「code of the film」vol.04

撮影:ティム ギャロ
文:松坂 愛
松江哲明 TETSUAKI MATSUE
1977年生まれ、東京都出身。ドキュメンタリー監督。1999年、『あんにょんキムチ』が『文化庁優秀映画賞』などを受賞。その後、『童貞。をプロデュース』、『ライブテープ』、『フラッシュバックメモリーズ3D』など、話題作を次々と発表。ドキュメンタリードラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』〈テレビ東京〉他の監督も山下敦弘とともに務めている。
山下敦弘 NOBUHIRO YAMASHITA
1976年生まれ、愛知県出身。監督。〈大阪芸術大学〉在学時制作の長編『どんてん生活』で『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター部門』グランプリを受賞。その後『リンダ リンダ リンダ』がヒットし、『天然コケッコー』は数多くの賞に輝いた。以降、『マイ・バック・ページ』、『苦役列車』、『もらとりあむタマ子』など話題作を次々に公開。
家入一真 KAZUMA IEIRI
1978年生まれ、福岡県出身。起業家。〈CAMPFIRE〉代表取締役社長。〈paperboy&co.(現GMOペパボ)〉創業社長。〈BASE〉共同創業取締役。50社以上のスタートアップ・ベンチャー投資や、渋谷〈ON THE CORNER〉経営も。著書に『さよならインターネット - まもなく消えるその「輪郭」について』〈中公公論新社〉がある。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする映画連載企画。クラウドファンディングをおこなう〈CAMPFIRE〉との合同企画としてスタートしました!〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作についてお話を伺います。第4回のゲストは、松江哲明監督と山下敦弘監督。ドキュメンタリードラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』に続き、ドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』(共に〈テレビ東京〉他)を2人で監督。俳優の山田孝之が山下敦弘監督を呼び出し、『カンヌ映画祭』で賞を獲りたいと告げ、芦田愛菜を主演とした映画『穢の森』の制作に取り掛かることに――。しかし、紆余曲折の末、企画が頓挫し、撮影チームも分解。すべて終わったものと思っていた中、山田孝之が自分を見つめ直した先で、もう一度、山下監督を呼び戻し、完成したのが『映画 山田孝之3D』です。映画が完成したこと自体もそうですが、ドキュメンタリードラマは1話ごとに驚きの連続。『穢の森』の母親・さちこ役のオブジェが爆発したり、山田孝之の父親が登場したり、彼の故郷の家があった場所が更地になっていたり……。松江監督曰く、「誰もあのクライマックスは分からないだろう、という自信はありましたけど、僕らが一番ビックリしました(笑)」と。探そうとも答えなんて見つからない、「問い」が満載だったドキュメンタリードラマのことから、じっくりと伺いました。

山下くんには悪いけど、すごく良いプロレスというか、
「いけいけ」という感じでしたね(笑)(松江)

バァフ:『山田孝之のカンヌ映画祭』がスタートした頃から、振り返ってお話を伺いたいなと。
山下:『山田孝之の東京都北区赤羽』というドキュメンタリードラマから、ずっと続いているという感じですかね。また始まったなと(笑)。ただ、今回は「映画」というワードがあったので、ちょっと構えたというか。自分が映画監督なので、色々と跳ね返ってくるだろうから、いつもふざけているわけじゃないですけど、ちゃんとやらなきゃなと(笑)。
家入:実際このドキュメンタリードラマを観られた方から、怒られることはありました?
山下:長澤まさみさんに「脱いでくれ」と言うくだりは、某女優さんから怒られました(笑)。あと、「山下、最後何で(山田孝之を)殴らないんだ」みたいな。そんな意見がありました。
家入:河瀨(直美)監督が登場した回で、河瀨監督のいないところで、「まぁ、言っても『カンヌ』を目指して撮っている部分とかあるでしょ」という話をされていて。河瀨監督に後から何か言われたりしないのかな?って(笑)。
山下:言われた?
松江:言われてないよ(笑)。人の生活というか、踏み込んで撮っていくのがドキュメンタリーではあって。その辺は僕も、覚悟して作っているというか。ドキュメンタリーをやっている以上は、ある種、批評しなきゃいけないんですよね。撮った素材をそのまま「こういう関係でした」と言うのではなく、そこにいてどう受け止めたのか?という、化学反応がドキュメンタリーなので。だから、河瀨さんに怒られることを気にしていたら、撮りにいけないというか。山下くんには悪いけど、すごく良いプロレスだなというのはドキュメンタリー監督としてはあるんですよ(笑)。「いけいけ」という感じでしたね。今回はドキュメンタリーとして、描き甲斐がありました。
家入:何かのインタヴューで、松江監督はこの作品は「問い」であったとおっしゃっていて。映画そのものに対してもそうだし、観る側へも「問い」が投げかけられていると。
松江:僕、ドキュメンタリーを作り始めて18年なんですけど、常にそれは意識していますね。安易に白黒ハッキリ付けられているものに、苛立ちがあるんですよ。もっと考えようよ、という。だから、僕の映像自体もそうですけど、僕の作品を観た後に、もっといろんなものを疑ってほしいというか。そういう意味での「問い」という。答えなんか絶対に出したくないですね。僕らだって、分からないで作っているので。そんなもんじゃないぞ、と。
バァフ:あと、このドキュメンタリードラマでは、山下監督が追い込まれるシーンも満載で。
山下:山田くん、怖いんですよ。「山下さんどうするんですか?」って、見ているから(笑)。だから、もう、ぐったりですよ。で、途中から芦田さんを頼りにしているというか(笑)。山田くんが離れていくと、「芦田さんさぁ」って。「助けて」みたいな感じで(笑)。
松江:僕はカメラの前に立つ山下くんが好きなんですよ(笑)。山下くんがいることで、より男子感が強まったというか、芦田さんも逆にすごく立ったし。あと、山田くんはね、他の映画監督と接し方が違う気がしました。「ちょっと、ちょっと」と呼び出したりとか、たぶん、他の監督にはしていないと思うんです。何て言うんだろう……男子グループがあったとして、山田くんがボスというか。
山下:中学で、変なことを考えているグループのリーダーが山田くん、みたいな。『映画 山田孝之3D』を観てもらえば分かるんですけど、そういうのがある感じがします。
松江:人付き合いが中学生っぽいんだよね。
山下:そう。結構気前もいいし、飯とかでも、山田くんが支払ってくれたりする時があるんですけど、なんかね、駄菓子をおごられているみたいなんです(笑)。少年で時が止まっている感というのはあるような気がしますね。
バァフ:『映画 山田孝之3D』では、山下監督がインタヴュアーとして山田さんにお話を伺っていて。改めて知ることもありました?
山下:震災時の感覚とか、そういう想いはあの場で改めて聞きましたね。あと、勝手にですけど、彼に寂しさを感じたところもあって。家族のこともそうだし、東京にきた時のエピソードとか、妙な悲しさを感じたんですよ。それを言うと否定されるんですけど。でも、屈折というか、そういうのが絶対にどこかであるんだろうなと。それが彼の魅力でもあるのかなと思いました。知ったというか、感じたところでしたね。
バァフ:あと、ドキュメンタリードラマ内でも、資金調達に苦戦していましたけど、資金集めの1つであるクラウドファンディングのお話もできればと。
松江:僕、自主制作で、大橋裕之さん原作の『音楽』という映画の制作をずっとやっていたんですけど、その時に、結構いろんなところで「クラウドファンディングはやらない」と言ったんですよね。その理由は、ものを作っている中で、お客さんから先にお金をいただくって怖いと思うから。ある種、期待に答えなきゃいけないし。あと、クラウドファンディングの映画を観た時に、お客さんの方を向いているなと感じたからなんです。
山下:その人の顔色を伺いながら作ることになってしまうからね。
松江:そうそうそう。例えば、「政府に意見する映画を作ります」と言ったら、そうしなきゃいけない。でも、ドキュメンタリーって変わっていくのが面白いんですよね。ただ、その気持ちがガラッと揺らいだのが、『この世界の片隅に』を観た時です。あの成功は、僕が持っていた、クラウドファンディングの凝り固まっていたイメージをぶっ壊すものでもあって。あぁ、これは、資金主ではなく、プロデューサーを集める方法なんだなと思いましたね。で、クラウドファンディングって、作家の個性がものすごく出るもの、例えばアニメーションに関してはすごくいいかもしれないなと。本人の才能が見えやすいものを、クラウドファンディングで応援するというのは可能性が広がるなと感じたんです。でも、劇映画とドキュメンタリーは、プロデューサーが多くなればなるほど、あれこれ気にしなきゃいけないものになるし。『山田孝之のカンヌ映画祭』のような企画は、絶対にやっちゃいけない例というか(笑)。
家入:途中で資金集めの話が出てきたので、クラウドファンディングの話題も出るかな?と思っていましたけど。
山下:山田くんからは、クラウドファンディングというアイディアはなかったですね。もう「社長から金を引っ張りましょう」って、そればかり(笑)。そしたら全然出ない(笑)。
松江:フタを開けたら(笑)。
山下:ガールズ・バーの店長しかいなくて(笑)。
家入:最後、支払いも滞って(笑)。
バァフ:(笑)山下監督は、クラウドファンディングの印象というと?
山下:松江くんと同じ意見ですね。たぶん、感覚的に、先にお金が集まってしまっていると、自分がプレッシャーを感じちゃうんだろうなって。約束って怖いので(笑)。
松江:そう、約束って怖いことなんです。
山下:プロジェクトになって、ちゃんと上手く回ればいいと思うんですけど。作り手と協力者、協力者はある種の出資者ですけど、そのバランスが崩れると、恐ろしいというかね。
松江:ドキュメンタリーも劇映画も、漠然としているんですよ。偶然性に頼る部分が大きいので。映画を作る前のことは、ぜひ『山田孝之のカンヌ映画祭』を参考にしていただいて(笑)。
山下:これは自爆しましたからね(笑)。
松江:これ、自爆していますけど、実は映画関係者から、「こういうのってないよね」という意見があまりないんですよ。全然、嘘っぽくないというか。日本映画界のあるある話なので。もっとすごい現場があるから(笑)。
『映画 山田孝之3D』
監督/松江哲明、山下敦弘
出演/山田孝之 友情出演/芦田愛菜
全国公開中
©2017「映画 山田孝之」製作委員会
『山田孝之のカンヌ映画祭』(DVD&Blu-ray BOX)
監督/山下敦弘、松江哲明
出演/山田孝之、芦田愛菜、山下敦弘、他
発売中 発売元〈「山田孝之のカンヌ映画祭」製作委員会〉
販売〈東宝〉
※「芦田愛菜のカンヌ映画祭」など未公開映像を多数収録した、5時間半を超える豪華映像特典付
INFORMATION OF CAMPFIRE
群衆(crowd)から資金集め(funding)ができる、日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会である、家入一真が代表取締役社長を務めている。他、詳細は下記ホームページまで。
camp-fire.jp

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