「code of the film」vol.07

撮影:濱村健誉
文:松坂 愛
新房昭之 AKIYUKI SHINBO
05年より、気鋭のアニメーション・スタジオ〈シャフト〉を主な拠点に活動中。代表作に『荒川アンダー ザ ブリッジ』、『〈物語〉シリーズ』などがある。テレビ・アニメから劇場化された『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』は、興行収入20億円超えのヒットを記録。

※画像は最新作『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』より
家入一真 KAZUMA IEIRI
78年生まれ、福岡県出身。起業家。〈CAMPFIRE〉代表取締役社長。〈paperboy&co.(現〈GMOペパボ〉)〉創業社長。〈BASE〉共同創業取締役。50社以上のスタートアップ・ベンチャー投資や、渋谷〈ON THE CORNER〉の経営も。近著に『なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。 』〈ディスカヴァー・トゥエンティワン〉がある。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする映画連載企画。クラウドファンディングをおこなう〈CAMPFIRE〉との合同企画としてスタートしました!〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作についてお話を伺います。第7回のゲストは、『〈物語〉シリーズ』、『魔法少女まどか☆マギカ』など、多くのアニメーションを手掛けてきた新房昭之監督。原作・岩井俊二、脚本・大根 仁という編成の、アニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』にて、総監督を務めるタイミングで本誌初登場となります。物語の中心人物は、中学1年生の及川なずな(広瀬すず)と島田典道(菅田将暉)。2人を中心に、「もしも、あの時……」と繰り返される夏の1日が描かれる、というもの。学生ならでの、もどかしくも甘酸っぱい、そしてふいに互いの距離が近くなったり、かと思えば、遠くなったりする恋の話。新房監督の行きつけの飲み屋で、本作のこと、監督自身のこと、色々と教えてもらいました。


この映画は男目線だから、むしろ、「あの頃の女子」が分からないものとして一緒にいる感じなんですよ(新房)

バァフ:今回、新房監督は『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で総監督を務められていますが、企画の始まりというのはいつ頃だったのですか?
新房:かなり前のことであまり覚えてないんですけど(笑)、4年前くらいかなぁ。最初から「劇場でやりたい」という話をもらいまして。
バァフ:原作のテレビ・ドラマは、観られていたのですか?
新房:昔、観たことがあったんです。ヴィデオを借りて仲間と観たような記憶があります。
家入:原作が放送されたのって、93年ですよね。監督は当時、何を手掛けられていたのですか?
新房:演出を始めた頃ですね。その直前くらいかな、今じゃ信じられないくらい仕事が少ない時期がありまして。それが突然増えたんです。一番のきっかけは、〈フジテレビ〉の夕方の時間帯が毎日アニメに変わったことですね。それから仕事が増えて。「演出が不足しているよ」と言うので、「じゃあ僕、演出やりたい」と言ったら、実際にやらせてもらえるようになったんですよ。
家入:監督にとってライバルはいますか? 同世代であいつにだけは負けたくないみたいな。
新房:いないです。あまり考えたことがないかな。演出家になるのが遅かったし、最初に入ったのは〈スタジオぴえろ〉だったんだけど、そこでは自分より若い人に「これどうするの?」と聞いていましたからね。分からないことを人に聞くことは平気だったんです。なので、同世代へのライバル意識はないですね。
家入:岩井俊二さんは同世代ですよね。
新房:岩井さんは、東北の空気感があるので親しみやすい感じがするんですよ。東北出身の人って、拭い切れない何かがあるんですよね。だから、岩井さんとはすごく雰囲気が合って。
バァフ:5年くらい前に企画が立ち上がって、まずは岩井さんとお話を?
新房:その時には、脚本は大根 仁さんで行きたい、と決まっていたので、(プロデューサーの)川村元気さんと岩井さんと大根さんと僕の4人で話しました。大根さんと岩井さんって、元々、仲良しなのかなって思ったんですけど、後で聞いたら、大根さんが岩井さんの大ファンだったんですって。
バァフ:今回の作品は、原作があった上でのアニメ化なわけですが、みなさんと話し合いながら作っていく中で、どこを軸に大事にする、ということになったんでしょうか。
新房:川村さんが最初に「キャラクターが浮かぶ作品にしたい」と言ったんですよね。つまり、なずなというキャラクターを存在感のあるカワイイキャラにしたいってことで。アニメ化するにあたって、大事にしたのはそこに尽きるんじゃないでしょうか。原作は岩井俊二さん節が炸裂していて、女の子が中心になって活躍するようなアイドル映画っぽいんですよ。だから、それをアニメ化するには、何よりもまずキャラをフィーチュアするべきなのかな、と。デザインを手掛けた渡辺明夫さんの絵は、誰にも真似できない彼特有のものがあって。それがほしくて、「ぜひ、渡辺さんにやってほしい」ということになったんです。渡辺さんのデザインって、男の子のキャラも良いんですよね。だから女性が見ても楽しめるんじゃないかな。
バァフ:そうですね、キャラクターにすごく親しみやすさを感じられました。今回、製作陣は男性の方が多いですが、女子の心理が必要な時はどう考えられていったのですか?
新房:この映画はやっぱり男目線だから、むしろ、あの頃の女子が分からないものとして一緒にいる感じなんですよ。だから、結構、振り回されていますよね。女の子の方が成長するのが早くて、より現実的な方にいくんだけど。男子は「俺たちはいつも本気出してない」という感じの雰囲気を出していて(笑)。まぁ、それは我々もそうなんですけど(笑)。
家入:今回、製作陣が異色の組み合わせだったわけじゃないですか。議論が進んでいく中で、意見の違いはありましたか?
新房:原作があるから意見の違いはないんだけれども、なぜ「もしも……」が起きるかってことについて、設定を付ける、付けないでの話し合いはありました。岩井さんは面白い設定を作っていたんですよ。話し合いを重ねる中で、結局その設定はなくなってしまったんですけどね。
バァフ:なずなの声は、広瀬すずさんが演じられていて。ピュアさと、色っぽさがあったりして、すごくステキでした。
新房:役者さんがやると生っぽい存在感が出るっていうか、独特の感じになるんですよね。
バァフ:菅田さんも同じく?
新房:はい。とっても良かったです。声の張り方が声優さんとはまた違うので、普通だったら張るようなところを張らなかったり、ちょっと違う芝居をするわけなんですけど、それが新鮮でしたよね。間に声優の宮野真守(安曇祐介役)さんが入ってくれていたので、それもバランス的に非常に良かったんだと思います。そういう意味では、実は、今回、宮野さんの力がすごく大きくて。菅田さんも広瀬さんの芝居もそうですけど、みんなの芝居を引っ張っていってくれました。菅田さんも声優初挑戦だったので、最初は共演者の方と距離があったんですけど、宮野さんの方からウェルカムな感じを出していただいたので、すぐに馴染めたように思います。お兄ちゃんみたいな感じで、ブースで話していましたね(笑)。あと、花澤香菜(三浦先生役)さんも、今まで何度もTVアニメで組んでいたんですけど、今回はアニメとは違う芝居でまた良かったと思います。
バァフ:DAOKOさんと米津玄師さんが担当された、主題歌「打上花火」に関してはどんな感想をお持ちですか?
新房:すごくステキだな思います。米津さんとは、TVアニメ版『3月のライオン』でご一緒させてもらったことがあったんですが、DAOKOさんは初めてで。でも実は僕、彼女のCDを何枚か持っているんです。
家入:監督は元々、DAOKOさんを聴いていらしたんですね。
新房:はい。良いなぁとはずっと思っていました。で、川村さんからその名前が出た時に、なるほどなぁって。DAOKOさんは声もとてもいいし、センスもいいと思います。今回はまた新しい感じで、とても新鮮で驚きました。
バァフ:私もすごく好きな1曲になりました。聴く度に、夏のにおいがふと香るような感じで。また最後になりますが、クラウドファンディングのお話を家入さんから。
家入:新房監督は、クラウドファンディングで映画を作る費用を集めることに関してどう思われますか?全額と言わず、一部だけとか。
新房:規模にもよるかな、という感じですかね。大規模で集まるものなら意味がある気がします。どの程度の可能性があるか、それを上手く伝えてあげなきゃいけないんですよね。リスクがあるわけだから、それをちゃんと説明して進めていく分にはありかなって思います。
バァフ:これまでのこの連載では、例えばドキュメンタリーだと作っていくうちに内容がどんどん変わっていくから、先にお金を集めるのが怖いと言う監督もいらっしゃいました。
新房:アニメも少し近いかもしれません。例えば、企画書だけでお金を集めて、果たしていいのかなって。かといって、絵コンテがあっても、一般の方が読めるものではないでしょうし。ある程度、でき上がった物に対して「お金を出してください」というのはフェアな気がします。声と音楽はないけど、絵ができているくらいの段階だったらフェアだなと。
家入:音楽業界では、クラウドファンディングが伸びています。音楽の市場が小さくなっている中で、しわ寄せを受けているのが若手のアーティストで。彼らが制作資金を得るための可能性として、クラウドファンディングを利用するケースが増えているんです。
新房:そういう風にしてやりたい人にとってはチャンスだと思います。今、どんどん狭まっている中で、これから出ようとしている若い人たちに、「場」を与えようという考え方はとても良いと思います。
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』原画。
なずなが典道に声を掛ける、印象的なプールのシーン
『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』原画


『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』
総監督/新房昭之
原作/岩井俊二
出演/広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、浅沼晋太郎、豊永利行、梶 裕貴、松たか子、他
全国公開中
©2017『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』製作委員会
INFORMATION OF CAMPFIRE
日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会、家入一真が代表取締役社長を務める。7月に開始したレンディング・サーヴィス「Polca」が好調。融資の分野でも小さな声を拾う。詳しくはホームページまで。
camp-fire.jp

このページの先頭へ戻る