される主人公の女性という図式で作品を作っていったんです。女の子メインで、彼女がひどい目にあっていくみたいな。でも、舞台をプロレスとK-1にしているうちに、主人公の女性の目から見た、あなたの知らない世界、みたいなところだけではなく、僕もダメ男の部分があるので、ダメな男をもっと絡めていこうとなって、2人の主人公が生まれてきたんです。シナリオは1ヵ月くらいででき上がったんですけど、この男を誰にやってもらうかがすごく重要だなと。このクズ男を、本当にクズが似合う男の人がやると嫌われちゃうんじゃないかな?というのもあったりして(笑)。で、こういうのは説得力のある俳優さんにやってもらったらどうだろう?という話になったんです。それで名前が上がったのが瑛太さんで。
バァフ:瑛太さんは、台本を読まれた時、どんな印象を持たれましたか?
瑛太:こんな面白い話はないぞ、と思いましたね。役に関しても、ヒデオとカナコのセリフのやり取りも、シンプルなんですね。何に嫉妬しているのか、何に笑っているのかも、とても分かりやすくて。考えるというよりも、直感的にこれは絶対に面白いものになるなと感じました。それに、武監督とはずっとご一緒してみたかったんです。だから、これは何がなんでも良いものにしたい、という気持ちが強かったですね。
バァフ:ヒデオのダメ男の部分については、どう思われながら演じていましたか?
瑛太:ヒデオは売れない俳優なんですけど、1シーンだけの場面で、無理やり前に出てきちゃったり、何とか見切れようとしたりして。リアルだなって。僕もそういう人を見たことがあるから想像しやすかったし、俳優業に対する熱意もよく分かりましたね。「俳優っていうのは人に非ずって書くんだよ」と、プロのK-1選手に言えるくらいのバカな奴ですからね。そこの勇気は、最初に台本を読んだ時にすごく好きだなと思いました。
バァフ:あの勇気はどこから出てくるんだろう?と。
瑛太:やっぱり、俳優だからじゃないですかね。俳優って、革命を起こしてやるじゃないですけど、普通の人にできないことでもやってやる、という気持ちがあるんですよね。人があっと驚くようなことをするのが好きなんです。
バァフ:瑛太さんご自身も、そういう部分がありますか?
瑛太:僕、まったく無名時代の高校生の時に、学校帰りによくオーディションに行っていたんですね。そこで、頼まれてもいないのに、変なことをやっちゃうとかよくしていました。だから、その辺の気持ちは分かりますね。受かる、受からないじゃなく、そこで存在の証明さえできれば、結果は関係ない。俺を覚えておけよ、という感じで(笑)。
バァフ:(笑)撮影をしていく中で、監督から瑛太さんにお話しされたことはどんなことでしたか?
瑛太:あまり演出してくれなかったですよね(笑)。
武:覚えていないですね(笑)。
瑛太:自然とダメ男ができていたのかな(笑)。
武:できていたってことですよ(笑)。キャスティングする時に、どこかにその要素を感じたんだと思います。実際にお会いした時、安心したのを覚えていますから。僕もダメ男の部分を持っているから分かりやすいんです。女性の役は、その点、難しくて。「女性はここについてはどう思うのですか?」と確認しながらやらなきゃいけない。だから、女優さんの方が分からないんです。その分からない部分を探っていかないといけないので、色々と聞くところがあって。ただ、サトエリさんにしても、瑛太さんにしても、現場で細かく指示を出すとか、そういうことはなかったですね。シナリオからちょっとズレていたら、ズレたままでいいのか、軌道修正した方がいいのか、話すくらいで。あとはほとんど何もなかったかな。それよりも、最後の入場シーンの振り付けですよ。あそこは、とにかく必死になってやっていました(笑)。ああいう仕掛けがあるところは、細かくやらなきゃいけないんですよね。
瑛太:かなりの日数と時間をかけて練習しました。ヒデオとしては、あの入場シーンをやって、リングに上がるというのが一番大事なことですし。僕自身としても、入場シーンは最大の見せ場だなと思っていましたから。ただ、それ以上に完成した作品を観た時に、そのヒデオを見ているカナコの表情に心をすごく掴まれて。あんな顔をして、見てくれていたんだと思いましたね。
武:あれは確かにいい顔をしていましたね。そこは現場で唯一撮り方を変えたんですよ。瑛太さんが踊って入ってくるまでを、ずっと順番で撮っていくうちに、彼女に近付いていくわけじゃないですか。それを見ていたら、この人の、今、この瞬間を撮らなきゃダメだと思って。完成した映画を観た時、当時の撮影していた際の気持ちが思い出されて、僕も感動しました。
瑛太:あと、この作品は、観終わった後に、なんとも言えないモヤモヤが残るんですよね。2人はこの後も2人で生きていくんだろうけど、その先、どうなるんだろうって。決して痛快というわけじゃないんです。それが武監督の世界観なのかなって。ただ、ヒデオは、俳優として成功はしないでしょうね(笑)。むしろ、しないでほしい(笑)。ヒデオが売れたらつまらない(笑)。
武:大した成功は待っていないと思いますね(笑)。もう一波乱、二波乱あってほしいな。そういう期待を込めて作ったようなところはあります(笑)。
バァフ:(笑)最後に、クラウドファンディングのお話もお聞かせいただけたら。
吉崎:〈CAMPFIRE〉は、クラウドファンディングのサーヴィスを手掛けているのですが、監督はクラウドファンディングにどういうイメージを持たれていますか?
武:クラウドファンディングというと、すごく難しい言い方だけど、ある種、募金に近しいと思っていて。「ここに箱を置いておくから入れてください。その代わり、ちゃんと見返りはあります」って。やり方によっては、普通だと制作が難しい映画もできることがあって。さらに、そういう人が映画を知ってくれて、観てくれる。そういう意味では、良いサーヴィスだと思います。今、世界中でみんなやっていますからね。クラウドファンディングだからこそ生まれる映画もあるだろうし。実績ももちろんあるしね。ただ、僕が思うのは、もっと、まとまった金額ごとに動く感じがあれば良いなと思うんです。100万円単位とかで。そういうクラウドファンディングの進め方というのがあれば、さらに規模が大きくなっていくんじゃないのかなと思います。
『リングサイド・ストーリー』
監督/武 正晴
出演/佐藤江梨子、瑛太、有薗芳記、田中要次、伊藤俊輔、奈緒、村上和成、高橋和也、峯村リエ、武藤敬司、武尊、黒潮“イケメン”二郎、菅原大吉、小宮孝泰、前野朋哉、角替和枝、近藤芳正、余 貴美子、他
〈新宿武蔵野館〉、〈渋谷シネパレス〉他にて全国公開中
©2017 Ringside Partners
INFORMATION OF CAMPFIRE
日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会、家入一真が代表取締役社長を務める。11月、アーティストの活動をサポートする「CAMPFIRE MUSIC」を法人化。レンディング・サーヴィス「Polca」も好調。詳しくはホームページまで。
camp-fire.jp

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