「code of the film」vol.09

撮影:濱村健誉
スタイリング:(オダギリ)西村哲也(holy.)
ヘア&メイクアップ:(オダギリ)シラトリユウキ(UMiTOS)
文:松坂 愛
(オダギリ)ロングトップス(30,500yen)、中に着たロングシャツ(32,000yen)、パンツ(39,000yen) / 以上、ByH.(www.byhnewyork.com) ※すべて税別
阪本順治 JUNJI SAKAMOTO
58年生まれ、大阪府出身。89年、主演・赤井英和の『どついたるねん』で監督デビューし、『芸術推奨文部大臣』新人賞、『日本映画監督協会』新人賞、『ブルーリボン賞』最優秀作品賞他、数々の映画賞を受賞。主な監督作品は、『亡国のイージス』、『座頭市 THE LAST』、『北のカナリアたち』、『人類資金』、『ジョーのあした―辰吉丈一郎との20年―』など。
オダギリジョー JOE ODAGIRI
76年生まれ、岡山県出身。03年、第56回『カンヌ国際映画祭』コンペティション部門に出品された黒沢 清監督の『アカルイミライ』で映画初主演を果たす。以降、『あずみ』、『ゆれる』、『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』、『マイウェイ 12,000キロの真実』、『オーバー・フェンス』、『湯を沸かすほどの熱い愛』など様々な作品に出演。待機作に『南瓜とマヨネーズ』がある。
家入一真 KAZUMA IEIRI
78年生まれ、福岡県出身。起業家。〈CAMPFIRE〉代表取締役社長。〈paperboy&co.(現〈GMOペパボ〉)〉創業社長。〈BASE〉共同創業取締役。50社以上のスタートアップ・ベンチャー投資や、渋谷〈ON THE CORNER〉の経営も。近著に『なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。 』〈ディスカヴァー・トゥエンティワン〉がある。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする、クラウドファンディングのプラットホーム〈CAMPFIRE〉との映画連載企画「code of the film」。〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作についてお話を伺います。第9回のゲストは、阪本順治監督とオダギリジョー。『この世の外へ クラブ進駐軍』、『人類資金』に続き、彼らの3度目のタッグとなる作品が、日本とキューバの合作映画である『エルネスト』。本作では、キューバ革命の英雄として知られるチェ・ゲバラのゲリラ部隊に参加した、オダギリ演じる日系二世のフレディ前村の激動の生涯が描かれます。自身の運命を変えるチェ・ゲバラと出会い彼に共感し、強い信念を持ちながらボリビア軍事政権へと立ち向かったフレディ前村の姿勢。そして、常に「人」を想う優しさを持ったその姿。25年という若さで命を落とした彼の想いは、半世紀の時を経ようとも、色褪せることなく、国境さえ超え、ズシンと強く胸に響いてくるものがあります。監督がフレディ前村を知ったきっかけなど、本作について2人にじっくりと教えてもらいました。

母国や家族を想う一人の青年の実直な気持ちというのは、時代や国を超えている(オダギリ)

バァフ:フレディ前村をオダギリさんに、というイメージはどの段階から考えられていたのですか?
阪本:プロデューサーと「この映画をやろう」と意思を固めた時には、もう「オダギリくんで行こう」という意見で一致していたかな。オダギリくんのことは随分前から、人となりを含めて知っていますから。彼が認めるもの、認めないもの、許せるもの、許せないものが何なのか。それを主人公のフレディ前村と重ねることもできたし、オダギリくんを通じたフレディを観たいとも思っていました。監督と主演の関係で一緒に仕事をする時は、いつも無理難題の役を与えちゃうんですよね(笑)。それは一種の信頼でもあるんだけど。だから、また一緒にやる時には、オダギリくんがちょっと戸惑うような役でキャスティングしたいとも考えていたんです。
バァフ:オダギリさんは、オファーを受けた時、どういうお気持ちでした?
オダギリ:また挑戦的なものを作ろうとしているなと思いましたね。ただ、俳優としてそういう作品に呼んでもらえるのは嬉しいことなんですよ。話を聞いて、すぐに自分の財産になる作品だと直感しました。
阪本:僕は、人を道連れにしたいタイプなんですよね(笑)。泥舟に乗せて(笑)。
バァフ:(笑)監督は、フレディ前村を知った時、どこにまず興味が湧いたのだろう?と。
阪本:最初は驚きですよね。ゲバラと共に、ボリビアで戦って死んだ日系人がいるということに。彼のことを知れば知るほど、僕は彼のように行動はできないなって。それが逆に自分の興味になったんです。自分に近い人より、遠く離れた人を理解したい、と思うんですよ。映画作りに入れるかどうかも、自分とどれだけの距離があるかどうかだとも思っています。で、実際、この企画は自分が見つけてきて、プロデューサーに話して完成までありつけました。でも、今の映画業界ではこういう物語って、そんなにたやすく成立するものではないんですね。でも想いを1つにしてくれたプロデューサーがいて。幸運だったな、と感じています。
家入:フレディ前村との出会いは、どういったところからだったのですか?
阪本:4年前に別の企画の脚本を書いていて、そこで日系ボリビア人を登場人物として出そうと思ったんですよ。その時に、フレディ前村のことを知ったんです。それから彼の家族が書いた本も見つけて。誰も知らないような存在なわけじゃないですか。そういう方に興味あるんですよね。光が当たっていない人に、光を浴びせるのが映画だと思っているので。
バァフ:オダギリさんは脚本を読まれた時に、フレディ前村に対してまずどんなことを感じられましたか?
オダギリ:非常に日本人らしいなと感じました。ラテン気質の兄弟と比べて、フレディはシャイで寡黙で、鹿児島出身の父親の影響を強く受けていたそうです。しかも侍のような忠誠心や意志の強さを感じました。
バァフ:今回の役を演じられる前には、まず具体的にはどんな作業をされましたか?
オダギリ:簡単に言うと、共感できる点を探すというのは最初に行う作業です。やはり気持ちを理解することは役を理解することに繋がりますし、想像も膨らませやすいですからね。でも当然ながら、いまだにフレディの人物像を掴み切れたとは思っていないんですよ。それでも、監督と待ち時間で話しながら拾っていったり、監督の頭にあるものと自分の頭の中にあるものを上手くミックスさせながら、自分なりのフレディ像を固めていきました。日系ボリビア人という特殊なキャラクターだからこそ、様々な準備が必要でしたが、長い時間をかけて1つひとつ構築していきました。
家入:監督は今回でオダギリさんと三作品目のご一緒になりますよね。距離が近くもありつつ、撮影の度に新しい一面を見つける、という驚きもあるのでしょうか?
阪本:そうですね。『この世の外へ クラブ進駐軍』を撮ったのが10年以上前なんだけど、それからまた僕の知らないところで一周大きくなったなというか。20代の彼は、ある意味違う人気があってね。でも、彼なりに一周回って、いろんなものを財産にしたんだと思います。だからこそ、今回、それに期待して頼んだので。でもね、心根は変わっていないんですよ。頑固な時は頑固で。彼にはよく言っていますが、オダギリくんに影響を与えているのはオダギリくんなんですよ。
バァフ:オダギリさんも、今回含め、監督とご一緒される度、これまでとは違う監督の新しい面を垣間見られたりもしますか?
オダギリ:たくさんあります。ただ、過去の作品の時もそうなんですけど、監督と仕事する時って、「こんな映画を作ろうとしているんだ」という驚きから入るんですよ。根本にある監督の戦う姿勢には、変わらないものを感じますね。その中でも、今回の現場でのすごく柔軟な対応とかは、今まで見たことのない監督の姿でした(笑)。
阪本:柔軟過ぎたけどね(笑)。
バァフ:でき上がった作品を観られた時、どんな気持ちが湧きましたか?
オダギリ:この映画は50年前の話で、キューバというほぼ日本の裏側が舞台ではあるんですが、それゆえに日本の観客と距離がある作品だと思われるとしたら、すごくもったいないと思うんです。現代という時代で理解、共感できないはずがない、と感じました。確かにキューバのあの激動の時代は、現代ではなかなか想像しづらい部分もありますが、例えば、母国や家族を思う1人の青年の実直な気持ちというのは、時代や国を超えているわけで。だから、映画自体は普遍的なものだと思うし、決して小難しい作品だと思ってほしくない。キューバという美しい国に興味を持ってもらいたい。率直にそう思いましたね。
バァフ:そうですね。1人の青年の気持ちが滲み出ていて、純粋にそこに共感を覚える作品でもありました。あと、最後にはなりますが、クラウドファンドのことも伺わせてください。
家入:僕は今、〈CAMPFIRE〉というプラットフォームを作って、クラウドファンディングのサーヴィスを展開しているんです。監督は、かつて製作委員会のあり方に疑義を唱えていましたよね。これからの映画における新しい資金の集め方について、どういう風に捉えられていますか?
阪本:製作委員会が全部悪いわけではもちろんなくて。僕もやっぱり想いを受け取ってもらって、製作委員会を結成し、難しい作品を成立させたこともあるんです。ただ、確かに、今はペイバックが保証されているものには製作委員会が集まり、時流に沿わない作品には誰も寄っていかないというところがあるんですよね。例えば、「テレビ局はどこなんですか?」、「配給はどこなんですか?」と。製作委員会のシステム全般は否定しないけど、ある種、映画作りって博打になってくるから、保証がない時には成立しないわけで。それはどうなのかな?と。僕がまだ助監督の頃は、ちゃんとしたピラミッドがあって、上には大メジャーが、下にはインディーズがあったんです。ATG(日本アート・シアター・ギルド)なんかがね。その真ん中に中規模程度の作品があったわけだけど、今はこの真ん中がスコーンとなくなっているんですよ。だから、僕が過去経験した時代とは違うんです。だとすると、今の若い子たちのしんどさも違うんですよね。そこにクラウドファンディングが入って、「この作品はあった方が良い」という声に応えられるシステムができるのは良いと思うんです。ただ、一方で、プロデューサーが安易にクラウドファンドに頼ってほしくないという気持ちもあります。本当に映画を作りたいんだったら、まずはちゃんと走り回って、汗水垂らしてお金を集める作業をしてほしい。お金を集める作業自体を貧しくしてほしくない。そういう気持ちは、実際にはあります。その上で、クラウドファンディングで豊かになっていけばいいんじゃないかなと。作り手と観客が結び付き合ってね、と思っています。
『エルネスト』
脚本・監督/阪本順治
出演/オダギリジョー、永山絢斗、ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス、他
〈TOHOシネマズ 新宿〉他にて全国公開中
©2017 "ERNESTO" FILM PARTNERS.
INFORMATION OF CAMPFIRE
日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会、家入一真が代表取締役社長を務める。7月に開始したレンディング・サーヴィス「Polca」が好調。融資の分野でも小さな声を拾う。詳しくはホームページまで。
camp-fire.jp

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