「code of the film」vol.01

撮影:KIYOTAKA HAMAMURA
文:松坂 愛
三池崇史 TAKASHI MIIKE
1960年生まれ、大阪府出身。監督。『十三人の刺客』が『ヴェネチア国際映画祭』、『一命』と『藁の楯 わらのたて』が『カンヌ国際映画祭』に出品されるなど、海外でも高く評価されている。4月29日に映画『無限の住人』が公開、待機作として『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が控える。
家入一真 KAZUMA IEIRI
1978年生まれ、福岡県出身。起業家。〈CAMPFIRE〉代表取締役。〈JASDAQ〉上場企業〈paperboy&co.(現GMOペパボ)〉の創業社長でもある。他、カフェのプロデュース・運営〈partycompany Inc.〉代表取締役や、モノづくり集団〈Liverty〉の代表なども務める。また、50社程のスタートアップ・ベンチャー投資も行う。
クリエイティヴ志向の高い、監督や役者をフィーチュアする映画連載企画。 『バァフアウト!』と、クラウドファンディングをおこなう〈CAMPFIRE〉との合同企画としてスタートしました! 〈CAMPFIRE〉の代表・家入一真を司会に、毎号ゲストを迎え、撮影現場や映画制作について、挑戦してみたい映画などについてお話を伺います。第1回のゲストは三池崇史監督! 監督が手掛けた最新作、謎の老婆に不死身の身体にさせられた、木村拓哉演じる万次が主人公の映画『無限の住人』(原作/沙村広明)が公開中、本作についても教えてもらいました。

「映画館に行くとヒドい目に合うこともある」と思ってもらえたら(笑)(三池)

バァフ:今回、『無限の住人』が実写映画化ということで。どんな構想から完成までに至ったのだろうと。
三池:沙村さんの書かれた『無限の住人』という作品の危険度というものは、我々のように、ぬるいものを作っている人間にはなかなか扱えないレヴェルになっていて。一番の魅力である暴力の美しさは、今時のコンプライアンス的にいかがなものか?というのもあるので。少し、映画という制約がある中でできる方向に持っていかざるを得ないというか。尸良という市原(隼人)くんの役は、極力原作に近付けてみようと思って作ったんですけど、半分くらいのシーンは今時の映画としては使えない代物になってしまって。編集でカットせざるを得なかったし。でも、やってみたという試みは面白かったですね。残っているところは、「許されるか」という場面、みたいな。そういう部分を、沙村さんは描いて楽しんでいたんだと思うんですよ。で、ちゃんとした著作物として、一般の書店に並べていくというのが、とても冒険的で、面白い人だなと。映画ではできないことをやっている人なので、それを映画でやるためには、自分の中で、万次イコール木村拓哉というイメージは最初から1つありましたね。木村拓哉がやることで、映画の自由度が上がるんじゃないかって。「木村拓哉がやったんだから、仕方ないんじゃない?」と(笑)。そういうところで、万次と木村拓哉ってリンクしていたんですよね。
バァフ:映画でできないところがある漫画原作だからこそ、役者それぞれが持つ魅力がさらに必要だというか。
三池:そうですね。漫画の原作のすごいところ、面白いところの8割は映画化不可能なんですよね。危険過ぎて。僕らの時代だと、中学生の頃に観た、ちょっとヤバい映画ほど、面白く記憶に残っているものはないんだけどね。今回は、そういう体験ができるといいんじゃないかなって。「映画ヤバいよね」って、「映画館に行くとヒドい目に合うこともある」と思ってもらえたら(笑)。
バァフ:家入さんご自身は、クラウドファンディングの〈CAMPFIRE〉という会社を運営されていて。「映画も、クラウドファンディングで……」というお話は多いですか?
家入:そうですね。お話をいただくことも、もちろんあるんですけど。今は、映画を作ることができる規模感と、クラウドファンディングで集まるお金の規模感がイマイチまだマッチしていない部分があって。この前、『この世界の片隅に』というアニメの映画が、数千万円集まりましたけど。規模感の違いみたいなところが、まだまだあるなぁとは思っています。もちろん、インディーズという、小さな映画を作るというのはあるのかもしれないですけど。なので、過渡期ではあると思うんですけど、実際、新しいお金の集め方の1つとして、使ってもらえたらいいなとは思ったりしますね。
三池:映画も、元々、自社のみで、自分たちで出資をし、自分たちのところで撮影所も持っていて、俳優も自分たちのところで所属をさせて、スタッフ、監督も含めて全部社員だったっていう時代があって。日本映画で名画と言われているものは、それに逆らって会社をやめていって、独立して作り出されたものが多くあったりするんですよ。映画を作ることが大変だった時代に、絞り出されるように「それでも作るんだ」って、生まれてきたものの迫力というのはなかなか今勝てないですよね。あと、規格外の人を操作する、映画の世界の中に閉じ込めていく、という能力が今ないんですよ。みんな扱いやすい、その中でできる人たちで作ってしまうという。
家入:三池さんも規格外ですよね。
三池:いや、そんなことはなくて、関わった企画は99%成立するというか、作品になっていますから。逆に言うと、企画が「なくなりそう」となった時に、代打で呼ばれて、修復したりもしています。原作者と脚本家がもめているという時に、俺なんかが打ち合わせに入ると、割とスムーズにいきますよ。「原作者はこういっている」という時に、「そこに意見の違いがあるんだったら、こうすればどうですか」と。そのうちに、「監督にお任せしますよ」みたいなことで企画が成立して、「Go」という話になって。だから、僕なんかは子羊のような修復屋さんですよ(笑)。
家入:僕、『無限の住人』を観させていただいたんですけど、途中で敵か味方かという部分がグルングルン変わっていて。あと、何が正義で何が悪なのか――確かに主人公は正義だけど、じゃあ、果たして悪側に正義はないのか?というとあるわけじゃないですか。そういったものを問われているところがあって。それは監督の他の作品を観ていても感じるところで。監督ご自身、そうやって、正義か悪なのかの前に、それぞれの意図や思いを、一度、吸収するみたいなところがあるのかな?と。
三池:登場人物の中にそれらが当然含まれているというか。「まぁ、本音を言えば、こんなもんですよね、人間は」という。なのに、そうじゃなく、清く正しく生きようとしている。それは志としてはオッケーだけど、「無理がありますよね」と。でも、無理を見せないようにするのが、今の我々の生き方で。どこかでストレスを抱えているはずなんだけど、問題がないようにして、そのストレスさえ感じなくなってきている今というのは、結構マズいんじゃないの、と思っていて。だから、何て言うんでしょう。ゴシップ的なネタでも、世の中の事件になったりするじゃないですか。それって本来は個人の生き方で、単純にその人たちの問題なはずなのに。「そりゃあ、色々あるよね」ということが、「色々あるんだって」というネタになっちゃうという。「そんなにあなたは、クリーンなんですかね?」と思うんですよね。自分の心の中を覗いていた方が、よっぽど面白いんじゃないの?と。僕なんかは、そういう流れの中に、映画そのものが巻き込まれているというか。結局、流行り物を追いかけていく、というものでしかなくなってくるので、それだけになっちゃうとつまんないですよね。作っている側としても。僕らがやっぱり面白かったのは、今はもうなくなったんだけど、Vシネマっていうロー・バジェットで、コツコツ稼いでいくというやり方で。でも、ヴィデオ屋がなくなるのと同時に、それもなくなって。
バァフ:今は、どんどん制限が出てきているのかもしれないですね。
三池:そうなんですよね。特に今は、色々条件が……とか、見返りを中心にものごとを考えている人が多いので。それを気にしない人ばかりになればいいんですけどね。気にせず動ける人間は強いですよ。今、チャンスがあるんじゃないの?と逆に思う奴らは結構いると思うし。僕は映画界に対しては、まったくそういう感じですよね。予算が少ないからとかじゃなく、やれる機会が面白いんじゃないか?という。ロー・バジェットなら、自由を掴み取っていけますし。で、それがなぜか世界的に受けたりなんかして。意識は全然していないですけど、何が起こるか分からないというものが、映画から生まれてきてもらいたいなという。それこそ、今、アニメは結構そういう点ではね、面白い現象、誰も予測しないような現象を引き起こしますよね。芸能界の通常のルールには当てはまらない。予測できない展開をするという点では、すごく面白いと思う。実写の場合は、ある意味、現場的な安心感が必要なんですよね。それがアニメーションだと、独自の才能を独自に表現できたり、制御がしやすいという点があって。で、その与えられた自由度が商品になっていく、数少ないメディアですよね。でも、ペースはね、決して早くはないし、ゆったりとしているんですけど、そういうことが、実写映画の中でも出てくるかなと。まぁ、目に見えにくいところではありますけど。木村拓哉のスゴさを改めて再認識するということだって、僕らにとっては大事件なわけで。そこは観てもらえれば伝わると思うんだけど。「はんぱねえな、こいつ」みたいな感じがあるので。それは大げさに言うと、血と汗の結晶というか。大変な現場だったんですけど、役者たちが楽しんでくれたおかげで完成した作品だと思います。
家入:先ほど、規格外の人間というお話をされていて。規格外って、要は圧倒的な正義とか圧倒的な悪というものだと思うんですけど。僕なんかは三池さんにお会いするまで、規格外の怖さがある方だと思っていて(笑)。そういった圧倒的な悪や正義というものに対して、例えば憧れたりした時期もあったのですか?
三池:あの、何だろう、まず映画というフォーマットの中で、こういうことを表現したい、というのがあまりないんですよね。無意識に表現しているうちに、本当のものが絶対に含まれているので。どんな嘘を付いても、嘘を付き切れないものってあって。表面上、「これ、嘘映画だよね」と思っても、その裏に何か本物のことってあって、要は作ることそのものに尽きるんですよ。だから、「恋愛ものをやれ」と言われても、たぶんやるでしょうね。例えば、主人公が「えーん」と泣いちゃって、そこに雪が降ってきて……というベタな物語の作品もやってみたいなって。何を描いても、たぶん変わらないものがあるから。映画を作る上で、登場人物に対して思う、「この子はどうなんだろう」とか、「この子こうだよね」という中に、その子の独自の光と影が当然あるわけで。それを極端に増幅しなくても、普通に描くだけで良くて。役自体がそもそも持っている運命を信じるというか。そこに僕らは身を任せるんです。目的があって作るんじゃなくて、どんなものになっちゃうのか?と、分からないままで作ってみて。登場人物たちと一緒に、その映画を作る作業を進めていって、「こんなんになっちゃいました」みたいな。何の映画をやっても、あまりテーマはほとんど変わらないですよね。
『無限の住人』
監督/三池崇史 原作/沙村広明『無限の住人』〈講談社〉『アフタヌーン』所載 出演/木村拓哉、杉咲 花、福士蒼汰、市原隼人、戸田恵梨香、北村一輝、栗山千明、満島真之介、金子 賢、山本陽子、市川海老蔵、田中 泯 / 山﨑 努、他
全国公開中
mugen-movie.jp
©沙村広明/講談社 ©2017 映画「無限の住人」製作委員会
INFORMATION OF CAMPFIRE
群衆(crowd)から資金集め(funding)ができる、日本最大のクラウドファンディング・プラットフォーム。本企画の司会である、家入一真が代表取締役を務めている。他、詳細は下記ホームページまで。
camp-fire.jp

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