「code of the film」vol.02

撮影:KIYOTAKA HAMAMURA
文:松坂 愛
本広克行 KATSUYUKI MOTOHIRO
1965年生まれ、香川県出身。監督および演出家。〈PRODUCTION I.G〉企画部所属。『踊る大捜査線』シリーズでは、テレビ・ドラマのチーフ演出、映画では監督を務めている。2013年より映画祭『さぬき映画祭』のディレクターに就任。最新作として9月30日に映画『亜人』、来年の2月に『曇天に笑う』の公開が控える。
家入一真 KAZUMA IEIRI
1978年生まれ、福岡県出身。起業家。〈CAMPFIRE〉代表取締役社長。〈paperboy&co.(現GMOペパボ)〉創業社長。〈BASE〉共同創業取締役。50社以上のスタートアップ・ベンチャー投資や、渋谷〈ON THE CORNER〉経営も。著書に『さよならインターネット - まもなく消えるその「輪郭」について』〈中公公論新社〉がある。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする映画連載企画。『バァフアウト!』と、クラウドファンディングをおこなう〈CAMPFIRE〉との合同企画としてスタートしました! 〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作について、挑戦してみたい映画などについてお話を伺います。第2回のゲストは、佐藤 健主演の映画『亜人』を9月に、福士蒼汰主演の映画『曇天に笑う』を来年2月に公開が控える、本広克行監督! 以前より、家入と交流があったという本広監督へのインタヴューは、終始、内容の濃い映画話が展開されました。

映画を作っている中で、僕は一番難しくて、一番評価されない笑いを追求しているんです(本広)

家入:本広さんを含めた数名で、お昼を食べる機会があって。その時に初めてお会いしたのですが、「映画の資金集めって、どういう仕組みなんですか?」とか、色々と伺ったんです。映画は大きな予算があるじゃないですか。クラウドファンディングで集まる金額とは桁が違うんですけど、一方で、そのクラウドファンディングで集まるお金も少しずつ増えてきていて。ショート・ムービーや、これからデビューしようとしている若い監督さんとかが使うには割とフィットする部分もあるのかな?とか。その日は、そういったことをお話ししていたんですよね。
本広:そうですね。あと、僕は、『さぬき映画祭』という香川県の映画イヴェントのディレクターをこの5年ほどやっていて、その資金集めのための入金方法を変えれば、もっと資金が集まるなという話もしたんですよね。映画祭って、やると盛り上がるんです。どこに行っても、地方映画祭のリーダーの人たちは最後、みんな大体泣くんですよ。僕も最初の頃はヤバかったんです。泣かないようにしようと思うくらい。それくらいアツいお祭りなんですけど、一番大変なのは資金集めで。それをなんとかクラウドファンディングでできないかな?と。
バァフ:映画自体、クラウドファンディングを活用することについて、本広監督はどんなことを思ったりしますか?
本広:僕はすごく良いことだなと思っています。もっと早くやってほしかったくらいで。映画祭では、いつも個人的に寄付金を集めるんですよ。知り合いの社長さんや、地元出身の方とかに会いに行って「こんな映画祭をやっております」と。
家入:監督自ら?
本広:はい。悔しいので、地方映画祭の作り方というドキュメンタリーを作りました。
家入:面白い!
本広:めちゃめちゃ笑えますよ。
バァフ:(笑)とても根本的なことも伺いたいのですが、監督が映画を作られる中で大切にされている軸というのは何ですか?
本広:映画を作っている中で、僕は一番難しくて、一番評価されない笑いを追求しているんです。日本人で笑いというところを、映画でやっている監督は少ないんですよ。山田(洋次)さんと話した時にも、「映画でそこに立ち向かっていく人はいないから、俺たちは頑張らないとね」と言われて。あと、作り手が何でもない、と思っている表現でも、意外と観ている人はトラウマになったりするので、そういうところはすごく気を付けています。映画は影響力が大きいですから。
家入:大衆の人たちに潜在意識を植え付けるところが、映画にはありますよね。
バァフ:監督が笑いというところに軸を置いたのは、いつくらいからなんですか?
本広:僕ね、子どもの頃から笑いに触れる機会が多くて、『吉本新喜劇』や藤山寛美さんの『松竹新喜劇』とかを観て育ったんですよ。テレビで観て、笑って泣いていたんです。子どもながらに「また今日も泣いてしまった」と思ったりしていました。
家入:監督の映画って、色々な作品の中に、共通する何かを出すことがあるじゃないですか。そういうことは、意図的に要素として入れているのですか?
本広:そうですね。関連付けをしていこうと思って。『踊る大捜査線』に出てきた湾岸君というキャラクターがいて、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』に出てくる警官のロボットはその顔にしていたりします。
家入:それはもう分かる人が観たら、クスッと笑ってしまう要素ですね。
本広:自分の映画が好きな方は、そういうのを観てニヤニヤしますよ(笑)。『スター・ウォーズ』もそうだったりするんですよ。「このキャラクター、こっちにも出ているんだ」とか。そういう仕掛けを見つけた時の感動って大きいですよね。「ここにいたー!」みたいな。
家入:映画館に友人とかと行くと、終わった後に「あれはどういう意味なんだろう」と話せる時間が楽しかったりしますしね。
本広:そうなんですよね。映画を観た後、語り合うのが良いんですよ。そうすると、自分の演出の勉強にもなって面白いですね。
バァフ:あと、監督はどんどん新しいことを始めているイメージがあって。それこそアニメ―ションの総監督も手掛けられたりとかして。
家入:そういう挑戦は怖くないのですか?
本広:自分の中で、映画を1本撮れるのがそもそも夢のような話だと思っているんです。田舎から出てきて、専門学校に行き、映画監督になるのは無理だなと思って、一度、CMとテレビの方にいったんですよ。映画では食っていけないと。そうした時に、テレビ局の方に「本広、お前、映画好きだったら映画撮ってみる?」と言われて、95年に『7月7日、晴れ』という台本をいただいたんです。「この映画、僕の前に何人断りました?」と聞いたら、「20人」って。「じゃあ、僕がやります」と。そこから覚悟を決めて、人がやらないことをどんどんやっていこうと思ったんですよ。で、1つ夢が叶って、「じゃあ、次は何をやろう」という段階になった時に、同じことをやっていてはダメだなとも感じたんです。先を見て、必ず何かしら新しいことをしないと。だから、「この組織、そろそろ自分には合わなくなってきたな」と思ったら辞めるんですよ、すぐに。正社員でもなんでも。僕、会社が結構変わっているんですけど、全然怖くないんですよね。「次行こう、次」って。どうせあと何年かしか身体が動かないですもんね、きっと(笑)。
家入:先に向けて、着実に歩んでいくという。
本広:はい。今は、作ることも大事だとは思うんですけど、作る人はいっぱいいるので、映画祭もそうですけど、見せる人、イヴェントを起こせる人、そういうのがどんどん広まっていくといいなと思っています。それを職業にしなきゃなと考えていて。そこをどうしたらいいかはね、クラウドファンディング頼みなんですよね。
家入:職業にしていくという?
本広:はい。音楽もフェスがあるじゃないですか。で、プロデューサーがいて。
家入:映画のイヴェントでも、ロールモデルを作っていかないと、そこに憧れる若い人たちも出てこないし、ということですよね。
本広:そうです。そういうのがあるから、作品も観る、となっていくと思うんですよ。
家入:監督は、体系を作っているというか。「映画って、こういう見方もありなんだよ」と。そういう体験がもっと、身近に増えていくと、また映画を観る人が増えるんでしょうね。
バァフ:監督ご自身が今クラウドファンディングをやるとしたら、映画祭の資金集めとしての興味が強いですか?
本広:映画も映画祭も、両方ですね。こういう若手の監督がいるのに、もうちょっとお金が集まるといいなという時も、クラウドファンディングでお願いして、というのもいいでしょうし。宣伝費を集めている人もいますよね。
家入:少し話が変わりますけど、以前、ATG(日本アート・シアター・ギルド)という映画監督の集団にお話を聞かせていただいたことがあって。それの現代版みたいなものを作れないか?ということを、話したことがあったんですよ。監督はどう思います?
本広:それはやりたいですね。ATGも、クラウドファンディングを使うことでやれるんじゃないかな、と思いますよ。ATGって、60年代頃、1000万円で好きな映画を作るということにかけていて。当時、その文化が育ったんですよ。今はもうないんですけど、日本の映画を紐解くと、傑作はそのATGから出ていることが多いんです。『家族ゲーム』という森田芳光監督の作品もそうだし。ATGから出てくるスターもいっぱいいたんですよね。
家入:当時、1000万円でどこまでできたんでしょう? 足は出ちゃうものですか?
本広:それで納める人もいれば、足が出ちゃう人もいたみたいですよ。ただ、ATG映画だからって、周りが応援していたみたいです。
家入:それはすごくステキですね。
本広:これをクラウドファンドで組むと良いと思いますよ。昔はフィルム・カメラで、フィルムがめちゃくちゃ高かったんですけど、今はデジカメで撮れる時代ですから、昔よりやり方があると思います。
家入:完全にクラウドファンディングじゃなくていいと思うんです。会社で500万円出し、残り500万円をクラウドファンディングで集めるとか、そういう複合技もありかなと。
本広:商業映画ばかり撮っていると、自分の本当に好きな映画は何だろう?と思うんですけど。そう考えた時に、ATGのような作品がやりたいという欲が出てくるんですよね。自由だった分、少し変わったものもあれば、超エンターテインメントもあったり、本当にいろんな作品があって。低予算で作っていた時代の作品、映画監督が好きなんです。
バァフ:あと、最後に最新作のお話を伺いたくて。監督が手掛ける、映画『亜人』が9月に、『曇天に笑う』が来年の2月に公開となりますよね。
本広:そうですね。今、CGや音楽、SEとかの制作をやっています。特にCGは時間がかかるんですよ。だから、今、僕の映画作りは、自分1人ではやらないんです。何人かで演出を担当して、みんなで回していくんですよ。僕は、総監督の位置にいて、現場は立ち会うんですけど、何人もの監督補佐たち含めみんなで見て、「じゃあ、こうしよう」と話していくんです。みんなに若いうちから仕事を与えて、一緒に一致団結していきたいなと思って。そうすることで作品も濃密になっていくんです。すごく良くなっていると思いますよ。『亜人』も、『曇天に笑う』も。スタッフは全然違いますけど、みなさん、いろんなアイデアをくださいましたね。
家入:良い話ですね。そうやって育てて、下の世代に繋がっていくというか。
本広:はい。ずっとおいしい蜜を吸っていたらダメだなって。新しい人にどんどん回していかないと、と思っています。
INFORMATION OF CAMPFIRE
群衆(crowd)から資金集め(funding)ができる、日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会である、家入一真が代表取締役社長を務めている。他、詳細は下記ホームページまで。
camp-fire.jp

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